40.合流
なぜかアスに胸元を重点的に治療された後、俺達はカサンドラが閉じ込められているという牢獄へと向かった。仕掛けは砦跡に住んでいる蝙蝠に聞いたらあっさりと外すことができた。ステンノのやつはスイッチを念入りに隠していたようだが、俺のギフトの前では意味はない。こいつら蝙蝠ははステンノがトラップを使用するところを何度も見ているからね。
「ふふ……やっぱり……シオンは頼りになるね」
「俺はこういうことだけは得意だからさ、でも、俺だけじゃダメなんだ。さっきだってアスがいなかったら毒にやられていたしね。頼りにしてるよ」
「うん……治療なら任せて……何か久々に一緒に冒険しているって感じだね……」
俺の言葉にアスは嬉しそうに頷いた。確かにアルゴーノーツにいた時も最後の方は俺も迷走していたし、なんというかぎこちなさのようなものもあった。でも、今は違う、まるで昔に戻ったようだ。
スイッチを押して扉が持ち上がる音を確認した俺達は牢獄へと向かう。これで、カサンドラ達を救出できるだろう。そういえばペガサスは何をやっているんだろう? 俺を囮にしてエウリュアレさんを助けるとかいっていたけど……
「あいつら何やってんだ?」
「カサンドラが……空飛ぶ馬と戦ってる……」
牢屋の中ではカサンドラに倒されたであろうオークの死骸が横たわっており、なぜかペガサスとカサンドラがにらみ合っていた。カサンドラは気絶しているエウリュアレさんと村長をさんをかばうようにして剣を構えており、ペガサスをエウリュアレさんを何とか助けようとしているようだ。
「おーい、カサンドラにペガサス、何をやっているんだ。お前らは仲間だよ」
俺の言葉にペガサスとカサンドラがこちらを見つめる。そしてカサンドラは驚いた顔をしていたが、すぐに嬉しそうな笑顔になった。
「シオン、無事だったのね!! 心配したのよ。てか、この馬もあなたの仲間のなの? あなた魔物ならなんでも仲間にするのね」
『そうか、こいつは貴様の仲間か……失礼した。そこの男を守っていたのでな』
そういってペガサスは地上に降りたった。俺の言葉にカランドラも安堵の表情で武器を下ろす。ペガサスは一瞬村長を憎らし気に睨んだが、すぐにエウリュアレの元へ駆け寄って心配そうに見つめながら鼻をならした。
「この馬、本当に彼女が心配だったのね」
「そこのゴルゴーンは……今寝て体力を回復しているだけ……目が覚めたら元気になるはず……」
「ペガサス安心してくれ、命に別状はないってさ」
『良かった……彼女は心の優しい子なんだ……こんな目にあっていい子ではないのだ……』
そういうとペガサスは彼女にすり寄って鼻を鳴らす。この二人がどんな関係かはわからないけれど、確かな絆を感じた。俺はエウリュアレを救えて本当によかったと思う。でも、これで終わりではない。ステンノをなんとかしないと、また同じことがおきるかもしれないのだから。
ってかペガサスはどうやって侵入したんだ? ああ、こいつ空を飛べるから飛んで、穴の開いている天井から侵入したのか。こいつの力を借りれればゴルゴーンの里へのショートカットになりそうである。
「なあ、ペガサス悪いんだが、みんなを乗せて一緒に脱出してくれないか?」
『断る! 我は我の認めた人間以外は乗せぬ。我が種族の掟で己が認めたものしか乗せられぬのだ。確かにエウリュアレを助けてくれたことは感謝している。だが、これとそれは話が別だ』
俺の言葉に即答するペガサス。この馬めんどくさいなぁ……でも、俺達人間とは違い彼らには彼らのルールがあるのだ。それを強制することはできない。まあ、エウリュアレさんの口からステンノの悪事を話してもらえば、俺達の勝ちだしね。俺とエウリュアレさんがいれば大丈夫だろう。
「それじゃあ、俺がエウリュアレさんと、先にゴルゴーンの里にペガサスで行くってかんじでいいかな?」
『それならば構わぬ。貴様も乗せてやろう』
「女の子と二人っきり……ダメだよ、シオン……どさくさに紛れて変なところを触るつもりでしょう……」
「うわ、最低ね。やはり、女好きね」
反論が意外なところから飛んできた。アスってば何言ってんの? いやあ、確かにエウリュアレさんは魅力的だけどそんなことをしている場合ではない。てかカサンドラまでゴミを見る目で見てくるんだけど……この前のパーティーで女の子とばかり話していたからかいまいちそっちの信頼が無いんだよね。俺童貞なんだけど……
「俺への信頼感ー!! でも、ペガサスは認めた者しかのせないんだから仕方ないだろ」
「むー……私ものせて……」
アスがしばらく唸った後に無表情にペガサスに声をかけた。しかし、ペガサスは首を横に振って拒否をする。
『悪いな、我は我が認めたものしか乗せぬ』
「やっぱりだめだって」
「ちょっと……説得する……」
そういうとアスはペガサスを撫でる。優しく接して好感度を稼ぐという作戦だろうか? アスにしては珍しいなと思いつつ、この馬は心が読めるのだ。おそらく無駄に終わるだろうという確信がある。
「乗せないと食べるよ……いい感じに筋肉がついてるね……肉筋もよさそう……シオン、馬刺しとステーキどっちがいい? 神聖な生き物だからステータスアップとかしないかな? 薬の材料にも良いかも……」
『ひえええ! 本気で我を食べる気だぞ。なんなのだ、この女はぁぁぁぁぁ!? 乗せる、乗せるから、頭の中で調理方法を考えないでくれぇぇぇl』
ちげぇぇぇ、かわいがるんじゃなくて、肉屋が家畜を選別するような感じだった。俺は恐怖に泣き叫ぶペガサスを宥める。
というわけでアスとエウリュアレ、俺がゴルゴーンの里へ行き、カサンドラは村長を村に届けてから合流することになった。てか、ペガサスは種族の掟がどーのこーの言っていたがいいんだろうか?
想いの力ってすごいですよね。想いが伝われば、ペガサスに乗る資格がなくてもなんとかなるんですよ。
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