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27.遭遇

 私を押し出したカサンドラはスキルを使って、猛スピードでゴルゴーンの少女を助けにいった。それと同時に入り口に鉄の扉が落ちてきた。重さに反応する仕掛けだったのだろうか? カサンドラはこれを予言していたのだろうか? 二人一緒に入ったら危険だった。一緒に閉じ込められてしまいなすすべはなかっただろう。彼女は行商人からゴルゴーンを守るかのように間に割り込んで武器を構えた。



「さて、正体を現しなさい。あなたは行商人ではないでしょう? さしずめ、私たちをここに誘いこむための囮役と言ったところかしら」

「さすがは冒険者ですね……お見通しなのですか……」



 そういってフードをとると行商人のふりをしていた人物の顔があらわになる。話に聞いていた女性ではなく、初老にかかった男性の顔があらわになる。村長のケペウスだ。彼は観念したように顔をうつむいたままため息をついた。



「そんな……村長さん……?」

「やはり、アンドロメダさんが関係しているのですか?」



 驚く私とは対照的にカサンドラは冷静に尋ねる。私たちの視線から逃れるように目をさらしながらも村長さんは答える。



「おっしゃる通りです。娘を救うには行商人の薬が必要なのです。あなたがたを罠にはめれば娘を……アンドロメダを救ってくれると、あの女は私に約束をしてくれたのです!! だから私は!!」

「あなたは行商人が約束を守るとでも思っているんですか? それに私たちと一緒に始末されるとは思わなかったんですか?」

「それでも……娘を救うにはこうするしかないんですよ!!」

「カサンドラ!!」

「大丈夫よ、アス」



 そういって、村長は胸から短剣を取り出してカサンドラに切りかかった。もちろん、素人の攻撃なんてBランクの冒険者に当たるはずもなく、村長はカサンドラの当身によって気絶させられた。



「ごめんなさい、少し眠っていてください。それにしても、行商人はひどいことをするわね……」

「薬と毒を……悪用するなんて……絶対許せない……」



 私とカサンドラは怒りの言葉を吐く。カサンドラはやりきれない表情で気を失った村長をみる。薬は人を救うために使うものだ。それを悪用するなんて許せないし、取引の材料に使うなんてもってのほかだ。私は行商人への嫌悪感が胸の中でひろがるのを感じた。

 そう、薬は人を救うためにあるのだ。人の笑顔を守るためにあるのだ。なのに……



「アス、ゴルゴーンの治療はあなたからもらったポーションでするから、この扉を開ける仕掛けを探してくれないかしら」

「わかった……でも……治療だけなら私が牢屋に入った方が……」



 私が言いかけると天井から何匹ものオークが降ってきた。カサンドラにはここまで予言で視えていたのだろう。私だってサポートとはいえBランクの冒険者だ。あの程度の数のオークなら何とか対処はできる。でも、ゴルゴーンや村長を守りながらとなると話は別だ。



「私なら大丈夫、この程度の敵なら余裕よ」

「わかった……すぐに戻る……」



 そういうと彼女は刀を振るってオークを圧倒する。私は彼女の言葉を信じてトラップを解除するために牢獄を探索することにする。薄暗いところに一人は少し心細いがそんなことは言ってられないだろう。




「あら、あのトラップに気づいたのかしら? やるわね、それともそういうギフトをもっているのかしらね。もしくは、あの人間が予想以上に使えなかったのかしら」



 少し進むとフードをかぶった人に遭遇した。そいつは、何が楽しいのか、愉快そうに嗤った。

 こいつが本物の行商人だろう。私たちが牢獄に閉じ込められるタイミングで覗きにでも来たのだろう。彼女をみた途端、私の中の本能が危険だと訴える。でも、それ以上に許せないという想いが勝る。



「あなたが……行商人だね……完全には治らない薬を渡して……何を考えているの?」

「ここで死ぬあなたには関係のない話よ」



 そういって彼女はかぶっていたフードを振り払うと同時に私を見る、その髪は人のモノではなく蛇で……とっさのことに私は思わず彼女の怪しく光る眼を凝視してしまう。そして彼女はにやりと笑う。その笑みは美しい顔だというのになんとも醜かった。



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