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36:祝勝会

「オーク討伐に乾杯!!」



 ダンジョンから帰宅して、冒険者ギルドに戻るとすでに宴会が始まっていた。緊急ミッション終了ということもあり、ギルドの酒場で飲食が無料で振舞われているのだ。っていうか、緊急ミッションに参加してない奴らもいるじゃん。ずるくない?



「シオンさん、それが噂のスライムですか?」

「キャー可愛い、ちょっとさわってもいいですか?」



 遅れてきて場の雰囲気について行けない俺が困惑していると顔見知りの、冒険者の女の子が声をかけてくる。俺の肩にのっているライムに興味津々なようだ。



『ちょっといってくるね』 

「あーなんか、ひんやりしていて気持ちいい」

「あー、ずるい」

『フフフ、やっぱりシオンに触られるより幸せだなぁ』





 そういうとライムは俺の肩から彼女達の方へと飛び移った。あれ、お前、人の言葉は判らないはずだよな? てかスライムと女の子ってなんかエロくない?



「何いやらしい顔しているのよ、飲みましょう」

「ああ、そうだなって、もう顔真っ赤じゃん。何杯飲んだんだよ」

「えへへ、秘密ー。シオンも飲んでよー」



 そういってカサンドラがエールの入ったコップを俺に押してつけてくる。ちょっと近すぎない? あとさ、酔いのせいか顔が上気していてなんとも艶めかしい。俺は普段とは違うカサンドラに少しドキッとする。てか、こいつやたらとテンション高いな……



「ありがとう、お前こういうの好きなんだな、ちょっと意外だよ」



 なんかパーティー組む前の評判とか聞くと、「興味ないわね。報酬だけもらうわ」とか言ってどっか行きそうなイメージなんだけど……俺の言葉に彼女は顔を赤くして目をそらしてちょっと恥ずかしそうにいった。



「その……昔に一回参加したことあるんだけど、誰も話しかけてくれなかったからそれ以来は参加したことなくて……今回はシオンがいるから安心して騒げるなって思って……」

「よっしゃ、今日は朝まで騒ぐぞーーーーー!!」



 俺は彼女の黒歴史に触れてしまったようだ。誤魔化す様に乾杯をする。しばらく二人で喋っていると、何人かの前衛職の連中がこちらに寄ってきた。その中にはカストロもいたが、珍しく、ポルクスは近くにいないようだ。



「カサンドラさん!! オークロードとの戦いすごかったです。話を聞かせてください」

「あのオークはカサンドラさんが倒して仲間にしたって言うけど本当ですか?」

「ああ、ぼくの天使……お酒を飲んでいる姿も美しい」

「え……あの……その……」



 質問攻めにされて可愛らしくてんぱっているカサンドラだった。彼女が俺に視線で助けを求めてきたので俺は笑顔で答える。



「カサンドラにお客さんのようだな。俺はちょっと挨拶周りをしてくるよ」

「え……? 嘘よね、シオンちょっと……」



 助けを求める彼女に手を振って俺は席をはずした。こうすれば彼女のコミュ障も良くなるだろう。彼女の話しかけづらいイメージも払拭できるだろうし、友人も増える。一石二鳥である。俺と話すのはいつでもできるしな。「シオンのばかぁぁぁ」と聞こえたような気もするが気にしない。



