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4.二人の朝

「シオン……おはよう……よく寝れた……」

「そうか、そりゃあよかったね……」



 俺はあくびを噛み殺しながら顔を洗う。テーブルについて、アスが用意してくれた朝食のパンと何かの肉、そしてハーブティーを一緒にごちそうになる。少し早く起きたのは朝食を準備してくれていたからのようだ。

 アスの入れてくれたハーブティーによって、俺は頭が覚醒していくのを実感する。アスは医術に関することのスペシャリストだ。『医神の申し子』たる彼女は回復系の頂点である。彼女の力によって軽い効果しかないハーブも法術と同じくらいの効果を持つのだ。

 頭がすっきりした俺はどうしても聞かなければいけないことを思い出した。



「なあ……この肉ってなに?」

「ん? トロル……豚みたいでなかなか美味しい……あと、活力が湧く……」


 やっぱりぃぃぃぃぃ!! これは彼女の悪癖である。研究熱心な彼女の好奇心は薬草などだけではなく、魔物食などにもその興味は及んでいる。しかも質が悪いことに味は良いし、ギフトを使って調べているので、毒などの心配もないのだ。でもさ、魔物を食べるって抵抗ない?

 俺がフォークを止めていると彼女は怪訝な顔をした。



「頑張って作ったんだけど……迷惑だった……?」

「いや、懐かしいなって思ってさ!! おお、やっぱり朝はトロル肉だよね」

「そう……よかった……シオン体調悪そうだったから元気が出るものにしたんだ……」



 彼女は俺がトロル肉を食べるのをみると幸せそうに笑った。やけになって食べるとむちゃくちゃうまいし、マジで体力が回復してきたんだけど……これマジ何なんだ?



「トロルの肉に強壮効果のあるハーブを使うと、体力が回復する……最近発見した……」



 確かにトロルは再生力の高い魔物だ。死んでもその効果は完全に失われずに違う効果を生み出すという事だろうか? 悔しいことに寝不足による体力の低下は完全に消え去った。頭もはっきりしてきたし、本題に入るとしよう。



「それで目的のものはみつかったのか?」

「材料の一つに目星はついた……そのためにシオン達の力を借りたい……」

「それが昨日言っていたクエストか……俺でできることならなんでもやるよ」

「ありがとう……シオンならそう言ってくれると思った……」



 そういうとアスは微笑みを浮かべる。彼女には一つの夢がある。それはすべての病や傷を癒す万能薬を作ること。実際、そんなものはできないかもしれない。だが、彼女ならば彼女のギフトならばそれに近いものを作ることができる可能性がある。イアソンは力で人を救う英雄を目指し、彼女は薬で人を救う英雄を目指しているのだ。魔物食もその研究の一環である。毒が薬になるように、魔物の肉や素材が、意外な効果を産む事がある。そして彼女は使えそうな素材の話を聞くと、パーティーを抜けて時々素材を探す旅に出るのだ。



「ちなみにこのハーブも新作?」

「そう……珍しい薬草があったから栽培してみた……口にあう? ちなみに効果は二日酔いに効く」

「おお、結構好きな味だよ、香りもいいね」

「そう……一緒だね……私もこの香り好き」



 パーティーにいる時は時々こうしてアスの新作のお茶を飲んでたなぁと思いだす。昨日酒を飲んで帰ってきた俺のために選んでくれたのだろう。

 ああ、そうだ。最近会えてなかったのでいつもの相談をすることにした。一緒に行動していた時はよくこうしてお茶を飲みながら話を聞いてもらったものだ。



「そういえばさ、この前、アンジェリーナさんを食事に誘ったらオッケーもらったんだけどこれって脈ありかな?」

「む……シオンのへたれが動いている……やめるべき……アンジェリーナさんはシオンを弟としかみてない……傷つくのが嫌ならやめるべき……」

「だよねー、ちなみにポルクスからも今度遊びに行きましょうって言われたんだけどこれは何だろう?」

「む……あの小娘、私がいない間に……やめるべき……ポルクスはたぶんあなたの事を頼りになる先輩としかみてない……勘違いして告白して振られるシオンをみたくない……」

「だよねー、ちなみカサンドラは……」

「シオン……パーティー内はやめるべき。別れた時にとても気まずい……」

「だよねー……先生も言ってたもんなぁ……」



 俺はそうして、孤児院の先生の教えを思い出す。孤児院の先生は元冒険者で、俺たちが冒険者になるって決めたら色々教えてくれたのだ。その中にパーティー内では恋人を作るなと強く言われたものだ。理由は簡単、別れた後に、それまで通りサポートや信頼ができるか? というものだった。実際恋人できたことないからわからないけど、どうなんだろうね?



「ああ、どこかに俺とフラグが立っている女の子はいないものかね……」

「大丈夫……シオンには私がいる……」

「だって俺達家族みたいなもんじゃん。何言ってんのさ」



 俺はぼやく。やはり女性に聞くのが一番だろうと思ってアスに相談しているのだが、いつも返事は芳しくない。そりゃあ、冒険者と言う不安定な職業をしている俺だけど、恋人くらいほしいのだ。Bランクの冒険者って結構すごいんだよ。なのに、全然俺の周りにフラグは立たない。おかしくない? イアソンとか無茶苦茶モテてたのに……調子にのってたらあいつメディアに刺されて死にかけてたなっていうのを思い出した。たぶんアスがいなかったら死んでいたかもしれない。

 俺が考え事をしているとアスが「むー」と唸っていた。なんかやったかな?



「鈍感……早くギルド行こう」

「え、どうしたんだよ、いきなり? 今準備するから待てって」



 そうして俺は急に不機嫌になったアスを追いかけて、ギルドへと向かうのだった。

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Bランク 

アスクレピオス


ギフト『医神の申し子』


回復法術及び回復アイテムを使用した場合の効果が倍増。及び回復系の調合時の成功率及び効果アップ



スキル


上級法術 傷の回復、身体能力の向上などの法術を使用可能。効果の向上。熟練度によって、制御力に補正がかかる。

中級棒術 メイスを使用したときのステータスアップ。

医神の目 みたものの傷の状況及びステータス異常、毒の有無、成分をなどを把握することができる。

状態異常耐性EX いかなる状態異常も通じない。


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料理上手な幼馴染っていいですよね……次の話でカサンドラ達と合流します。


関係ないですがダンジョン飯面白いですね。でも、ファンタジー世界的に、魔物を食べるって倫理観的にはどうなんでしょうかね? 豚とかと同じなんでしょうか?



特に評価ポイントは、『小説家になろう』のランキングシステムにおいてはかなり重要視されるんですよね。


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― 新着の感想 ―
[一言] シオンは鈍感以前に、生物学的に男じゃないだろこの思考。
[一言] アスって愛称だったのか。医神の申し子どころか末は医神そのもの。 そうか、アルゴー船だものなぁ。なんで気づかなかったんだろ
[良い点] アスがいなかった理由が分かってスッキリし、シオンが鈍感な理由の一端が明らかになって驚愕する。
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