46.地下にいるもの
地下への扉の前に俺たちは体制をととのえる。カサンドラの予言だと、強力な魔物がいるみたいだからね。ある程度の心の準備は必要だ。
「神の加護よ!!」
「シオン、ありがとう。体が軽くなるわね」
『すごーい、いつもより触手が早く伸びるよ!!』
俺はカサンドラと自分、ついでにライムに身体能力アップの法術を使う。アスほどでもはないが俺も法術は使うことができるのだ。ライムも嬉しそうに無駄に触手を伸ばしている。あのさ、俺の甲冑の間から触手伸ばすのくすぐったいからやめてほしいんだけど……
「じゃあ、行くよ」
俺は意を決して扉を開ける、以前来た時と同様に地下室は薄暗い。俺が入ると同時にすごい速さで何かが飛んできてた。それをカサンドラが刀で受け流す。
「させない!!」
「シャー!!」
カサンドラによって射線を逸らされた飛んできた細長い何かは悲鳴を上げながら壁にぶつかって悲鳴を上げてすぐに奥へと戻っていった。何今の? 反応できなかったんだけど……俺は小さい明かりを魔術によって発生させてあたりを見回す。
ステンノの工房は俺が来た時とは違い荒れ放題だった。書類は飛び散り、薬の入っていたであろう瓶が床に散らばっている。そして奥には何かを咀嚼している化け物がいた。
「うげぇ……」
「これは……きついわね……」
『可哀そうに……』
咀嚼されているのは、ここへ迷い込んだのだろうか? ゴルゴーンである。苦悶の表情で既にこと切れており、胴からがぶりと噛みつかれて、食われている真っ最中だった。そして咀嚼をしているのはキマイラだった。
キマイラはAランクの魔物だ。かつて魔族が暇つぶしで作ったといわれる。ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ魔物だ。俺を先ほど襲った尻尾の毒蛇の毒は強力で噛まれたものは一瞬で息絶えると言われ、ライオンの頭からは強力な炎を吐くと言われている。言われているというのが多いのは、目撃情報がとても少ないからだ。
そもそもAランクの魔物自体、ダンジョンや遺跡の奥にしかいないし、ボスクラスだったりする。それにキマイラに関しては魔族が作った生き物なのだ。そうゴロゴロいるものではない。俺達は予想以上の相手にあわてて扉を閉める。
「なんであんなとこにキマイラがいるんだよ!?」
「知らないわよ!? それでシオンどうするの? ここよりは食糧庫のゴルゴーンたちをかいくぐって、薬を探した方がマシかもしれないわよ。」
『僕も君に従うよ』
二人の声が俺に意見をゆだねてきた。もしも、ここにアスとシュバインがいれば俺は迷わず戦ったであろう。でもここにいるのは、器用貧乏な俺と、サポートタイプのライムだ。おそらくまともにたたえるのはカサンドラくらいだろう。
カランドラの言う通りここは引いて食糧庫いくのも手かもしれない。でも、食糧庫に、原液があるとは限らない。それに時間制限だってあるのだ。ここで引いたらゴルゴーン達が全滅する可能性ははるかに上がるだろう。そもそも、キマイラがいつまでも、ここにいるとは限らない。
でもさ、俺はメデューサ達の力になると決めたのだ。フィズに助けるって言ったのだ。幸いここは狭い。やつの武器である炎は吐くことはできないだろう。それに俺達より身体能力で劣るであろうステンノが捕らえたのだ。勝算はある。だから俺は……
「行くっていったら怒る? 多分ここで引いたらゴルゴーン達はやばいと思うんだ。だから俺はこのまま行こうと思う」
『怒らないよ、だってそれがシオンの目指す英雄でしょ』
「な!?」
俺の顔をみてライムがにやりと笑いやがった。こいつ俺の話を聞いていたのかよ。もしかしてカサンドラも……俺が恐る恐る彼女をみると、嬉しそうに笑いながらウインクをした。
「ごめんなさい、つい、聞こえちゃったのよ。でもね、私はあなたの考え方好きよ。だから私はあなたに賛成するわ。でも……勝算はあるんでしょうね」
「ああ、もちろんだ。一応考えてある。じゃあ、行くよ」
カランドラの言葉に顔を真っ赤にしながらも、俺は答える。そんな俺にカサンドラとライムは満足そうに微笑みかけるのだった。そうして俺達は再度キマイラのいる地下室への扉を開けるのだった。
話が進まなかったです。すいません、次回から戦闘がはじまります。
ちなみにペガサスの名前はちゃんとした名前になる予定なんで安心してください。
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