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32.アスの疑念

「うーん、もう朝かぁぁぁぁぁぁぁ!!!! え? どうしたのアス? 何かあったの?」



 俺が目を覚まして視界に入ったのは無表情でこちらをじっと凝視しているアスだった。いつもは無表情でも目に感情があるんだけど、今は目も空虚なためかとても恐ろしい。あれ、俺なにかやっちゃいました?



「おはよう、シオン……昨日は誰か……部屋に来てたの?」

「ああ、カサンドラ達とちょっと打ち合わせをしてたんだ。まずかったかな?」

「ふーん……そうなんだね……」


 

 俺の言葉に一応は納得してくれたのはアスがうなづいた。いや、冷静に考えたらここ俺の部屋なんだよ、別に誰を入れてもいんじゃ……と思ったがそれを言ったら怖そうなので言わない。

 それに……アスにはまだモルモーンの事は黙っておいた方がいいだろう。俺の様に法術をかじっただけではなく真剣に学んでいる彼女は、アンデットへの忌避意識が高いかもしれない。彼女がモルモーンを見たら人ではないとすぐにわかるだろう。そうしたら彼女にも事情を説明しないと納得はしないだろう。

 

 あとさ、モルモーン自体は悪い奴じゃなくても、ヘルメスは胡散臭いし、何か大きい事に巻き込まれそうなんだよね。

 アスはイアソンが合流したら『アルゴーノーツ』の連中と一緒にパーティーを組むかもしれない。それなのに、今彼女を巻き込んだら多分、『アルゴーノーツ』を捨ててでも俺を守ろうとしてくれるだろう。だけど、それじゃあダメだ。彼女の夢が遠のいてしまう。



「朝ごはんを作ってあるよ……食べよう。私は一日部屋でだらだらする予定だけど、シオンは今日はどうするの?」

「ああ、ありがとう。今日はクエストをした後に、ちょっと用事があるから帰るのは遅くなると思う」



 俺がベッドから起きてテーブルに向かうと、彼女がいつものようにハーブティーを淹れてくれる。クエストの後は、モルモーンをつれて街のレストランで食事をすることになっているのだ。かつて魔王が行っていたという由緒正しきレストランである。

 


「ふぅん……それでさ……この髪の毛は誰かな?」



 何のことだろうと思ってアスが焼いてくれたパンを、かじりながら顔を上げるといつものように、無表情なアスが金色の髪の毛を一本握って俺を見つめていた。

 モルモーンのじゃん!! 髪の毛も霧にならないのかよ? 彼女の事を話すわけにはいかない……俺は冷や汗を垂らしながら悩む。でも、なんて説明すればいいんだ? 巨人の話とか実物を見れば納得はするが、俺の説明だけで納得をしてくれるのか? あとなんか圧がすごいんだが……



「まあ、いいや……今日は私も外出するから遅くなると思う……」

「ああ……」


 そう言うと彼女も食事に手を付ける。いつもは交友関係を気にする彼女があまりつっこんでこないのは珍しいなと思った。

 だから、俺は確認すべきだったのだ。さっきまでだらだらすると言っていた彼女がどこに出かけるのか確認するのを……




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