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40.隠し通路

 ダンジョンの中に入ると、俺はすぐに違和感を感じた。入口こそ普通だが、松明が灯っており中は崩落が起きないように補強されているのだ。そして、こういう場合に考えられることは……



『うん、そこに隠し通路があるよ。何回もゴブリン達がでてきたのを見てるから間違いないと思う』



 俺が洞窟にいるネズミにエサをやり、訊ねると彼はあっさりと教えてくれた。このまま突っ込んでいたら罠に引っ掛かっていた上に挟み撃ちにあって大惨事だっただろう。

 案の定、侵入者を挟み撃ちにするつもりなのか、非常時の脱出用なのかはわからないが、隠し通路があるようだ。俺それを聞いた俺は、緊急ミッションの時に戦ったシュバインの兄であるオークを思い出す。



「でも今回厄介なのはあの武器を持ったゴブリンだけじゃないんだよなぁ……」



 あの時はギフト持ちのオークだけが頭が回るようだったが、今回は他のゴブリン達も知能が高そうな分より厄介じゃん……



「どうしたんだい? シオン君」

「ああ、そこに隠し通路があるみたいなんだよね。ゴブリンが作ったみたいなんだ」

『本当に? あいつらゴブリンにそんな知恵があると思えないけど……』



 俺の言葉にライムが何言ってんだとばかりにツッコミを入れてくる。いや、たしかにそうだけどさぁ……などと思っているとモルモーンが怪訝な顔をしている。



「ふぅん、本来ではありえない知識を持つゴブリンか……もう少しで思い出せそうなんだけどな……こう、何かが引っかかってるんだ。さっきのゴブリンが持っていた剣があるだろう。あれをじっくりと見ればなにか思い出せるかもしれないねぇ……」

「古い武器だったみたいだし、昔戦ったことがあるとか? どのみちあのゴブリンを放っておいたらまずいことになりそうだし、行くしかないんだ。剣をもっているゴブリンを見つけたら戦ってみよう。そうすればモルモーンの記憶も少しは取り戻せるかもしれないしね」

『いいねぇ、冒険って感じで楽しいなぁ。知恵のあるゴブリン何てレアだからね。ここでゴブリンの謎を解けば僕らは英雄だよ』



 英雄という言葉につられたわけではないが俺達は先へ進むことにする。もちろん通常の道ではなく、隠し通路の方だ。相手もまさか、俺のギフトを知りはしないだろう。

 そして……通常の道なら待ち伏せをされている可能性はあっても、ここの隠し通路の方は警備も最低限なはず。俺達は巧妙に偽装されている入り口にある蔦を払って進む。

 しばらく、足跡を潜ませて進むと話し声が聞こえてきた。俺は二人に静かにするように目くばせをして、聞き耳を立てる。



『今日も人間達をよく狩れたな。これもクレイ様のおかげだ』

『ああ、さっきの厄介な人間達も追いかけてきたが、今頃は罠の餌食になっているだろうよ』



 声の主は二匹のゴブリンだった。彼らは油断しきっているのか、雑談に興じている。しかし、やっぱり罠があったんだ。隠し通路を見つけといてよかった……



「モルモーン頼む」

「任せたまえよ。このくらい暗ければ力を使うのに君の血は不要だ。ついでにこいつらがどれだけ他のゴブリンと違うのか試してみよう。試しに人質を取って拷問でもしてみたらどうかなぁ」



 その一言と共に、二匹のゴブリンが影によって縛り上げられる。もちろん、先ほどのように自害はさせないように口もふさいである。

 しかし、完全に悪者の行動だよなぁとおもいつつ俺は拘束され驚愕しているゴブリンの喉元に剣をつきつけながら話しかける。



「抵抗するなっての。もしも、自害をしたら隣のやつがどうなるかわかるよな?」



 俺が片方のゴブリンに声をかけるとそいつは悔しそうにうなづいた。どうやら自分が死ぬのは良くても仲間が死ぬのは嫌らしい。ああ、本当にゴブリンらしくない。普通のゴブリンだったら自分が生き延びるために必死になるっていうのにさ……ちょっと罪悪感が湧いてくる。

 そうして、俺は拘束を一部解いたゴブリンと会話をするのだった。



翻訳無双の二巻が11月10日に発売になります。

興味のある方読んでくださると嬉しいです。内容はゴルゴーンの里の話となっております。

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