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33.ペガサス

メデューサの監禁されているのは村の外れにあるステンノの工房だ。ここで彼女はさまざまな薬品を作っているのだろう。ひょっとしたら同族には見られたくないような実験もしているのかもしれない。

 ステンノの工房へ向かう途中何人かのゴルゴーンとすれ違う。あたりを見回しながら慌ただしい様子でどこかへ向かっている。おそらく先ほど声を合図に里の食糧庫にゴルゴーン達が向かっているのだろう。

 俺がゴルゴーン達をやり過ごし、目的の場所に向かっていると、くぐもった声が聞こえた。そちらの方をみると馬小屋が目に入る。声をした方をちらっと見てみるとそこにいるのは一匹の馬がいた。

 いや、ただの馬ではない。翼の生えた馬……ペガサスだ。認めたものしか乗せない誇り高き存在で、ゴルゴーン達の守護者だと聞いたことがある。その体躯はとても美しく、しなやかな体つきをしており、背後に天使のような羽が生えていることもあり、とても幻想的だった。だからこそ、何者かにつけられたであろう、ひっかき傷みたいなものが際立った。



『くぅ……あの蛇女め……乗せるのを拒んだからといって八つ当たりをしおって』



 苦しそうなペガサスを見て一瞬悩んだが、とりあえず俺はそのペガサスの方へと向かう。時間がないのはわかっているが傷ついたやつを放ってはおけないからだ。だってさ、俺には傷を治す力があって、目の前に傷ついたやつがいるんだ。放っておくなんてできるはずがないよね。

 ペガサスの前で兜を脱ぐと、彼は急に現れた俺を警戒したかのように後ずさった。俺は両手を上げて敵意が無いアピールをする。



『なんだ貴様は!? 下等な人間ごときが我に何の用だ』

「気にしないでくれ、俺は君の傷を癒しに来ただけだ」

『ん? なんだ貴様、我の言葉がわかるのか』



 しかし、誇り高いというよりただプライド高いだけでうざいな……まあ、いい。ここまで来たのだ。せっかくだし、癒すだけ癒そう。それに……こいつの傷はゴルゴーンに引っかかれた傷だ。俺たちの襲撃でパニックになったゴルゴーンに襲われたり、八つ当たりをされたのかもしれない。だったら俺達にも責任あるしね。俺は手をかざして法術を唱えた。


 

「癒やせ」

『人間よ、貴様はなぜ、我を助ける?」

「困っている奴がいたら助けるのは当たり前でしょ」

『我は人ではないぞ。そしてここはゴルゴーンの里だ。貴様のような人間がいるのはただならぬ事情があると思うのだが……』

「みりゃあ、わかるよ。だから、ただ癒すだけだよ。あとは自己責任だからね。ちゃんと逃げろよ。ああ、でも覚えていたらお礼をしてくれると嬉しいけどね」



 せっかくだから、美少女に変化して恩返しに来てくれないかな? くだらない事を考えている俺の言葉に怪訝な顔をしていたペガサスは、なぜか俺のかざした手に触れて、そして驚いた顔をした。



『我の言葉がわかるのは貴様のギフトか。そして、貴様は……人と魔物を同列に考えているのだな。面白い奴だ。だがその考えでは生きづらいのではないか?』

「なんで俺のギフトがわかるんだ? だって人も魔物も悪い奴もいい奴もいるのは一緒だからね。それに別に生きづらくなんてないよ。俺の周りはいいやつばかりだからさ」



 俺の言葉にペガサス俺を見つめたまま何か考え事をしているようでなぜか動かない。しかし、アスの好きな恋愛小説に出てくるキャラみたいなこと言うな。羽がある馬の方が面白い奴だと思うんだけど。


 

 俺はペガサスに別れを告げて、俺は目的地へと向かう。しばらく進むと目の前に目当ての穴倉がみえた。穴倉の前には扉があるが、乱暴に鍵が壊されていた。どうやら、先客がいるようだ。俺は警戒をしながら前へと進む。

 じめっとした空気の中、俺は一つの扉の前にたどり着いた。大量の薬棚と本棚があり、大きな机の上には書きかけの書類と瓶に入ったネズミが数匹入っている。不自然に本棚が荒らされており、まるで泥棒でも入ったかのような感じだ。

 薄暗いせいもあり、俺は誤って地面に転がっていた空き瓶を踏んで砕いてしまった。甲高い音が響き渡る。

 


「誰かいるのかしら?」



 俺の背後から声が聞こえた。まずい!! 慌てて振り向くがそこには誰もいなかった。

できたら今日もう一話更新したい。



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