26.追跡
続いてアス視点です。
私はカサンドラの表情で全てを察した。浮かべている表情と、しゃべった内容に違和感がある。これは彼女のギフトが発動したという事だろう。事前にシオンから話を聞いてなかったらちょっと変だなって思った程度で流してしまっただろう。
「カサンドラ……ギフトが発動したんだね……」
「なんのことかしら、よくわからないわね」
「なら何も言わなくていい……私はあなたを信じて行動するだけ……だからその時が来たらあなたはあなたの最善と思う行動をして」
カサンドラが驚愕の表情をしたあと安堵の笑みを浮かべた。その一瞬の表情の移り変わりで私は彼女の孤独の一端を知った気がした。そして、彼女にとってシオンと言う理解者がどれだけ大切な存在になったかもわかってしまった。そして、私は短い間だが一緒にすごして思ったのだ。私も彼女の助けになりたいなと……そんな彼女を安心させるために私はさらに言葉を紡ぐ。
「私は信じる……シオンが信じたあなたを……私が信じたいと思ったあなたを信じる」
「ありがとう。あなたとシオンはやっぱりどこか似てるわね」
その言葉で胸が少し暖かくなった気がした。そして私たちは一緒に村長の家へと向かうのであった。
村長の家の前に身を潜ませていた私たちは、ちょうど行商人が外に出てくるのを見かけた。フードをかぶっているため顔が見えない。しかもあのフードには隠蔽効果があるのか、スキルを使っても本当にゴルゴーンなのかがわからなかった。
私とカサンドラは警戒しながらも追いかける。行商人がしばらくを森を歩くと、何やら古い建物があった。そこは昔は、砦か何かだったのだろう。今は朽ちかけている建物の中に行商人は入っていった。
「カサンドラ……入っても大丈夫かな……?」
「ええ、何の問題もないわよ」
私の言葉に、カサンドラは何でもないような口ぶりをしながらも険しい顔をしてうなずく。その表情で察する。ああ、彼女はここで何かが起きるという予言をみたという事なのだろう。何が起きるかはわからないけれど、何かがおきると分かれば覚悟はできるものだ。私たちは気配を消しながら行商人の後ろをついて行った。
中には明かりはなかったが、天井などがボロボロなためか、天井から月の光が漏れていてそこまで不便は感じなかった。まるでアンデットや魔物でも住んでいそうな雰囲気だったが、特になにかと遭遇することはなかった。ひょっとしたら魔物は行商人によって退治されていたのかもしれない。
奥に進むと地下へと進む階段があった。そこは牢獄なのだろう。階段の先にはいくつもの牢獄があった。そして、その牢獄の中に扉が開いていて、一つだけ明かりがついている部屋があった。
そこには一人の少女が鎖につながれており、行商人がそれを眺めていた。まさに商品を検品にでもきたつもりなのかもしれない。
鎖に繋がれた少女の意識なく首がだらんと下がっている姿は一瞬死んでいるかのようにすら見えた。
慌てて、彼女の状態をみると生命力が下がっており、ひどく衰弱しているようだ。そして体にあちこちに切り傷がある。そしてその傷は包帯などで雑な治療をされているだけだった。今は生きているが放っておいたら長くはないだろう。そして、最も大事なことだが彼女は人間ではなかった。
「あの子……ゴルゴーンだ……」
「そう、なら助けなきゃね、治療用にポーションを一本もらうわね。あとは、私にまかせて」
「私もいくよ……きゃっ!!」
助けに入ったカサンドラを追って、私も牢獄に入ろうとすると、カサンドラに乱暴に押し出されてしまった。抵抗すれば抵抗はできたけれど、普段と違う彼女の行動に、私は吹き飛ばされるままでいた。
そして、まるで誰かが入ってくるのを待っていたかのように扉の上から格子が降りてきた。もしも、カサンドラと一緒に入っていたら二人で牢獄に閉じ込められていただろう。私達は行商人にこの部屋に誘われたということに気づく。
カサンドラの予言は予備知識がないと何か体調悪いのかな? 機嫌悪いのかな? くらいにしか気づけません。アスが気づいたのもシオンからカサンドラの『ギフト』の内容をきいていたからですね。さりげない主人公の有能アピール。
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