36.再会
外に出て俺達はシュバイン達と合流をするために駆け出した。しかしあれだよね、外を出ると気が緩んだこともあり、背中が気になる。てか、おんぶってやばいな。そんな場合じゃないけど嫌でも背中にある柔らかい感触を意識してしまう。ごめんメデューサ、ペルセウス……と思いながらも俺は走り続ける。
『うーん……ペルセウス……』
「悪いね、俺はシオンだ。意識は戻ったかな?」
「うわぁ……今のは違うんだよって、なんで僕は背負われているんだ?」
俺は背中で騒いでいるメデューサに事情を説明する。牢屋での話や、ステンノがメデューサの血で薬を作っていたことなどを説明すると、彼女は悲しそうに呻いた。その後、俺の後ろから鼻をすする音がしたのは気のせいではないだろう。あれだけのことをされてもどこかで信じていたのだ
「ステンノ姉さん……なんで……」
彼女には申し訳ないが、今はへこんでいる場合ではない。戦の音がするほうに向かうと警護が強力な穴倉をトロル達とシュバイン、ペルセウスが遠目に眺めていた。その穴倉には、柵があったり高台があったりするためか攻めあぐねているのかもしれない。
「あそこは食糧庫兼避難所なんだ、あそこに籠城しているってことはかなり追い詰めたんだね……すごいな人間は」
複雑そうな声色で彼女は言った。まあ、自分の同族が追い詰められているんだ。素直には喜べないのだろう。それに戦ってるのは半分以上魔物だけどね。とにかく、俺達は兜を脱いでシュバイン達と合流をした。
「おお、我が歌姫よ!! 無事だったようだな」
「ペルセウス……君も無事でよかった!!」
俺の背中から飛び降りたメデューサはそのままペルセウスと抱き合った。先程までの沈んだ声色が嘘のように嬉しそうだ。それは英雄譚の一シーンのようで俺も笑顔を浮かべてしまう。
「あのね……やっぱり姉様が黒幕だったんだ……僕のことも……」
「ああ……心配するな。あとは私がなんとかする。だから君は休んでいてほしい」
『シオン、うらやましそうな顔しないの』
「別にしてねえよ!? 感動してるんだよ!! ツンデレがデレデレになる瞬間をみたんだからさ。ああ、でもやっぱりいいなぁ」
『シオンもぶれねえな……それよりもどうするんだ? あんな柵なら多少の痛みを我慢すればぶち壊せるぞ』
シュバインがゴルゴーン達が立てこもっている穴倉をみながら言った。彼の言う通り、身体能力の優れたシュバインや、再生能力の高いトロルならば本気を出せば矢も気にすることなく突破できるだろう。それをしないのは俺のお願いがあったからというのもあるだろう。膠着状態の方が都合がいいからね。
『それでどうするんだ? このまま現状維持をするにしても、援軍はこないんだろ? だったら火でも放って、穴倉から出てきてもらって確固撃破したほうがいいんじゃないか』
「お前容赦ないな……エウリュアレさんの居場所がわかったから俺が助けに行くよ。それまで時間をかせいでおいてもらえるかな?」
俺は物騒な事を言うシュバインをなだめる。フィズと工房で見つけた証拠に、エウリュアレさんの証言があれば穏便に戦いを終わらせる事ができるだろう。
「一言いいだろうか?」
悩んでいる俺にペルセウスが真顔で言った。何か名案があるのだろうか?
「ツンデレがデレたぞ、シオン! 我が歌姫は無茶苦茶可愛いくないか? ほら、今も私の胸元でデレてくれるんだ。なんかすっごいいい匂いがするぞ!」
「うるさい! 別にデレてるわけじゃないんだからね!! って言うか匂いを嗅ぐなぁぁ!」
『シオン……君もいつか彼女できるといいね』
俺お前らのために頑張ってるんだけど……こいつら爆発しないかな? などと思ってるとペルセウスをひっぺがしたメデューサは真面目な顔をして俺に言った。
「僕に説得させてくれないかな? フィズが証拠を集めてくれてるみたいだし、無駄かもしれないけど、できることはしたいんだ」
「大丈夫なのか? 我が歌姫よ。心無い言葉が君を襲うかもしれないのだぞ」
「わからない……でも話してみようと思う。ステンノ姉さまだって理由があってこんなことをしているのかもしれないし……このまま膠着状態が続けばいいけど、戦いが始まったら君たちやゴルゴーン達だって、無傷じゃすまないよね。僕はみんなが傷つくところをみたくないんだ……シオンはエウリュアレ姉さまを探してくれるかな?」
「ああ、なるべく急ぐよ、無理はしないようにね。シュバイン、彼女を守ってあげてくれ。とりあえず急ぐか……」
『足が必要ならば我が力を貸そう』
そういうと背後から声が聞こえた。振り向いて俺が見たのは先程助けたペガサスだった。
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