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67.

 あの後ゴブリンの里へと急いで向かった俺達は冒険者ギルドで借りた馬車を飛ばす。アスもついてきたがっていたが、オークたちの治療や、帰還した冒険者の治療のため留まる事になったのだ。

 その代わりと言っては何だが彼女からは身体能力強化ポーションをもらった。これで俺も少しは戦えるだろう。



「いやぁ、それにしてもシオンはモテるねぇ。アスから薬をもらって受付嬢の子や金髪の子には心配をされて……ゼウスのやつとは大違いだ。他にも現地妻とかもいそうじゃないか」

「現地妻って……俺はそんなに……いや、モルモーンから見てもフラグとか立ってそうかな? え、マジで? 誰と?」

「確かにゴルゴーン里でも女の子といい感じになってたわね。てか、なんでそんなに嬉しそうなのよ……」

「え、いやぁ……なんだかんだモテたことないからそういうの嬉しくて……」

「ふふふ、これはカサンドラも苦労しそうだねぇ……こういうタイプはちゃんと言葉にしないと通じないぜ」

「う……それは……」



 モルモーンの言葉にカサンドラが顔を真っ赤にして、うつむいた。というか、今話していて気になったことがあった。



「なあ、魔王もすごいモテてたんじゃないか? 英雄だし……」

「はっはっはー、残念ながら彼は空気が読めないからね、モテなかったよ。本当にモテなかった、むしろトロルの憤怒の方がよっぽどモテてたよ」

「トロルよりってどんだけなの!? 英雄譚では複数のヒロインといい感じになっているんだけど」

「ああ、私も目を通したがそれは全て一方的にフラれた女の子との物語だね、盛り上げるために変えたんじゃないかな」

「なんとかいうか英雄の知りたくない一面を知ってしまったわね……」



 カサンドラの呆れたようなつぶやきに俺は同意する。てか、魔王と俺が似ているっていう事はやっぱり俺もモテないってことじゃ……

 そんな事を考えている間にもゴブリンの巣へとついた。俺はゴブリン達に警戒心たっぷりの目で見られながら例の穴倉へと向かう。近づくと同時に身体に悪寒が走る。



「ふふふ、これは……まさか、こんなところとつながっているなんてねぇ。さて、ここからは気を引き締めるとしようか」

「この感覚ってあれよね、魔王の墓の……モルモーンがいた所とおなじ空気感かしら」

「そうだねぇ、魔族の血を引いているカサンドラならきもちいいかもしれないけど、シオンは大丈夫かな?」

「ああ、ちょっと変な感じだけど大丈夫だよ。それにしてもこの感じ……まさか魔王の墓とつながっているのか?」



 

 意を決してさっさと入っていくモルモーンやカサンドラについていくとそこは人が二、三人くらい入れる程度の通路になっていた。



「おそらくそうだろうね、プロメテウスはここで主の封印が弱まるのをまっていたんだろう。それでちょうどゴブリンに発掘されたから、利用したんだろうねぇ」

「でも、なんでわざわざそんな事を……」

「彼の主であるあの巨人は死と武器を司る巨人だ。その巨人が作った呪いの武具であるプロメテウスの力で叡智を手に入れたゴブリンと、それと戦っている人間が死ねばその力は増すのさ」

「つまり……あのゴブリン達は殺し合いをさせるためだけに叡智を与えられたって事なのね……」



 モルモーンの言葉にカサンドラが不快そうに眉を顰める。そうだよね、あいつらゴブリンはあいつらなりに手に入れた叡智を大事にして一生懸命戦っていたのだ。あれはいわば人とゴブリンの生存競争だった。

 こちらが街を守るのを必死なようにあっちも必死だったのだろう。ゴブリンの巣にいた女子供を見てそう思う。



「まあ、彼等巨人からすれば人間もゴブリンも自分たちのための道具に過ぎないからねぇ。さて、そろそろだ。大分近づいてきたね」




 十分ほど走ったころだろうか、モルモーンが止まると少し先に明かりが見える。いよいよか……そう思っていると、彼女が俺の横に来て囁く。

 ちかいって!! あと胸が触れてやばい。



「では、約束通り血をもらうよ……遠慮なくね」

「ああ、勝算はあるんだよね?」

「ああ……もちろんさ。私が主の水晶に触れれば戦況は変わる。期待していたまえ、ふふ、カサンドラもうらやましそうな顔をするならシオンの首筋にキスマークでもつけたらどうかな?」

「別に羨ましくなんかないわよ……てかシオンも厭らしい顔しないの!! まるで、餌を目の前にしたトロルみたいな顔をしてるわよ」

「してないって!! どんだけなのさ!!」



 モルモーンがからかうようにカサンドラにはなしかけるとなぜかこっちに飛び火した。チクリというわずかな痛みの後に、血を吸われる不思議な感覚と共に快楽が襲ってくる。

 


「ふう、ご馳走様、じゃあ行くとしようか。シオンとカサンドラのおかげで私も覚悟が決まったしね」

「覚悟?」



 口調はいつものようにおちゃらけているがどこか真剣な彼女の様子に違和感を覚えたが俺の質問に答えは帰ってこなかった。そうして、俺達は明かりの方へとむかうのだっ

あけましておめでとうございます!!

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[気になる点] あ、これモルモーンさんダメなやつ…?強キャラっぽいから嫌な予感はしてたけど果たして [一言] あけましておめでとうございます!
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