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アンジェリーナとジェシカ

 そうして、私たちの交流がはじまって一年の時間がたった。その間にシオンさん達『アルゴーノーツ』はEランクからDランクへ昇進したりなど色々なことがあった。私の方も、この一年で担当冒険者が増えたこともあり、良いことも悪いこともあった。そう、悲しいお別れもあったのだ。

 私たちはジェシカさんの提案で、シオンさんの昇進祝いと、ジェシカさんの冒険者講習が終わったこともあり、お祝いをしようと言う話になり、シオンさんも誘って、私とジェシカさんが時々行くバーに行った。

 


「それではかんぱーい!!」

「え、待ってください。俺はまだお酒とか飲めないんですけど」

「かたい事言わないの。いいから飲みなって、酔った勢いなら、アンジェを口説いても文句は言われないわよ」

「口説きませんよ!? 俺にそんな自信は……」

「へぇー、私ってそんなに魅力がないんですね……」



 私がわざとらしく悲しい顔をするとシオンさんは慌てた声で叫ぶ。そして助けを求めるようにジェシカさんを見たが、彼女は美味しそうにお酒を飲んでいる。コップに注がれている透明な液体は、確かすごいアルコール度数が高いやつだ。



「いやいや、そんなことないですって!! だって俺いつもアンジェリーナさんが、俺たちが依頼達成の報告したときの笑顔好きですもん!!」

「おやおや、シオンは色気づいたねぇ……好きらしいわよ、どうするのアンジェ?」

「どうしましょう……冒険者との恋愛は禁止されてるんですよね」

「だぁぁぁぁぁ。もうどうすればいいんだぁぁ!!」

「叫ぶと喉が渇くでしょう? はいどうぞ」

「ありがとうございま……ってなんだこれ苦っ!! くらくらする……」



 シオンさんがジェシカさんからもらったコップを一気飲みほすとそのままぶっ倒れた。待って、シオンさんに何を飲ませたんですかこの人!?



「え? シオンさん大丈夫ですか? 何をやってるんですかジェシカさん!! 彼はまだお酒飲んだことがないんですよ」

「あー、もうシオンは酒に弱いわねぇ……せっかく誘ってあげたっていうのに……」



 私はシオンさんをテーブルに寝かせながらジェシカさんを睨むが、彼女は涼しい顔をしている。そして彼女は一杯お酒を飲むといきなり真面目な顔をして言った。



「アンジェ……担当の冒険者が死んだらしいね……」

「ええ……聞いてましたか……」



 Dランクのパーティーだった。ゴブリンの集団に襲われて全滅だったらしい。故郷の家族に仕送りをするんだと言っていた戦士の子がリーダーだった。幼馴染の魔術使い女の子と気弱そうな盗賊の少年の三人パーティーだ。酒場でいつか「お金持ちになる」といって夢を語っていた。彼らはもう笑わないし、しゃべらない。

 彼らの事を思い出しているとジェシカさんは黙って私のコップにお酒をついでくれる。彼女が私を飲みに誘うのはいつもこういう時だ。例えば私は仕事でミスをしてへこんでいたり、例えば今みたいに担当したパーティーが全滅したりとか……決まって彼女は私をこうして誘ってくれるのだった。



「もう、誰かが死ぬのを見たくはないんですけどねぇ……」

「じゃあ、今の仕事やめればいいんじゃない?」



 彼女の前では私は思わず弱音を吐いてしまう。そんなわたしの頭を撫でながら彼女は冗談っぽくそんなことを言うのだ。ああ、姉がいればこんな感じなんだろうなって思う。



「無理ですー、だって私この仕事好きですし、私の事を頼ってくれる人だっているんですよ。シオンさんみたいに……」



 私は思わず甘えた声をだしてしまう。そして酔いつぶれている彼をみて、その髪の毛を撫でる。そう、この仕事は辛いこともある。でも……それ以上に嬉しいことだってあるのだ。例えば担当の冒険者達が昇進したり……例えばクエストを達成した後に、お礼の手紙が届いたり……だから私は頑張れる、頑張ろうと思えるのだ。

 私にできることは、せいぜい笑顔で彼らに「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」を言うくらいだけれど……クエストの情報に不備がないか、彼らに達成できる内容かどうかを精査するくらいだけれど……私は私にできることを一生懸命やるのだ。




「そうだね、たぶんあんたが思っている以上にあんたに救われている人だっているんだ、だから自分の仕事に自信を持ちなさい」

「はい……ジェシカさんは死なないでくださいね」

「当たり前でしょ」



 私の言葉に彼女はウインクで返した。彼女との時間は本当に心地よい。そして私はいつの間にかなんとなくで就職した仕事に愛着を感じることに気づく。そうなったのは、彼女のおかげが強いだろう。



「私ね、お金もたまったし、そろそろ冒険者を引退してバーを開こうと思うの。ちょうどこの店の、店主がここをたたむか考えてるから、格安で譲ってくれるって言っててね。」

「えー、いいですね!! 最初のお客さんは私とシオンさんにしてくださいね」



 そうして私たちはお互いの夢について話あったのだった。その時の私はどこか油断していたのだろう、彼女なら大丈夫だろうと。

 

本日更新一回目です。もうちょっとだけ続きます。


3万ポイント目指したいですが遠い……


後ですが、感想欄でご指摘いただいた3点を訂正いたしました。


1 アスのギフトを『医療の賢者』から『医神の申し子』へ。 アスに関しては今書いている二章で活躍予定です。


2 ポルクスの名前が一部ボルクスになっていたこと。 ご指摘いただいてありがとうございます。


3 カサンドラが予言の内容を普通にしゃべっている。そこらへんはぼかす表現に変更いたしました。


ご指摘いただいた方ありがとうございました。




続きが気になるなって思ったらブクマや評価、感想いただけると嬉しいです。

特に評価ポイントは、『小説家になろう』のランキングシステムにおいてはかなり重要視されるんですよね。

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