48.
「シュバイン……そうか、巨大なスライムが現れたのは……」
『ああ、別に特別仲が良い奴がいたわけじゃないんだけどよ、故郷だからかな、やっぱり気になるんだよ……不思議だよな』
そう言う風に苦笑するシュバインの気持ちが俺にはわからないでもなかった。先ほどイアソンやメディアと再会した時の俺も、あんな風に別れたけれど……やはり二人が無事だったことが嬉しかったのだ。
幼馴染のイアソンはともかく、メディアとはあまり親しくはなかったが、それでも長い間同じパーティーとして過ごした時間は本物だ。多分、彼女がピンチだったら俺は助けに行くだろう。ようはそう言う事なんだよね……
「わかった、シュバインが抜けるのは痛いが、俺達だけでやれるよ。みんなもそれでいいよね?」
「ええ、シュバイン、気を付けるのよ」
「ふふ、シオンは私が守るから、安心して君はがんばりたまえよ」
俺の言葉にカサンドラとモルモーンが同意する。そして……ライムが珍しく険しい顔をしている。ああ、そういえばこいつの故郷でもあるんだよね。
「ライムはどうするんだ? お前の故郷でもあるよね?」
『うーん、あいつらとはあんまり仲良くなかったしなぁ……でも、僕の故郷でもあるんだよねぇ……』
「だめだよ、暴食。君は私と一緒にいるべきだよ。ほらこうしていると幸せだろう」
迷っている様子のライムだったが、横から入ってきたモルモーンが彼を自分の胸の谷間にいれた。すごいうらやましいんだけど!!
まあ、ライムは元々あまり親しいやつはいなかったと言っていたし故郷に愛着がないのかもしれない。それこそ個人個人の考えだろう。
「じゃあ、シュバインは気を付けてね。無茶はしないでね」
『おう、ワガママを言って悪いな』
「じゃあ、明日は二手に分かれるとしよう。俺は武器を研いでもらってくるよ」
そうして、俺達は明日の準備をするためにそれぞれの行きたいところへと向かった。
「このボウガンなら乱戦でも使えるぞ、それにしてもお前も随分と景気が良くなったよなぁ」
「そりゃあ、この街最強候補のBランクの冒険者だしね、サービスしてくれるなら宣伝してあげようか?」
「は、言ってろ!! そういえばイアソン達にあったぞ。ちゃんと話したのか?」
「あははは……まあ、そのうちね」
会議でのあの会話は話したことになるのだろうか? 多分ならないよね。武器屋のおっさんが言いたいことはわかるさ。悔いの無いようにちゃんと話しておけって事だろう
だけど、俺の方から話すのもなんか違う気がするんだよね。
「イアソンにも言ったんだが、意地を張るのもいいけどよ、死んだら話し合う事も出来ねえんだぞ。後悔をしないようにしとけよ」
「……ああ、わかってるよ」
俺は先ほどとは違い真剣な表情の武器屋のおっさんに返事をする。そういえば、武器屋のおっさんも元は冒険者なんだよね。彼も何か意地を張って失ったものがあるかもしれない。
イアソンが死んだら二度と話せなくなるか……そうだよね……今回の緊急ミッションの前にアスに頼んで話をする機会をつくってもらってもいいかもしれない。
「ありがとう、おっさん……あと剣を研いでおいてくれ。明日の朝には取りに来るから……」
「ああ……悔いのないようにしろよ」
俺は武器屋のおっさんにお礼を言って店を後にした。そして、小腹が空いたのでどこかで飯でも食べようかと思っていると、予想外の人影が何やら遠い目をして、街を歩く人々を見ているのに気づいた。
その顔はいつもの人をからかうようなものではなく、真面目な顔をしているせいかどこか神秘的な雰囲気を醸し出している。
こうしてみると本当に美人だよね。
「こんなところでどうしたんだ、モルモーン」
「ああ、シオンか……なに、ずいぶんと街並みも変わったものだなと思ってね」
「そりゃあ、魔王がいたのは何百年も前だからね……」
あのゴブリンとの戦いでほとんどの記憶を取り戻したらしいモルモーンには最初に来た時とずいぶんと変わってこの街がみえるようになったのかもしれない。
どこか寂しそうな顔をしている彼女を目に俺はそう思った。
「よかったら、一緒に街を見てみるか。ひょっとしたら何か思い出にあるものが残っているかもしれないし」
「いいのかい? 明日の準備があるんだろ?」
「ああ、それならもう済んだから大丈夫だよ」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
俺の言葉に彼女はどこか優しい笑みを浮かべてうなづいた。
この作品『追放された俺が外れギフト『翻訳』で最強パーティー無双!~魔物や魔族と話せる能力を駆使して成り上がる~』の二巻が11/10日に発売いたします。
ゴルゴーンの里でのお話になっております。書き下ろしでシオンとアスの過去編もありますのでよんでくださると嬉しいです。
二巻の表紙は活動報告にアップしているので見ていただけると嬉しいです。
アスが可愛い!!