5.合流
「シオン、この人は誰かしら? 随分仲が良さそうだけれど……」
ギルドに入った俺は鋭い声で話しかけられる。もう、みんないるようだ。
『うわぁ……修羅場だ……シュバイン、逃げよう。ここは地獄になるよ』
『ん、なんでだ? あー、恋のあれこれか? なら、両方とつきあえばいいじゃねえか?』
『いいから……人間はめんどくさいんだよ』
先にギルドで待っていたカサンドラが、なぜか不機嫌そうな顔でアスを見る。アスの方もまるでカサンドラに対して無表情だ。え? 初対面だよね。なんでこんな険悪な感じなの? そしてライムはシュバインに乗って、酒場の方へと逃げやがった。仲間なんだから助け合おうよ……
「私はアスクレピオス……長いからアスでいい……私はシオンの幼馴染にして、相棒」
「相棒……ああ、あなたがアスね、名前は聞いたことあるわ。私はシオンの真の相棒のカサンドラよ。よろしくね、元相棒さん」
「む……私の方が相棒歴が長いんだから敬語を使うべき……新人相棒さん」
そういうとカサンドラとアスは笑いながら睨みあう。お互い笑みを浮かべているけど、目が笑ってないから怖いんだけど……こいつらなんで仲悪いの? もしかして前世で宿敵同士だったとか? まあ、とにかく一緒に行動をするのだ。険悪なままではまずいだろう。
「アスは俺たちを指名して依頼をしてくれるらしいんだ。だからそんな喧嘩腰にならないでくれると助かるんだが……」
「無理よ。だってこいつは、イアソンと一緒にあなたを追放した元パーティーメンバーでしょう!? 許せるわけないでしょ。そもそも、なんであなたはこいつと仲良さそうにいるのよ!!」
俺はその一言でハッとする。ああ、カサンドラは俺のために怒ってくれていたのか……まずは誤解を解かないと……そうして俺はカサンドラにアスが俺の追放に関わっていなかった事を説明する。すると彼女はあきれたというようにため息をついた。
「本当にあのイアソンってやつめんどくさいわね……それよりシオン……」
「ん? どうしたんだ?」
「その……『アルゴーノーツ』に戻るとか言わないわよね」
先ほどまでの強気な表情から一転して、まるで答えを聞くかのように恐れるかのように、気弱そうな顔で、俺に尋ねる。
俺は彼女に心配させまいと微笑みながら答えた。同時に彼女を不安にさせたことを反省する。
「大丈夫だ。俺はもう『群団』のシオンだ。だからそんな顔しないでくれよ。相棒」
「そう……そうよね……変なこと聞いてごめんね、シオン」
俺とカサンドラが見つめ合っているとアスが、無表情のまま口を開いた。
「む……ラブコメの気配を察知……シオン依頼の話をしてもいいかな? 後で、クエストは……アンジェリーナさんには出しておくけど……事前に話を聞いてほしい……」
「ああ、頼む」
『強い相手だといいな』
『楽な依頼だといいなぁ……』
アスの言葉を聞くと、いつの間にか戻ってきたライムとシュバインも話に加わる。こいつら絶対影で覗いてやがったな……あとでライムをどうお仕置きしようか考えていると、アスが俺達を見回して言った。
「私は……万能の治療薬を作るための材料を探している……そしてその材料の一つが見つかったの……それを採取するのを手伝ってほしい」
「採取クエストね……わざわざBランクの私達に依頼するっていう事は、そうとう難易度が高いのかしら?」
カサンドラが少し警戒をしながら尋ねる。採取クエストの難易度はそれこそピンキリだ。例えば薬草取りなんかは、初心者の冒険者のクエストの王道である。難易度が高いのはレア素材や、魔物から採取する場合である。わざわざBランクの俺たちを指名するってことはかなり厄介なのだろう。
カサンドラの問いにアスはうなずいて言った。
「ええ、私が欲しい素材は……Bランクの魔物、ゴルゴーンの血……」
「ゴルゴーンか……」
「中々珍しい魔物ね」
『へぇ……あいつら中々厄介なスキルをもってるんだよなぁ。戦うのが楽しみだぜ』
『あいつらみんな女の子なんだよね、ちょっと興味あるかも』
俺たちはそれぞれの感想を漏らす。ゴルゴーンはトロルよりも格上でBランク上位の魔物である。俺達の力をためすのにはちょうどいいのかもしれない。これがうまくいったらAランクの昇進試験を受けるのもありだなと思う。
みんなの顔を見回すと、乗り気なようである。ライムが変な理由で、テンション上がってるけど、ゴルゴーンって、子供を孕んだら夫を栄養分にするやばい魔物だけど、大丈夫かな?
そうして俺たちはアスのクエストを受けることにしたのだった。
カサンドラとアスがちょっとギスギスしていますが、二、三話で解決します。ここをひっぱっても面白くないですしね。
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