15.杖
「頼んでた武器の修理はどう? 新しい依頼が来たから使いたいんだけど……何か魔王の墓の中に入れるらしいんだよ。どんな魔物がいるかわからないし、何がおきるかわからないから最善の状況でいたいんだよね」
「おう、シオンか、心配すんな。武器の修理は終わってるよ」
「よかった、ありがとう」
武器屋のおっさんは俺の言葉を聞くと、預けていた武器たちを取ってきて俺に手渡す。念のため鞘から抜くと刀身が新品のように輝いていた。相変わらず素晴らしい出来に感謝しかない。
「それであの杖なんだけどよ……」
「うん? 何かわかった?」
俺が返してもらったばかりの武器を眺めているとおっさんは少し言いにくそうに口を開いた。このおっさんがこんな風に言いよどむのは珍しい。
まさか呪いの武器でしたーっていうオチはないよね?
「かなり古いものだというのはわかったよ。だけど、それ以上の事はわからないな……俺も武器に関しては詳しい方だが、あれは人の手で作られたものではないな。どっかのダンジョンででも見つけたのか?」
「いやぁーははは……」
俺はとっさに誤魔化す。そんなレアなものだったのかよ。まさかゴルゴーンの里に落ちていたとは言えないし、信じてもらえなさそうである。俺は改めて杖を眺める。不思議な光沢を放つ無機質な金属に赤い宝石がついている。確かに魔力は感じたがそんなに大事なものだとは思わなかった。
「それよりも、魔王の墓にいくんだろ? だったらアンデット対策はしとけよ。あそこの周りはアンデットばかりだからな……どうせ中も同じようなもんだろう。アンデット系の中には厄介な能力をもつやつもいるからな」
「だよなぁ……」
アンデット系の魔物というと、やはりスケルトンや、ゾンビ、強力なものと言えば吸血鬼あたりだろうか。あとは、ゾンビを作り出すほどの力をもつ魔物はあとはリッチか……なにがいるかはわからないが、俺の法術だけでは厳しいだろう。アスに頼んで聖水をつくってもらうのがベストだろうなぁ。
「シオン、ちゃんと帰って来いよ。これは餞別だ」
そういっておっさんがくれたのは銀でできた十字架のネックレスである。退魔の力を持つ銀に、十字架に神殿の紋章が掘って有り、神の加護があることを示している。結構高価なはずなんだが……
「おっさん、俺の事好きすぎじゃないか?」
「素直に受け取れってんだよ。新しいダンジョンにはなにがあるかわからないからな、慎重になりすぎるのがちょうどいいんだよ。それに、別にお前のためじゃないさ、常連がいなくなったら店の売り上げに響くからな」
「ツンデレかな? でも……ありがとう」
俺はおっさんにお礼を言って店をあとにするのであった。




