48.決戦キマイラ2
カサンドラ視点です!
私はキマイラ相手に苦戦を強いられていた。さすがはAランクの魔物である。身体能力もあるけれど、獅子の頭と蛇の尻尾のコンビネーションが厄介極まりない。未来を視てようやく、対応できているのだ。これで火まで吐かれていたら打つ手はなかった。でも、不思議と絶望はない。だって、シオンがいるから、シオンならば必ず薬を見つけてこの状況を打開してくれるはずだ。それまで、私はこいつの相手をすればいいだけなのだから。
もしかしたら、彼は自分だけの意見でゴルゴーンの事を助けると決めたことを後悔しているのかもしれない。私が急いでゴルゴーンの里についたときに聞こえたのはシオンとアスとの口論だった。アスの言う事は正しい。人と魔物は違うのだ。ゴルゴーン達を見捨てても誰も責めないと思う。ゴルゴーンは意思疎通ができるけれど魔物だ。100人いたら100人がアスと同じようにいうだろう。
だけどシオンは違った。彼はゴルゴーン達を助ける事を選んだ。彼にとっては種族は関係がないのだ。仲良くなった生き物か、それ以外の価値感しかない。人は彼を異質だというだろう。異常だというかもしれない。でもそんな彼だからこそ、私と言う半魔族を受け入れてくれたのだ。そんな彼だからこそ私はついて行きたいなと思ったのだ。そしてそれは私だけじゃない。ライムもシュバインもそうだ。
普段軽口をたたいているライムは本当にシオンを信用していることを知っている。ライムは本当に賢い。彼は可愛がってくれている冒険者の女の子たちが、いざとなったら人間の方を優先することを知っている。いざとなったら敵になることを知っている。だけど、シオンがいるから、いざとなったらシオンは助けてくれていると信じているから彼は気楽そうに騒げているのだ。
シュバインは言っていた。シオンは友人として扱ってくれていると、ダンジョンにいた時のようにただの、戦力ではなく一匹の友人として接してくれているのがわかるから彼を信用しているのだと……だから生活するうえで多少の不便もありながら仲間になっているのだ。
そして私も同様だ。シオンは……彼はこの忌々しいと思っていた赤い髪を綺麗だと言ってくれた。魔族の血を引いている証明ともいえるこの髪を美しいと言ってくれたのだ。そして私の面倒なギフトの事も頼りにしてくれている。
群団というパーティーは種族も違うけれどシオンをきっかけに知り合い団結したパーティーだ。私はこのパーティーの前衛として恥じない仕事をしたいと思う。だって、シオンはリーダーとして恥じない決意を見せてくれたのだから!!
私が少し距離をとったタイミングで二つの瓶が飛んできた。中には液体が入っており、それぞれ液体の色が違うようだ。すると不思議なことに最初の瓶は蛇の尾で振り払ったというのに、もう片方の瓶を、キマイラは過剰なまで反応して、避けた。まるで何かを恐れているかのような怯え方だ。でも、これで隙ができた。
「炎脚」
私は未来予知を解除して、スキルを使う、シオンのかけてくれた魔術の炎は少しずつだけどキマイラの毛を焼いてくれている。つまりこいつに炎は通じるのだ。ならばもっと強力な勢いで突っ込めば……
私のスキルを使った突進に蛇の尾が反応をする。鋭い一撃の蛇の口撃を私は体を逸らして高速で刺突を放つ。姿勢のバランスが悪くなったせいか、奥までは届かなかったが確かに刺さった。
「喰らいなさい!! 炎剣」
「ぐあああああああぁぁぁぁ!!」
キマイラの体内でスキルを発動させる。キマイラの体内で刀身から爆炎が焼き払うが致命傷ではないようだ。やはり踏み込みが足りなかった。私は嫌な予感がして慌てて剣を抜く。予想通り蛇の尾が鞭のようにしなって私を襲い激痛と共に吹き飛ばされた。とっさに剣で防いだおかげで直撃は避けたが、衝撃までは殺せなかった。私が追撃を警戒しているとシオンがキマイラに突っ込んでいくのが見えた。
「何をやってるの、シオン!!」
『シオン正気なの!?』
「腹が減っているんだろ? これでも食えよ!!」
そういって彼が左手で突き出したのは、先ほど拾っていたミスリルが入っていた袋だ。現に、ちらりとミスリルがのぞいている。そういえばキマイラは魔力を持った鉱石が好物だと聞いたことがある。元々が魔法で作られた生き物なので、食事も肉などを魔力として還元しているらしい。ならば、元々魔力を持ったミスリルは彼にとって大好物だろう。でも、なんで今それを差し出すの?
「グルルルルルゥ!!」
「あぎゃぁぁぁぁぁ!! いてええええ!!」
私が止めるまでもなく、キマイラに彼の左腕がミスリルごと喰われる。そのまま食いちぎられるかと思いきや、先ほどの私の攻撃が効いたのか、噛みつかれているだけで済んでいるようだ。でも、このままじゃあまずいでしょ。なにやってるのよ、あのバカは!!
「あんたは死にたいの!? 炎脚」
「うおおおおおおお、いてええっての!! 火よ!!」
『無茶しすぎだよ、シオン!!』
私がスキルで駆け寄ると同時にキマイラの口が爆発して、たまらず吐き出したキマイラの口からシオンの左腕が解放される。しかし、その腕はひどいものだった。キマイラの牙によって傷だらけとなり、血があふれており、手の方は魔術を放ったせいか、火傷をしているようだ。そして、なぜか、ガラス片まで突き刺さっている。あまりの悲惨さに、私が眉をひそめていると、その腕をライムが包む。これで応急処置は済んだだろう。
私はキマイラからシオンを守るべく武器を振るう。しかしその戦いは長くは続かなかった。なぜなら、キマイラの動きが徐々に鈍っていったからだ。私は怪訝に思いながら動きが鈍くなったキマイラを切り刻むのだった。
ロマサガのイメージがキマイラは強敵なんですが、皆さんのイメージはどうなんでしょう……




