34.魔王への道筋
「あの……この人をパーティーに入れたいんですが……」
「確かその女性は魔王の墓で負傷していたところを助けたと聞いたんですが、ずいぶんと親しくなっているんですね、流石シオンさんです」
アンジェリーナさんが笑顔のまま俺を褒めてくれる。だけど、なぜだろう、全然嬉しくないんだけど……むしろこわいんだけど……
「はっはっはー、もちろん、それだけじゃないさ、シオン君とは昔からの付き合いなんだよ。じゃないとさすがにパーティーまでは組んだりしないさ。ね、シオンお兄ちゃん」
「え……そういうプレイですか? その……だいぶ年上の女性にお兄ちゃんって呼ばせるのはどうかと思うんですが……」
「いえ、この人ちょっと頭がおかしいんですよ、昔世話になった人で、冒険者登録はしていませんが腕はたしかなんです」
「二人とも流石の私もその反応は傷つくんだが……」
モルモーンのくだらない冗談を受け流しながら会話を進めると、傷ついた顔で呻いた。打ち合わせ通りしないモルモーンがわるいので無視をする。
「冒険者登録をしないで、クエストにでる場合は、サポーター扱いとなり、何かあってもパーティーのメンバーが責任を負う事になりますし、そのパーティー以外とは冒険者として活動はできませんが大丈夫でしょうか?」
「もちろんだとも……私はシオン君達以外とは組む気はないからね。それにしても結構緩いんだねぇ。っ私のようなよくわからないやつをあっさりとパーティーメンバーにいれるなんてさ」
「いえ……この制度は信頼のおける冒険者じゃないと使えないんですよ。シオンさん達はBランクですし、サポーターがピンチになっても見捨てはしないって信じてますから」
「ふぅん、ずいぶんと信頼されているんだねぇ」
アンジェリーナさんの言葉に、何か言いたそうげにモルモーンはにやにやとする。しかし、こうも信頼されているとなると何か恥ずかしいものがあるね。
「ありがとうございます。それと……聞きたいことがあるんですが、アンジェリーナさんって魔王に関して詳しいですか? 今回は魔王にゆかりのある地を調べたくて……」
「ええ……ちょっとした趣味で色々と勉強しているんです。シオンさんも魔王の墓を探索したことで興味を持ちました? そういえば英雄譚がお好きですもんね……結構な数がありますよ。彼はここら辺のほとんどを開拓してましたからね、シュバインさんが住んでいたダンジョンの深層を切り開いて、当時のダンジョンの主を倒したのも魔王らしいですよ」
「まじか……」
意外なところでシュバインの名前が出てきて驚く。てか、結構色々な所で冒険をしているのか……そうなると逆にモルモーンが記憶のヒントを探すのも大変かもしれない……
「ふぅん、それで……当時のダンジョンの主っていうのは、何か強力な呪いの武具を持っていたんじゃないかな?」
「おお、よくご存じですね。その時のオークキングは強力な盾を持っていて魔王の仲間である暴食を苦しめたと書かれているんです」
「ふぅん……それは興味深いねぇ」
モルモーンの言葉にアンジェリーナさんが驚いたように目を見開いてから、少し興奮したように語る。あ、この人相当魔王が好きなんだな……そういえば、英雄譚が好きって言った時に魔王の話をお勧めしてくれたのもアンジェリーナさんだったなぁと出会った時の事を思い出す。
だけど、ここでも暴食が出てくるか……これは偶然なのだろうか? ライムを暴食と勘違いしてモルモーンは今の会話で何かを思い出したのだろうか?
「ああ、それと……魔王にゆかりのある地で何か変な魔物の目撃情報とかないかい? 例えば……変な武具を持っている魔物が現れたとか……」
「変な武具ですか……モルモーンさん、それをどこで聞きました? さっき報告があったばかりでこれから調査クエストを依頼するつもりだったんですが……」
怪訝な顔をするアンジェリーナさんのその言葉に俺とモルモーンは顔を見合わせてうなづいた。
「アンジェリーナさん、その依頼俺達がうけてもいいでしょうか?」
先週から新連載をはじめました。こちらも読んでくださると嬉しいです。
コメディ強めのハイファンになります。
『スキル『鑑定』に目覚めたので、いつも優しい巨乳な受付嬢を鑑定したら、戦闘力99999の魔王な上にパットだった件について~気づかなかったことにしようとしてももう遅い……ですかね?』
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