60.
俺がクレイの手から落ちた剣を奪おうとした瞬間だった。さきほどまで俺がいたところを、剣の刃から飛び出た黒い触手のようなものが襲いかかるように食らいつく。カサンドラの言葉に従って一歩引いていなかったらと思うとぞっとする。
「うおおお」
『やはり、ゴブリンではこれが限界か……主の復活の前にあまり力を使いたくはなかったのだがな……ふふ、これではアトラスの事も笑えんな』
『プロメテウスそれは一体どういう……』
プロメテウスの言葉にクレイが呆然とした表情で聞き返す。というかプロメテウスって剣なのに触手みたいなの出して攻撃できるのかよ……さっき単独行動で斬りかかっていたら今頃俺は……
「シオン、早くこっちに来て!!」
「わかった。なんだあれ?」
「ゴブリンを……捕食しているのかしら?」
カサンドラのいう通り、呆然としていたクレイの右腕にプロメテウスから生えた触手が襲い掛かり徐々に一体化していく。その姿は本当に捕食をされているようだった。
『待って……なんで……俺を……』
『決まっているだろう、最初っからこうするつもりだったんだよ。人もゴブリンも良い感じに死んだ。そろそろ頃合いだったしな。おっと』
「く、やるわね」
クレイを捕食して、右腕と一体化したプロメテウスにカサンドラが斬りかかったが、いなされてしまう。そして、そのまま斬りあいが始まるが、先ほどと違いカサンドラが押されているようだ。
クレイの動きが先ほどとは比べ物にならないほど速くなっているのだ。だけど、その代わりに彼が動くたびにグシャとか中々えぐい音がする。そして、そのたびに再生を繰り返しているのだ。
「こいつ……体のリミッターを外しているわね」
『ははは、限界を超えても魔族のハーフにすら追いつけんか!? まあいい。もうこいつの役目は終わった。我が眷属となったゴブリン達が大量に人間どもを殺してくれたからな』
『うぎゃぁぁぁっぁぁぁぁ!?』
その言葉と共にクレイの身体の腕や肩から触手が皮膚を食い破ってカサンドラに襲い掛かる。しかし、カサンドラは予言であらかじめ来ることがわかっていたのだろう。
向かってくる触手を切り払っていく。
「くっ!?」
「うおおおおおお、させるか!?」
カサンドラが斬り残した分の触手をかろうじで切り裂く。俺達が一息ついていると、全身が穴だらけになって血を流しているクレイがそのまま高台を飛び降りて逃げて行った。
「くっ……逃げられたわね……」
「とりあえず、みんなの元に戻ろう。他のゴブリン達が気になる」
そうして俺達は急いでもどるのだった。
この作品『追放された俺が外れギフト『翻訳』で最強パーティー無双!~魔物や魔族と話せる能力を駆使して成り上がる~』の二巻が発売中です。
ゴルゴーンの里でのお話になっております。書き下ろしでシオンとアスの過去編もありますのでよんでくださると嬉しいです。
二巻の表紙は活動報告にアップしているので見ていただけると嬉しいです。