 しばらく歩いていると俺は冒険者に口説かれつつも、適当にあしらっているアンジェリーナさんを見つけた。そして彼女と視線で察した俺は大声で彼女を呼ぶ。



「アンジェリーナさん、今回のことで報告が……」

「はい、あっ、すいません。呼ばれているので……」



 そういうと彼女はグラスを持ったまま俺の方へとやってきた。少し酒を飲んでいるのか、顔が少し、赤くてなんか色っぽい。



「助かりました、あの人結構しつこくて……」

「アンジェリーナさんは可愛いからなぁ」

「はいはい、どうせみんなにそういうこと言ってるんですよね、最近はカサンドラさんといい、ポルクスちゃんといい女の子にばっかり声かけてますもんね」



 あれー? 俺普通の会話をしてたよね? なぜかすごい責められているんだけど……俺が困惑していると彼女は意地の悪い笑みを浮かべた。



「ふふ、冗談ですよ。今回はお疲れさまでした。話か聞きましたよ。大活躍ですね。私も嬉しいです」

「ありがとうございます、アンジェリーナさん達もお疲れさまでした。そういえばイアソンは大丈夫でしたか? ここにはいないようですが……」



 俺はそういって、隅っこで酒を飲んでいるイアソンと臨時パーティーを組んでいた二人を指さす。そこにはイアソンもメディアもいなかった。



「ああ、イアソンさんは命には別状はないそうです……招待はしたのですが、気分が悪いといって欠席されています」

「そうですか……」



 俺は少し寂しく思う。なんだかんだ俺はあいつにも認めてもらいたかったのかもしれない。



「まあ、それはさておき、シオンさんが今回のMVPですね」

「いや、そんなことないですよ、どちらかというとカサンドラですね、彼女のおかげでだいぶ助かりましたから」



 そういって俺は一生懸命ほかの冒険者としゃべっているカサンドラを指さす。目があったら涙目で睨まれた。あとが怖いなぁ……



「そうですね、カサンドラさんはとても活躍してくれました。でも、オークの本当のリーダーに気づいたのも、あの黒いオークを仲間にしたのはシオンさんでしょう? 魔物を従えてパーティーを組む……まるで伝説のSクラス冒険者『魔王』を思い出しますね」

「買いかぶりすぎですよ、それに俺は魔物を従えているんじゃないです、ライムもシュバインも力を貸してくれたんです」



 俺は女の子に囲まれているライムをみながらいう、あいつちょっと調子乗ってない? ちなみに『魔王」という冒険者ははるか昔にいた冒険者で、魔物ばかりを従えていた変わり者の冒険者である。その仲間はすべて魔物で占められており、人間では辿り着けないレベルの強さの魔物達とあらゆるクエストをクリアしたという伝説の冒険者だ。




「買いかぶりなんかじゃないです。本当にすごいって思っているんですよ。私は知っています。シオンさんがこれまで強くなるために死ぬほど努力をしていたことを、今回の件で情報をあつめてくれていたことを、あなたがオークの真のリーダーに気づいてそのおかげで勝てたことも。だから今日ばかりは自慢していいんですよ。『俺がやったんだ』って、『俺がオークのリーダーを倒したんだ』って。それでは未来の英雄に乾杯」



 そういうと彼女は俺に微笑みながらグラスを掲げた。酔っているのかやたらと距離が近いのと、胸元がいつもより、開いていて、腕を上げた時にちょっと揺れた。うおおお、絶景じゃん。



「どうしたんですか? 乾杯しましょう?」

「ええ……乾杯」



 上目づかいで目を濡らしながら、乾杯を促してくる姿はとても魅惑的で。俺はかろうじで返事を返すのが精いっぱいだった。あとおっぱいがすごい……



「アンジェリーナさーん」

「ああ、もう……いいところだったのに……」



 ギルドの受付から彼女を呼ぶ声で不思議な雰囲気は霧散する。よかった……あのままだったら間違いなく恋をしていた……俺は残念なような助かったような気分でため息をついた。



「じゃあ、シオンさん、近いうちにご飯に行きましょうね。もちろん二人っきりですよ」




 そう耳元でささやいて彼女は受付へと戻っていった。なにこれ? すっげえドキドキした……一人になった俺は再び知り合いを探す。ポルクスが目に入ったが、女冒険者たちと話している。なにやら黄色い声でキャーキャーと話している。女子会ってやつだろうか? 今は声をかけない方がいいんだろう。俺が他の知り合いを探そうと思い踵を返すと呼び止められる。



「シオンさーん、なんで声をかけてくれないんですか? ひどいです」

「え、いや……仲良く話していたから邪魔をしちゃあいけないかなって……」

「シオンさんならいいんですよ!! 乾杯しましょう」

「ああ……てか酔っているなぁ……何を話していたの?」



 俺が何気なく聞くとポルクスは酔って赤い顔をさらに真っ赤にした。大丈夫? 飲みすぎじゃない? カストロが近くにいないから相当羽目を外しているのかもしれない。



「それは……私の英雄についてですね」

「へえぇー、あこがれの英雄っているよな。なんていう冒険者なんだ」

「それは……秘密です。それより、ダンジョンでは助けてくださってありがとうございました。本当にあの時はもう駄目だと思っていたので……」

「ああ、気をつけろよ、すっごい心配したんだからな」

「心配してくれたんですか……ありがとうございます」

「おい、ポルクス?」



 そういうと彼女は俺に抱き着いてきた。おお? 何これ? てか、子供だと思っていたが彼女もいつの間にか成長していたようだ。具体的に言うと胸とか胸とか。あとさ、なんで女の子ってこんないい匂いするんだろうね。カサンドラともアンジェリーナさんとも違う魅力を持つポルクスに一瞬ドキッとしてしまう。



