ジェシカの提案
「ふーん、つまり、あんたは初めてのクエストで、もう自分の実力が劣っていると思ったのね」
「はい、結局俺は一角ウサギを見つけることはできましたが、イアソンほどうまく戦えなかったし、アスのようにサポートもできなかったんです。だからこうして知識を得て、少しでもあいつらに追いつこうと……幼馴染だからこそ負けたくないんです」
「今時珍しく勤勉ですね……」
シオンさんの話を聞いて私は彼を見直した。基本的に冒険者とはそれでしか生きる方法がないものと、一攫千金を狙うものが多い。前者はそれほどのモチベーションがなく、後者は地味なことを嫌う。行き詰った中級者ならばともかく、初心者で彼のように知識を得ようとする冒険者はあまり多くないのだ。
「なるほどね、せっかくだし私が冒険者のイロハを教えてあげるわ。でもその前にあなたのギフトを教えてもらえるかしら」
「ええ、俺のギフト『万物の翻訳者』は、動物や魔物の声を聞くことができます」
「それで鳥たちと仲良くなって、これが落ちている場所を教えてもらったんですね。便利な『ギフト』ですね」
「うーん、厄介なギフトね……」
「はい……ちょっと使いづらいんですよね……戦闘力はあがりませんし」
「いや、そんなことよりも大きな問題があるわ」
私は素直に感動したがジェシカさんの顔はなぜか晴れない感じだ。なぜだろう。確かに戦闘で使えるかといえば微妙だが、索敵などには役に立つと思うのだけど。それに猫とか会話できたりするのは素直にうらやまい。にゃーにゃーと可愛らしく鳴いている猫と会話できたらきっと幸せせだろうに……
「ねえ、アンジェリーナ、もしも、ダンジョンで魔物と話している冒険者がいたらどう思う?」
「そりゃあ……頭がおかしくなったか、魅了されたかって思いますね……あ……」
「そう……つまりシオンはまずは自分の知名度を上げるのと、同時に周りの信用を得ることが大事なのよ」
「なるほど……一理ありますね……」
「私、初めてジェシカさんを尊敬できるなって思った気がします」
尊敬のまなざしを向けるシオンさんと、意外にまともな事を言ったことに驚いている私の言葉にジェシカさんは少し得意げな顔をした。
「ふふん、Cランクの冒険者を舐めてもらったら困るわね」
「え、Cランクなんですか!? すごい!!」
ジェシカさんの言葉にシオンさんがほめるものだから余計調子に乗ってしまう。この人は調子に乗るとめんどくさいだけどなぁ……
「それでジェシカさん、シオンさんが信用を得る方法って何だと思います? 今は緊急ミッションもありませんし、新人ができることはあまりないとおもいますが……」
「ふふん、私に名案があるのよ」
ジェシカさんのにやりと笑った。その顔に私は嫌な予感がしたが、シオンさんがキラキラした目でみているので止められなかった。
「それはね、今度Dクラスの冒険者研修があるでしょう? 私は講師として参加するんだけど、私のサポートをしなさい。」
「サポートですか……?」
「そうサポートよ、アンジェと資料を作れば勉強にもなるし、ギルド職員と一緒に働いていればギルドの覚えもよくなるでしょう? ご褒美に私の使い古しの武器をあげるわ。それにアンジェは私ほど鋭くないから胸をみてもあんまり気づかないわよ」
「なるほど、さすがです!! いや、今の勉強になるってことに関してですよ、アンジェリーナさんそんな人殺しみたいな顔で俺を睨まないでください!!」
「いや、なんかまともすぎて逆にうさんくさい気が……あ」
ジェシカさんの言葉の意味をするところを復唱し私は一つの真実に気づいた。
「もっともらしいことを言って古い武器をシオンさんに渡して、面倒な作業をしないで、講師の報酬をもらうつもりですね!!」
「あはは、さすがね、アンジェ。というわけでよろしくー、でも新人に教えるのはあなたにもいい勉強になると思うわよ」
そうして私とシオンさんはジェシカさんに面倒ごとをおしつけれらたのだった。まあ、シオンさんも真面目な人な様だし、お互い勉強になるだろう。そうして私たちは講習の準備をするのだった。
本日更新二回目です。
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