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53.ライムの行方

「あれ?ライムは?」

「おかしいわね……いつもなら誰よりも早くギルドに来て、女の子にセクハラをしているのに……」



 翌朝、緊急ミッションが発令されるということもあり、冒険者ギルド内は喧噪に満ちていた。そんな中いつもの場所に行くと、そこにいるのはカサンドラと眠そうなモルモーンだけだった。

 シュバインは今頃自分の故郷に向かっているからいいんだが、ライムは大丈夫だろうか? あいつが寝坊した事とかないんけど……



「シオンさーん!! また一緒に依頼をご一緒できますね!!」

「おい、ポルクス!! そんな奴の事は放っておけと言っているだろう。というかまた新しい女を連れているな……なんでこんなにモテるんだ?」

「それはシオンさんが魅力的だからですよ。いつか私もシオンさんのパーティーに入れてくださいね」

「待った、ポルクス!! 僕はそんな事は認めていないぞ。まあ、シオンの方が頭を下げて僕らを仲間にするっているのなら……ごはぁ……」



 そう言っていつもの兄妹漫才をしながらやってきたのはポルクスとカストルだ。彼女達もCランクの中堅として活動していることもあり、今回はサポートではなく、前線を任されているのだ。

 


「あなたたちの活躍も楽しみにしているわよ。ただ、今回のゴブリンは厄介だから気を付けてね」

「はい!! 何やら頭の良いゴブリンの集団らしいですね。ちょっと怖いですね……シオンさん……手が震えてきてしまいました……握って落ち着かせてもらえませんか?」

「いやいや、ポルクスはゴブリンくらいならもう慣れてるだろ……」

「ちょっと待った!! 今この金髪の女の子が、杖で男の子の鳩尾で殴ったよねぇ、なんで二人とも当たり前の様に会話を続けているんだい?」

「いやだってなぁ……」

「いつのものことだもの……ねぇ」

「私がおかしいみたいな反応はやめたまえ!!」



 モルモーンの言葉に俺とカサンドラが何を言っているばかりに首をかしげる。カストルが余計な事を言って、ポルクスに叩かれるのはいつものことである。

 朝になったら太陽が上がるみたいな当たり前のことで驚かれても……と思っていると珍しくモルモーンが引いたように顔を歪めた。



「それより、ポルクスとカストル、説明はあったと思うが、今回のゴブリンというよりも相手を人間だと思って戦った方がいい。人のように道具はおろかスキルを使ってくるんだ。対人の実戦の経験はあるよね?」

「はい、馬車の護衛をしていて、山賊と戦ったことがあります。幸いにも相手にギフト持ちはいなかったのでそこまで苦戦はしませんでしたが……」

「ギフトを持っているゴブリンもいると警戒した方がいいわよ。絶対二人は離れないようにね……ゴブリンの生命力で、人間並みの行動をしてくるわ。かなり厄介よ」

「人間と同じ行動をするゴブリン……シオンはともかく、カサンドラさんもそういうなら信じます!!」

「兄さん……シオンさんに失礼ですよ」

「ひぃ、謝るから杖を構えるのをやめろぉぉぉ」



 カサンドラの言葉に神妙な顔をして頷くカストルだったが、杖を構えたポルクスを前に悲鳴を上げる。本当に二人は仲が良いなと思っていると、ギルド内に聞き覚えのある声が響いた。



「お前ら安心しろ、この俺イアソンが帰ってきた!! 俺達についてこれば今回の緊急ミッションはたやすく終わるぞ。ゴブリンごときに俺達が負けるはずがないという事を見せてやろう!!」

「おお、イアソンのやつ本当に帰ってきたのか!!」

「でも、あいつは前の緊急ミッションでは役に立ってなかったよな……」



 イアソンの言葉に冒険者ギルドの冒険者たちが様々な言葉をかける。不安視する声が6割、肯定的な意見が4割といったところか……



「は、俺の心配をするとはお前らは偉くなったなぁ!! そのくせにBランクにもなっていないんだろ? 俺達に意見をするのはまだ早いんじゃないか? まあ、今回の緊急ミッションで活躍をすればランクが上がるかもしれないけどなぁ」

「相変わらずむかつくなぁ!!」

「喧嘩売ってんのかてめえ!!」



 そんな状況だが、彼は気にせず挑発の言葉を言う。これが彼のスキル『扇動のカリスマ』である。その言葉の通り、彼の言葉で緊急ミッションという事で緊張していた冒険者たちに良くも悪くもやる気がわいたようだ。

 本当は別に挑発をしなくても発動するはずなんだけどね……それが彼のやり方なのだろう。結局人間はそう簡単に変わらないという事だろう。



「相変わらずね……でも、シオンはもう気にしてないようね」

「うん? ああ、実は昨日色々話してさ、すっきりしたんだよ」

「そう……よかったわね。もし、また喧嘩を売ってくるようだったら言いなさい。またボコボコにしてあげるわ」

「ありがとう、カサンドラ……でも、もう大丈夫だと思う」

「むー、なんかいい感じになってますね。ピンチの予感がします」



 心配をしてくれたであろうカサンドラに笑顔で返事をする。そう、和解というほどのものではないが昨日の話で胸のもやもやは多少すっきりしているのだ。だけど、こうして俺がへこみそうなときに声をかけてくれるカサンドラのやさしさに感謝をする。

 そんな俺達を見てポルクスがなぜか不満そうに頬を膨らましている。



「そういえば、シオンさん今回はハーレムパーティーですよね。ライムさんとシュバインさんは朝早くどこかに行っているようでしたし……」

「は? ちょっと待った。どういうことだ?」



 ポルクスの言葉に俺達は聞き返す。え? ライムも確か俺達と一緒にくるはずだったんじゃ……俺が詳しい事を聞こうとすると、ガシャンとカップが落ちる音がした。



「だめだ……今はまずい……今はまずいんだよ。暴食……」



 どうしたのだろうとモルモーンを見ると彼女は今まで見たことないほど顔を真っ青にしていた。



この作品『追放された俺が外れギフト『翻訳』で最強パーティー無双!~魔物や魔族と話せる能力を駆使して成り上がる~』の二巻が発売中です。


ゴルゴーンの里でのお話になっております。書き下ろしでシオンとアスの過去編もありますのでよんでくださると嬉しいです。


二巻の表紙は活動報告にアップしているので見ていただけると嬉しいです。


最初の一週間で、続刊が決まるので、もし、購入を考えている方がいらしたら早めに購入していただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ライム君が何やってるかが楽しみです。
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