「すいません、酔いすぎたみたいで……シオンさんずっと言いたかったことがあるんですが聞いてもらえますか?」

「え、ああ……」



 彼女はそのまま俺の耳元でささやく。彼女の吐息が俺の耳を刺激して、ゾクリとした。



「シオンさん、私はあなたのことが……」

「ポルクスぅぅぅぅ!! はしたないぞ、なにをやっているんだ。それに酔っているのならばそんな雑魚ではなく、僕を頼れぇぇ!! ごはぁ!!」

「ああ、もう、兄さんのばかぁ!! もうちょっとだったのに!!」

「ああ、脛が砕けるようにいたいぃぃぃぃぃ」



 そういうと彼女は俺から体を離すと、走ってきたカストロの脛を杖を思いっきり叩くのであった。相変わらず仲良しだなぁと思う。



「それでポルクスさっきは何を言おうとしたんだ?」

「それは……またの機会に言います。今ので勇気が無くなってしまいました」



 そういうとポルクスはちょっと残念そうに頬を膨らませてから頭をさげた。その姿は年相応で、さっきまでの大人びた姿がまるで幻覚の様だった。俺が混乱していると、ちょんちょんと肩が叩かれる? 一体何だろうと振り返ると、すっごい不機嫌そうなカサンドラが俺を睨んでいた。あれ、俺なんかやっちゃった?



「私を放っておいて他の女を口説きまくるとはいい度胸ね!! ぶっ殺すわよ」

「え、なんで怒ってるの? それに別に女の子を口説いてなんて……いや、女の子としか喋ってないな……」

「その根性を叩き直してあげるわ。模擬戦よ!! 私とシオンどちらが強いか勝負しましょう!!」

「うおおおおお!!」

「やっちまえーー、アンジェリーナさんの前で恥をかかせてやれ!!」

「ポルクスの前で無様な姿をみせろぉぉぉぉ!!」



 カサンドラの言葉にみんなが興奮の声をあげる。みんな酔っているせいか悪乗りがすぎない? 俺はアンジェリーナさんに助けを求めるが、彼女は事務所の奥に行ってしまったし、他の職員は今日は無礼講という感じでスルーされた。

 ああ、でもアンジェリーナさんもポルクスも俺のことすごいって言ってくれたし、ワンチャンあるんじゃないだろうか? 俺も酔っているがカサンドラも結構酔っているみたいだし……


「よし来いよ!! カサンドラ勝負だ!!」

「乗ったわね、ぼこぼこにしてあげるわ」

「お前ら、どっちにかける?俺はカサンドラだ」

「俺も」

「私も」

「お前ら誰か俺に賭けるやついないのかよ!!」



 自分の不人気っぷりに半泣きになりながら叫ぶ。ポルクスと目が合うが彼女は目をそらして申し訳なさそうにいった。



「私もカサンドラさんで、すいません、今回あんまり活躍できなかったんでお財布が厳しくて……」

「フハハハハ、無様だな、シオン。我が妹は弱い奴には興味がないんだよ。もちろん僕もカサンドラ様だ。ごはぁ」

「兄さんうるさいです!! シオンさんに興味が無いなんてことはないですから!! 勘違いしないでくださいね!!」



 くっそ、こいつら!! いいぜ、絶対勝って損させてやる!! 俺は剣を構えてカサンドラと向かい合って……瞬殺された。いや、気づいたら目の前にいるんだよ? おかしくない?

 結局この後いたるところで模擬戦がおきて、店内をボロボロにした俺たちはアンジェリーナさんにマジで説教されて祝勝会はおひらきとなったのだった。でも、すごい楽しかったんだ。


本日は二話更新予定です。

祝勝会回です。シオンモテモテですねww


長かった戦いも終わり次の一話で一章は終わりとなります。ここまで付き合ってくださった読者様方本当にありがとうございます。楽しんでもらえたら本当に嬉しいです。


またジャンル別ランキング一桁と言う貴重な体験もさせていただき本当にありがとうございます。


一章の節目ということで感想や評価を頂けたら本当に嬉しいです。また、感想などで気になったことを聞いてくださった場合ネタバレにならない限りはお答えします。


特に広告の下の


⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎



★★★★★


にしてもらえるとむちゃくちゃ嬉しいです。


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[気になる点] 感想ではありませんが、キャラの名前がボルクスなのかポルクスなのか? 女の子なのでポルクスだとは思うけど…
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