1.群団
馬車の上で俺はゴブリン達を見下ろしながら指示をする。
「シュバイン!! そっちの群れを任せた。おそらく奥にいるのがリーダーだ」
『おう!! なぎ払ってやるぜ』
「追撃は私に任せて!!」
馬車の積み荷を狙ってきたゴブリン達だったが、その群れは、大剣を持ったシュバインによって蹂躙されていた。シュバインの大剣が振り回されるたびにゴブリンたちが吹き飛んでいく。そして逃げようとしたゴブリンたちをカサンドラが追撃をする。
『ねえ……シオン……』
「言うな……言わないでくれ……」
『僕らなんの役にも立ってなくない?』
「言うなっていってるだろぉぉぉぉぉ。あ、大丈夫だからね、もう少しでゴブリンは倒せるから、落ち着いてくれ」
俺は恐慌状態になりそうな馬たちをなだめながらシュバインとカサンドラがゴブリンたちを蹂躙しているのを改めて馬車の上から眺めていた。俺たちは今、馬車の積み荷の護衛のクエストを受けていた。積んでいるものは食料がメインなため、こうして腹を空かせた魔物が時々襲ってくるのだ。
「パーティーの連携を高めるためにも何かを守る依頼の方がいいんじゃないですか?」とアンジェリーナさんに言われたので受けてみたのだがなんというか、自分が役に立っている気がしない。一応リーダーと言う事でみんな指示には従ってくれるのだが……
まず、シュバインが戦いとなるとすぐに出て行ってしまう。しかも、戦闘に関しては頭が回るのだ。今も、ゴブリンの逃げる場所を一か所に誘導してくれるため、追撃をしやすく文句のつけようがない。
そしてカサンドラも同様に強い。俺が魔術を使うよりも、彼女がスキルを使って追撃した方が確実だし早い。ライムはまだいい。回復能力あるし、マスコットキャラみたいな扱いになっている。問題は俺だ。今回なんか偉そうに指示してるだけなんだけど……俺追放されないよね……
「いやぁ……最初はオークを仲間にしているといわれて驚いたのですが優秀ですな。さすが『群団』のみなさんです。ギルド一押しだけありますね」
今回の依頼主の商人のおっさんが物珍しそうに言った。最初俺が魔物を連れてきた時は少し揉めたけれど、依頼をこなしていくうちに多少は信頼を得たようだ。
ちなみにパーティー名は俺が決めた。シュバインはどうでもいいって言うし、ライムは『ライムのハーレムと使用人』がいいとかいうし、カサンドラは『漆黒英雄団』とか言ったためだ。俺ら別に漆黒でもないし、英雄でもないんだけどね……あと、個人的に『アルゴーノーツ』を連想してしまうので断ったのだ。
「おーい、そろそろ戻るぞ!!」
『おうよ! やっぱりこいつらじゃあ、つまらねえなぁ。帰ったらまたいつものあれをやるかぁ』
俺はゴブリンたちを蹴散らしたシュバインとカサンドラに声をかけた。するとシュバインは物足りなそうに、カサンドラは涼しい顔で馬車へと戻ってくる。今回は討伐クエストではないので深追いをする必要はない。むしろ納期に間に合わなくなる方が問題である。まあ、そろそろ街につくし、これでクエストは終わりだろう。そんなこんなで俺たちは順調かは置いといて、パーティーとしての経験を積んでいるのであった。
というわけで二章の開始です。
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