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42.メデューサの想い

メデューサ視点です。

「僕たちはステンノ姉様に騙されているんだよ!! 姉様は僕たちゴルゴーンの血が入った薬を人間に売ってるんだ」

「何を言っている!! ステンノ様がそんな事をするはずがないだろう。あのお方は私達の英雄だぞ。裏切者はメデューサ、貴様の方だろう。人間だけでなく、オークやトロルまで連れてきおって」



 罵倒と共に矢が飛んでくる。その一撃は横にいるペルセウスによって弾かれるが、罵倒が僕の心を傷つける。そんな僕の肩を何か暖かいものが触れる。横をみるとペルセウスが僕を元気づけるように笑いかけてきた。



「大丈夫だ、我が歌姫が正しいということは私が良く知っている」

「ありがとう、ペルセウス……」

「だが、どうするのだ、我が歌姫よ。何らかの証拠がなければ君の言葉は彼女達に届かないだろう? 私としては自分が罵られるのは構わない。むしろ歓迎なのだが、君がこれ以上傷つくのを見ていられないのだが……」



 彼は優しい言葉で私に決断を迫る。彼の言う通りこれ以上言葉だけでは無駄だろう。だが全面戦争はまずい。シオンが仲間とトロルたちは殺さないようにするとは言ってくれているが、怪我までは防げないだろう。何か証拠があればいいのだけれど……



「そもそも、君が傷ついてまで、守る必要があるのか? この里の連中は君の言葉も聞かずに、君を捕え、今も傷つけているのだぞ。先ほどの矢も私やシュバインが防がねば当たっていただろう。そんな連中を守る必要があるのか?」

「あるよ」



 ペルセウスの言葉に僕は即答する。確かに今の僕の言葉を信じてもらえないし、矢を射られている。でも、ステンノ姉様と敵対するまではみんなは優しかったのだ。

 僕はこの里で育ったのだ。子供の頃に転んで怪我をした僕を、あやかしながら治療してくれた女性がいる。僕が二人の姉と比べられてへこんでいるときに歌を教えてくれた女性がいる。僕とくだらない話をして、日々を過ごしてくれたフィズがいる。そして、厳しい事を言いながらも僕を見守ってくれたステンノ姉様や、いつも優しく僕を見守ってくれたエウリュアレ姉様がいる。僕にとってこの里は……この里のみんなは大切なのだ。だから僕はこの里のみんなが好きだし、守りたいと思う。ステンノ姉様だって、こんな事をするような女性ではなかった。きっと何か事情があるのだろう。



「確かに今は敵対してるけど……ちゃんと話し合えば分かり合えるはずなんだ……だから僕はみんなを信じたい。ダメかな」

「健気にみんなを想う我が歌姫……最高だな!! あえて言おう!! 萌えと!! いいだろう。私の全身全霊をかけて守ると誓おう」

「僕今、真面目な話をしてたよねぇぇぇ!?」

「よく言ったわね、私はメデューサを信じるわ」



 思わず突っ込みをいれていた僕の耳に凛とした声が響く。そちらをみると私の友人であるフィズがいた。彼女はその手に何か薬が入った瓶をもっており、その周辺には数人のゴルゴーンがいた。彼女たちは他のゴルゴーン達がいる食糧庫ではなく、僕たちの元へとやってきた。そして僕たちに微笑むと彼女は液体の入った瓶を掲げて、大声で食糧庫のゴルゴーン達に叫ぶように言った。



「ステンノ様の工房でこの薬を見つけたわ。この薬には私達ゴルゴーンの血が含まれているの。そしてこの材料はエウリュアレ様の血よ!! あの人はこれを村のやつらに売りつけていたのよ。ステンノ様の工房に色々と記録もあったの、信じれないと思ったら私の元に来なさい。証拠をみせるわ!!」



 思わぬ援護射撃に食糧庫のゴルゴーン達もざわざわとざわめく。みんな困惑しているのか、弓も罵倒も止んでくる。



「フィズ、信じてくれるんだね、ありがとう」

「ええ、あんなものをみせられたし、あんたの人間を信じたいって気持ちも少しわかったから……」

「え? それってどういう……」



 フィズの言葉に周りのゴルゴーン達もうなずいた。一体ステンノ姉さまの工房で何を見たというのだろう? それに人間嫌いのフィズが人を信じてもいいなんて……僕の疑問は食糧庫のゴルゴーン達の反論によってさえぎられる。



「そんなものはでっち上げたろう。フィズはメデューサと仲がよかったもの。貴様らは忘れたのか、ステンノ様のおかげで私たちは平和を得ることができたのだぞ!! あのお方の薬の力で、森の主であるキマイラを捕えて従えることができた。そして、我々は他の魔物をおそれる必要がなくなったのだ」



 僕たちと言葉とゴルゴーンの言葉で、他のゴルゴーン達は揺れ動く。決定打ではなかったけれど迷わせることはできた。あと一歩だ。あと一歩あればみんなに信じてもらえるはず。僕を元気づけるようにフィズが声をかけてきてくれた。



「大丈夫よ、彼は……シオンはエウリュアレ様を連れて戻ってくるって言っていたもの」

「ほう……あの男、童貞のくせに中々やるではないか、ゴルゴーンのハートを撃ちおとすとはな!!」

「別にそういうんじゃないわよ、ただ、あの童貞の言葉に信じるだけの価値はあるかなって思っただけよ」



 フィズの言葉にペルセウスが反応するが、彼女は受け流す。でも、ちょっと顔が赤いのは気のせいだろうか?



「一体これはどうしたのかしらね? 早くメデューサ達を捕えなさい。人間たちと仲良くしているのが裏切者の証拠でしょう」



 その均衡は一人のゴルゴーンによって破られた。彼女の一言でざわついていたゴルゴーン達はステンノを見つめる。いつの間にか彼女は帰還していたようだ。そして僕たちを見下すようにみながら言った。



「状況は聞いたわ。石化が効かない以上奥の手を使うしかないわね。さあ、みんなあの薬を飲みなさい、裏切者と侵略者を倒すのよ」

「ステンノ姉様……」



 追い詰めているはずなのに不敵な笑みをうかべている姉に私は恐怖の感情を抱くのであった。


そろそろ話も終盤です。よろしくお願いいたします。


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