33.冒険者ギルド
「カサンドラー、おごっておくれよー、あれも食べてみたいんだよ」
『僕はこの薬草ジュースがいいな』
「あなたね、少しは遠慮しなさいっての!! あとライムは普通にお金を持っているんだから自分で買いなさい」
アスに別れをつげて冒険者ギルドについた俺は意外なものを見た。カサンドラとモルモーンが仲良さそうに一緒に朝食をとっていたのだ。
確かにモルモーンが心配だから宿を一緒にしたとはいえ、あのコミュ障のカサンドラが仲良しになるだと……モルモーンのやつ魅了でもしたんじゃないだろうな……もしくは友達になるって言ったらあっさりと心を許したとか……カサンドラがちょろすぎてちょっと心配になってしまう。
「ああ、おはよう、シオン君じゃないか」
『あーあ、僕のハーレムが終わっちゃった』
「おはよう……ってあなた今失礼な事を考えてないかしら?」
「おはよう……ソンナコトナイデスヨ」
攻めるようなカサンドラの視線に、俺は慌てて目を逸らす。なんで俺の考えていることがわかるんだよ、こわ!!
っていうか吸血鬼って普通のご飯も食べるんだね。俺はテーブルに置いてあるトーストを見ながら思う。
「じゃあ、とりあえずモルモーンをパーティーに登録しよう。ちょっと時間がかかるからシュバインが来たら先に飯でも食べててくれ」
「ふふ、冒険者か……なんだろうね、懐かしい感じがするよ」
そう言って、モルモーンは楽しそうに笑いながら俺の横に立つ。まあ、魔王も冒険者やっていたらしいし、彼女もそのパーティーメンバーの一員だったかもしれない。ならばクエストでもこなしていればいずれか何か思い出すだろうか?
などと思いながら受付に向かっている最中に冒険者達からの視線を感じる。俺……よりもモルモーンに注目をしているようだ。まさか、彼女が吸血鬼である事がばれたのか? と思って聞き耳を立てる。
「くっそ、またシオンのやつ女をつれてきやがった」
「なんであんなにモテるんだよ、魔物フェチの変態のくせに」
「ダンジョンに出会いを求めるのは間違いなんだよ、死ね」
うわぁ……さんざんな言われようである。って、魔物フェチって言ったやつ誰? ひどくない?
まあ、気持ちはわからないでもない。俺だって昔はあちら側だったしね。とはいえ変に悪目立ちをすると色々とやりにくくなりそうだ。ここは刺激しないように……と思っていると、なにやら冷たいものが俺に触れると同時に柔らかい感触が襲ってきた。
「おい、モルモーン!?」
「はじめてのところで不安なんだよ、エスコートをしてくれるかな、シオン君」
そう言うと彼女はニヤリとからかうような笑みを浮かべて、俺の腕をとる。それと同時にギルド中から嫉妬の視線が注がれる。こいつ絶対わざとでしょ。
振りほどこうにも悲しい事に力では勝てないこともあり、微動だにもしない。せめてもの抵抗と受付に早歩きでいく。
「すいません、パーティーの登録内容の変更なんですが……あと、魔王関連に詳しい方に話を聞きたいのですが……」
「わかりました、少々お待ちくださいね」
アンジェリーナさんも、セイロンさんもいなかったこともあり、俺は近くにいるギルド職員に声をかける。それにしても、どこかギルド内が騒がしい気がする。
その様子はこの前の緊急ミッションを思い出させる。
「おやおや、昨日会ったばかりの女性とそんな風に肩をくんで……ずいぶんと仲良しですね、シオンさん」
少し気を引き締めていた俺を迎えてくれたのは、営業スマイル全開のアンジェリーナさんだった。
新連載をはじめました。コメディ強めのハイファンになります。
読んでくださると嬉しいです。
『スキル『鑑定』に目覚めたので、いつも優しい巨乳な受付嬢を鑑定したら、戦闘力99999の魔王な上にパットだった件について~気づかなかったことにしようとしてももう遅い……ですかね?』
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