冒険者と受付嬢
「ふぅー」
私は書類仕事が一息ついたところで体を伸ばした。緊急ミッションの後処理で大忙しである。ギフト持ちのオークについての報告。活躍した冒険者の表彰の準備。仕事をやってもやっても減りはしない。
特に大変なのはシオンさんの事である。ライムさんはともかく、シュバインさんを仲間にするといった時は大変だった。
幸い、緊急ミッションで、シュバインさんが活躍していて、命を救われた冒険者が何人かいた事、この街が、『魔王』にかつて救われたということ、シオンさんの活躍と人柄でなんとか認められた。だけど、それはこの街だけだ。それすらも、今の状況は奇跡的な幸運が味方をしているだけにすぎない。他の街のギルドにも、魔物を従えている冒険者が現れた事は伝えているが、周知するのには時間がかかるだろう。
でも、今日は終わった後に楽しみがあるのでがんばれる。私が思わず笑みを漏らすと同期のセイロンがからかうような笑みを浮かべて声をかけてきた。
「どうしたのよ、アンジェリーナ、今日はずいぶんと御機嫌じゃない? 男とデート?」
「別にそんなんじゃないですよ。ただ食事をするだけです。確かに、相手は男だけど……」
うん、たしかに彼は男だ。まあ、年下なんだけどね……私が口を濁すと、セイロンが興味津々と言った顔で私の隣に座った。こうなってはもう逃げられないだろう。
「えーどんな人よ、ようやくあんたにも春が来たのね。イケメン? お金持ち? どこで出会ったの?」
「うーん、セイロンもあったことあるよ……」
「あんた、まさか……」
矢継ぎ早に迫ってくる質問に私は一つだけ答える。すると彼女の顔がこわばった。うん、わかるわかるよ……あなたの言いたいことはすごいわかる。
「相手は冒険者なの……? やめておけって言われているでしょうに……つらい思いをするのは残される私達なのよ」
そういうと彼女は苦い顔で窓の外をみた。私達受付嬢は冒険者とよく話すこともあり、自然と仲良くなる。でも、新人として入った時に、私たちは先輩達から最初にきつくいわれるのだ。『冒険者とは付き合うな』と。
理由は簡単である。女癖がわるいやつが多い、それもある。宵越しの金を持たない、それもある。だけど一番の理由は死んでしまう人間が多いのだ。目の前のセイロンも新人の時に冒険者と恋人になって悲しい思いをしている。
「別にそういうんじゃないよ、彼の事はなんていうか、弟みたいなものだから」
私はそう自分に言い聞かせるように言った。年下の彼は私が担当をした二つ目のパーティーの少年だ。まだ新人だった私は色々と手の届かないところがあっただろうに、頼りにしてくれた。
「ああ、シオン君か、あんた彼の事お気に入りだもんね。カサンドラさんを連れてきた時荒れてたし」
「なっ、別にそんなんじゃ……あれは私の忠告を彼が無視したから……」
「はいはい、そうねー。あ、シオン君どうしたの? アンジェリーナに用かしら?」
「え、シオンさん? 待ち合わせは噴水ですよね?」
セイロンの声に慌てて受付の方を見たがが誰もいなかった。隣のセイロンが意地の悪い笑みを浮かべている。
「おやおや、やっぱりシオン君だったのね」
やられた……私はセイロンを睨みつける。彼女はしばらく笑って、いきなり真剣な顔で私を見つめた。
「まあ、あんたが決めたならいいと思うわよ、私だって彼の事で傷ついたけど後悔なんてしてないし、あんただって失う悲しみはわかっているだろうから」
「セイロン……」
「あ、でも早くしないとやばいわよ。今まではアスちゃんがいたから誰も近寄らなかったけど……カサンドラさんはそこらへん鈍感だから大丈夫かもだけど、ポルクスちゃんもシオン君の事を狙ってるっぽいし、ライバルは結構多いわよ」
「だからそういうんじゃないって!!」
「はいはい、それよりもあんたデートなんだから身だしなみもっとしっかりしてきなさい、あとの仕事は私がやっておくから」
「いいんですか? でも……」
「あんたは最近働きづめでしょう? たまには息抜きをしなさいな」
「ありがとう、お言葉に甘えますね」
そうして私は彼女の言葉に甘えることにした。荷物をまとめる時にふと手紙が目に入る。彼女からもらった手紙だ、こんなところにあったなんて……私は懐かしい思い出を胸にしまい、シオンさんとの待ち合わせに向かうのだった。
というわけでアンジェリーナさんとシオンの話の始まりです。ちょっと後にアスも少しだけ出てきます。
最近アークナイツにはまっているのですが、鯖落ちしてますね……
2万6000ポイントが見えてきました。がんばります。
楽しめた、続きがきになるって思ったら感想やブクマ、評価をいただけると嬉しいです。
特に広告の下の
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
を
★★★★★
にしてもらえるとむちゃくちゃ嬉しいです。




