17.墓の中にいるもの
「光よ」
俺は法術で作った明かりを照明代わりにダンジョンを捜索する。倒したのがアンデットばかりだったせいか無茶苦茶臭いんだけど……
「やっぱりシオンがいると助かるわね。なんでもできるんですもの」
『一家に一匹シオンだね』
カサンドラがいきなりそんな事を言うと遠くからライムの声も聞こえた。なんかペット扱いみたいだなぁと思いながら軽口を返す。
「俺は器用貧乏なだけだし、人は匹って数えないんだよ、ライムわざとだろ」
『まあ、何でもできるってのはすげえよ、俺は戦うことしかできなからな』
「みんな何なの? 俺を褒め殺してどうするの? まさかここで追放とかする気じゃないよね? 最近はダンジョンの奥で足手まといを置いて行って追放するのが流行っているらしいよ」
自分で言っていて鬼畜だなぁと思う。本当にそんなことをされたら立ち直れないよね。俺の自虐的な軽口にカサンドラが呆れたとばかりにため息をついた。
「普通に褒めてるのよ……なんでそんなに卑屈なのよ。ヘルメス、大丈夫よー!!」
「さすがBランクだねぇ、これくらいなら敵じゃないみたいだ。でもさ、こういうのって奥に強いやつがいるんだよねぇ。いやぁ、どんな魔物がいるかワクワクするねぇ」
カサンドラに呼ばれてヘルメスもやってくる。相も変わらずニヤニヤと笑っているが、彼は何をしっているのだろうか、彼は一体どこでその知識を得たのだろうか。まあいい、こんなのでも依頼主だし、今はライムに任せよう。
「風よ」
俺は魔術を使い、風で音を拾う。あまり広い範囲は使えないが、もしも魔物同士が会話をしていれば何らかの情報が手に入るかもしれないからだ。
しかし成果は芳しくなかった。やはりアンデットばかりなのとすぐ奥に扉か何かがあるため遮蔽されているのだ。
「いやぁ、しかし、アンデットばかりだねぇ。ここの主はアンデットかなぁ。だったら上位種と言えば……リッチやヴァンパイアくらいはいそうだねぇ」
ヘルメスが楽しそうに不吉な事言う。彼があげた魔物は両方ともアンデット系の頂点になる魔物だ。禁呪によって人から魔物になった死者をあやつる魔術師であるリッチに、魔族ヘカテーに忠誠を誓いし多種多様な能力を持つアンデットヴァンパイアと共にAランクの魔物である。真っ向から戦えば苦戦は免れないだろう。ただ、炎に弱いため、カサンドラとの相性はいいはずだ。みんなで力をあわせればいけるよね……俺がちょっと不安なっていると肩を叩かれて振り向くとカサンドラがおれにほほ笑んだ。
「大丈夫よ、私達ならできるわ。それに本当に危険なら私のギフトが発動するはずですもの」
「そうだな、カサンドラを信じるよ」
「そうね、あなたが信じた私のギフトを信じなさいな。だから、そんな風に不安そうな顔をしないの。私達なら大丈夫よ」
「そうだね、ありがとう」
俺はカサンドラに微笑み返す。シュバインとも目が合ったが無言でうなづいた。おそらく、相当緊張した顔をしていたんだろうな。でも、みんなのおかげで落ち着いたようだ。俺が安堵をしていると、ヘルメスが興味深そうにこちらをみていた。
「ふふ、本当にカサンドラちゃんは変わったねぇ……以前は全然人を寄せ付けなかったのに」
「うるさいわね……でも、私が変わったとしたらシオンのおかげかしらね」
「え、最初っから結構デレデレじゃなかった?」
「うっさいわね、だって私の予言をちゃんと聞こえてくれる人なんてあなたしかいなかったんですもの」
「ふふふ、仲がよさそうで何よりだよ。おっと扉だ。なんか嫌な予感がするねぇ」
『シオン……奥になんかいるぞ。多分やばいやつだ』
ヘルメスの言う通りダンジョンの奥には金属製の扉があった。そのとびらの奥には何とも言えない威圧感を感じる。それにシュバインがいうならば間違いはないだろう。俺は扉にトラップが仕掛けられていないか、調べる。そして問題がない事を確認した俺は扉を開ける。
その部屋は不思議な部屋だった。武器庫のようなものなのだろうか? 壁には剣などの武器が飾られており、壁際に均一に鎧が並べられている。そして、一番奥に、何やら不思議な光沢を放っている鎧を着たスケルトンが効果そうな椅子に座っていた。いや、これって絶対罠じゃん。絶対動く奴じゃん。
「怪しさ満点ね……いうなれば裸でゴブリンの巣に入る気分かしら」
『ゴチャゴチャ考えるより、こうすりゃいいだろ』
「え?」
そういうとシュバインは予備で持っていた武器を思いっきりぶん投げて、鎧のスケルトンにぶん投げるのであった。




