28.交渉
ゴルゴーンと目が合った私の身体が瞬時に石化をする……などという事はなかった。私がギフトに目覚めたと同時に手に入れたスキル『状態異常耐性EX』はいかなる状態異常も無効化にするのだ。それはゴルゴーンの石化も例外ではない。
勝利を確信している目の前のゴルゴーンに私は杖による一撃を放つ。完全なる不意打ちの一撃は目の前のゴルゴーンの腹部に直撃をする。ゴルゴーンは苦痛に顔を歪めたが、致命傷には程遠いようだ。距離をとって補助の法術をかける時間を稼ごうとした私の背後に何かが迫る音がした。
「グガァァァァ」
「こいつらは……」
私の背後からやってきたのは3匹ほどのトロルだった。しかも、なんだろう。正常な状態ではない。何らかの薬によって思考力が奪われているようだ。成分さえわかれば解毒剤を作ることはできるのだけれど……
「私の魔眼を無効化するなんて……あなたがあの人の言っていた私たちの血を求めてきた冒険者ね。何らかの治療スキルをもっているのかしら」
「あの人……?」
不意打ちから立ち直ったゴルゴーンが厭らしい笑みを浮かべながら私に声をかけてきた。それにしても、気になることを言っている、あの人とは……?
「もしかして……村長さん?」
「あの人と、あの人間を一緒にしないでくれるかしら。あの人間も愚かよね。自分の娘の命がかかっているとわかったらあなた達のことをペラペラしゃべってくれたわ。囮にもなってくれたし」
「あなた……薬を取引に脅迫したの……?」
「ふふ、本当に毒と薬は使いようね。おかげで私は自分の考えが正しいことがわかったわ」
得意げに喋るゴルゴーンに私は歯ぎしりをすることしかできない。牢獄での村長さんの辛そうな顔が思い出される。こいつは許せない……
「ちなみに時間稼ぎをしても無駄よ。私たちの里にやってきた、あなたの味方達は今頃牢屋で囚われているわ。助けはこないわよ」
「シオン達が……なら……なぜ私を殺さないの……?」
トロルたちは私の背後で待機をしていて襲ってくる気配はない。彼女が命じればすぐにでもトロルたちは私を襲うだろうにだ。
「あなたと取引をしたいのよ。ゴルゴーンの血の効果に気づくという事はあなたも薬に関しては詳しいのでしょう? ならば私に力を貸しなさい。悔しいけど人間達の方が毒には詳しいのよね。私はね毒と薬の力で人や魔物たちを支配したいの。協力をするならあなたや仲間の命も助けてあげるわ。なんなら、あなたにも美味しい思いをさせてあげる。悪い話ではないでしょう?」
「あなたは……薬を……治療のためにつくるんじゃないの?」
「ええ、違うわ。例えば、毒をばらまいて、治療薬を渡す。そうすれば、そいつらは私のいう事を聞かざるをえないでしょう? 私のギフト『清濁の薬師』は素材の治療効果と毒の効果を瞬時に見抜くわ。このギフトによって人を支配しろと神が私に授けてくれたのよ」
目の前のゴルゴーンの言葉によって、私の感情は怒りに包まれる。こいつは何もわかっていない。薬は人を悲しませるためのものではないのだ、人々を救うためのものなのだ。
「それは違う……薬は……人を救うためにある……」
「あらあら、交渉は決裂ということかしら? 仕方ないわね。あなたに毒は効かなくても、あなたの仲間はちがうわよね。仲間の命がかかっていれば結局私のいう事を聞くでしょう」
ゴルゴーンの合図と共に背後のトロルたちが迫ってくる。シオンごめんね……彼女のいう事を聞いていれば私達もシオンも助かったかもしれない。でも、それだけは……それだけは認めるわけにはいかなったのだ。
私が死を覚悟すると同時に天井から轟音と共に何かがふってきた。
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