16.アンドロメダ
ペルセウスは誰かの部屋らしき扉をノックして扉越しに声をかける。やけに手慣れた様子である。
「やあ、アンドロメダ、体調は本当に大丈夫なのか?」
「ペルセウス、それにさっきのお客さんたちまで……」
扉が開くと先ほどの女性……アンドロメダが出てきた。彼女はペルセウスを見ると満面の笑みを浮かべたが、背後にいる俺たちをみると驚いて声を上げた。
「彼らは村長からこの街をゴルゴーン達から守ることを依頼されたのさ。それで、ゴルゴーンの襲われた時の事を詳しく聞きたいらしいんだ」
「先ほどは案内ありがとうございました。少しでも情報を得たいと思いお話を聞かせてもらいに来ました」
「わかりました。狭い部屋ですがどうぞ」
そうして俺たちはアンドロメダさんの部屋へと入る。彼女の部屋はレースがかかっていたり、可愛らしいぬいぐるみがあったりと、なんというか本当にかわいらしい部屋だった。ていうか、俺は今女の子の部屋に入ったの? なんか緊張してきた。アスの部屋には入ったことがあるが、あの部屋は変な薬品の入った瓶と、謎の植物しかなかったからね。俺がきょろきょろしていると、背後から声がかけられた。
「シオン……」
「なんだぁぁぁぁぁ、目がぁぁぁぁぁぁ、目がぁぁぁぁ!!」
「ちょっと何やってるのよ、アス!? シオン大丈夫?」
振り向くと同時にアスが目つぶしをしてきやがった。こいつなに考えているの? 俺が目をおさえてフラフラとしているとカサンドラが支えてくれる。
「シオン……いやらしい目つきで……人の部屋をみたらだめ……」
「口で言えばわかるんだけどなぁぁぁぁ!!」
「あの……大丈夫ですか!?」
「まあ、いつものことなので……大丈夫です」
ああ、このやり取り懐かしいなぁと思いつつ、俺はカサンドラの肩を借りながら何とか立ち上がる。てかアンドロメダさん引いてない? 俺は心配そうに俺に声をかけてくれたアンドロメダさんに返事をした。
「問題ない……癒す……」
「おお、自分で傷つけて、癒す。まさにSとMの永久機関……何ともうらやましい」
「いやぁ、問題だらけじゃないの……シオンとアスっていつもこういう感じなの?」
アスの言葉と共に一瞬で痛みが引いた。カサンドラのあきれた視線が痛いし、ペルセウスはやかましい。というかアンドロメダさんに変な奴とおもわれたんじゃ……などと思っていると彼女は何かを理解したかのように、ぽんと手をたたいた。
「ああ、シオンさんもペルセウスと同じで痛いのがお好きなんですね、そうでもなければ冒険者なんて危険な仕事やっていけないですもんね」
「いや、冒険者が全員こいつらと一緒だと思わないでほしいんだけど……少なくとも私はまともよ」
「俺もちがうんだけどなぁぁぁぁ!!」
「シオン……痛いのが好きなの……?」
「はっはっは、照れるな同士よ」
なんか頭が痛くなってきた気がする。そんなことよりも話を進めないと……と俺が思っているとアンドロメダさんが口を開く。
「ふふ、冒険者さんってもっと怖い人たちだと思ってました。ちょっと安心しました。ゴルゴーンについてでしたよね、私でよければお話をさせていただこうと思います」
そういう彼女の顔には先ほどまであった警戒心や緊張が少し薄れている気がする。俺がアスを見ると彼女はこっそりピースをしてきた。計画通りってことかな。いや、絶対違うでしょ。そうして俺たちはアンドロメダさんの話を聞く。
「私たちは三日に一度ゴルゴーンと、畑でとれた農作物と、森でとれるキノコや薬草を交換していました。作物を育てることに関しては私達人間の方が、森に関してはゴルゴーンの方が詳しかったからちょうどよかったんです。ですが、ある日いつも来ていたゴルゴーンが来ない日があったんです。こんなことは初めてでしたが、まあ、彼女達にも事情があるのだろうと思い、その日は帰宅してその三日後にいつもの場所に行ったのです。そこにはいつもとは違うゴルゴーン達が険しい顔で待っていて私達にこういったんです。『よくも私たちを騙したな』と、もちろん私たちは何の事かもわからなかったので、必死に否定をしたのですが……」
そういうと彼女は体を震わせた。まるで何か恐ろしい出来事を思い出しているかのように……そんな彼女にペルセウスが、体を寄せる。
「すまない……嫌なことを思い出させてしまったな……」
「大丈夫よ……、ありがとう。ペルセウス。失礼しました。そのあと、私たちはゴルゴーンに襲われて体を毒に侵されて倒れていたのですが、父から薬をもらって体調が治ったのです」
「なるほど……大変だったね……ちなみにその薬を見せてもらえる……?」
アスの言葉にアンドロメダさんはペルセウスを見る。ペルセウスは安心させるかのようにうなずいた。
「別に構いませんが、高価なものらしいので落とさないようにしてくださいね」
そういうと彼女はタンスの中から小瓶に入った紫色の液体を取り出して、アスに渡した。アスはその液体をじっとみたり、匂いを嗅ぎ始める。しばらく続きそうだから、世間話でもした方がいいだろう。
「そういえば、アンドロメダさんとペルセウスは仲がいいんですね」
「ええ……私とペルセウスは幼馴染なんです。この村に同年代はいなかったからいつも一緒にいたんです」
「懐かしいな、昔はアンドロメダの方がおてんばだったというのに今はすっかり落ち着いたな」
「私は大人になったのよ、あなたは……昔からMだったわね……」
そういって見つめあう二人には言葉にできないような絆のようなものを感じた。まるでアスと俺の様である。
「へえ、幼馴染っていいですね、私にはそういう人いなかったのよね……」
「カサンドラには俺っていう相棒がいるだろ?」
「はいはい、そうね」
フォローしたつもりがカサンドラに流されてしまった。ひどくない? 寂しそうな顔していたから、言ったのに……でもまあ、カサンドラの顔がにやけているからいいか。
「いっつ……!?」
「ありがとう……だいたいわかった……多分あなたはまだ完治していないから、ちゃんとこれを飲んでてね……」
そういうとアスがアンドロメダさんに薬を返す。てか、俺の足を踏んだのは何でなの? 俺が抗議の目線を送るが彼女は無表情な顔で無視をするだけだ。
そして俺たちは、アンドロメダさんにお礼を言って去るのだった。ペルセウスはもう少し、アンドロメダさんと話してから帰るという事で俺達だけで宿に戻る。
「それでアスどうだった?」
「あの薬はなんだったの?」
俺たちの問いに彼女は神妙な顔をする、その手にはハンカチが握られており、なにやら液体がしみ込んでいた。いつの間にか薬を少し拝借していたようだ。
「例の行商人はクロ……この薬にはゴルゴーンの血が入っていた……」
自分で書いててあれですが、アンドロメダと聞くと聖闘士星矢が出てきますね……
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