10.模擬戦
俺達に声をかけてきたのはテセウスとアタランテだった。新生アルゴノーツのメンバーである。こちらを睨むように見つめている彼をアタランテが必死にとめようとしている。
「確かにこの前の緊急ミッションでは俺達は後れを取りました……ですが、未知のダンジョンならば戦闘力が大事です。イアソンさんも帰ってきますし、俺達の方が適任ですよ」
「へぇー、君たちの名前は何て言うのかなぁ? 依頼が成功すれば僕としてはどっちでもいいんだけどねぇ」
「自己紹介が遅れました。私は『獣殺し』のテセウスです。Bランクパーティーの『アルゴーノーツ』に所属しています。以後お見知りおきを……」
「私はアタランテです。『俊足の狩人』です。ただ足が速いだけなんで、私の事は別に覚えなくていいです。ああもう、Bランクになれるからってパーティーに入るんじゃなかった……」
「へぇー、君たちも『アルゴーノーツ』なんだねぇ」
二人の言葉に興味を持ったのかヘルメスは見定めるように、二人を眺めている。なんだろう、すっごいめんどくさい感じになってきそうな気がする。俺がどうしようかと悩んでいると聞きなれた声が聞こえた。
「あなたたち……私が席を外している間に……なんでシオンといるのかな?」
「アスクレピオスさぁん、テセウスを止めてください。こいつイアソンさんが侮辱されていると思ってあたまに血がのぼっているんですよ。ああ、もうなんでこんな事に……」
ギルドの奥から無表情にこちらへとやってきたアスにアタランテが縋り付くように泣きついた。
「テセウス何をやっているのかな……? これはシオン達に来た依頼だよ……」
「ですが、シオンさんたちは自分たちをこの街最強って言っているんですよ。本当の最強は俺達じゃないですか!! アスクレピオスさんが返ってきましたし、イアソンさん達と合流をすれば、俺達の方が任務を達成できると思います。それともアスクレピオスさんは俺達がシオンさん達に負けてるって言うんですか!?」
止めようとするアスにかみつくテセウス。そういえばこいつもイアソンの事を尊敬していたんだよね。メディアといい意外と人望はあるよなぁ。あと、どちらかが強いかだが、実際わからない。まじで殺しあうわけにはいかないし、不得意得意もある。それに前回の緊急ミッションだってイアソンを御せる上に強力なサポート能力を持っているアスがいれば結果は変わっていただろう。
「別に俺達が最強って言ったつもりはないし、イアソンを馬鹿にしたつもりはないよ。ちょっとした勘違いがあったんだ。癇に障ったなら謝る。だけどこれは最初に俺達が受けたんだ。だから引いてくれないか、テセウス」
「そうなんですか……? でも……」
テセウスも俺が素直に謝ったからか先ほどまでの勢いはなくなっていた。間接的にとはいえ尊敬していたイアソンを侮辱されたから頭に来ただけなのだろう。これならもう一押しかなと思っていると、アスが火に油をそそぐ。
「確かにパーティーでは……わからないけど……シオンの方が……テセウスより強いよ……」
「アス!?」
「なっ……アスクレピオスさんはどっちの味方なんですか? それに俺は自慢ではないですがBランクソロですよ。俺の方が強いに決まってます」
「シオンの優しいところは好きだけど……このままじゃあ、舐められっぱなしだよ。テセウスもちょっとシオンを舐めすぎかな……それと……私はシオンの味方だよ……」
そう言って彼女がテセウスを睨むと、彼はうっと唸って後ずさった。わかるよ。怒った時のアスこわいよな。俺のために怒ってくれるのは嬉しいけど解決しかけた問題がよりめんどくさそうになったんだけど……
「中々おもしろくなってるねぇ、じゃあ、君らのいうとおり戦って勝った方にお願いしようかなぁ。冒険者には揉めたら模擬戦で話をつけるっている暗黙の了解があるんって聞いたことがあるよ。楽しみだなぁ」
まじかよって顔でヘルメスを見ると彼は楽しそうに笑っていた
気分転換にラブコメも書いてみたので読んでいただけると嬉しいです。
コメディ強めのラブコメです。
『ハイスペック恋愛クソザコお嬢様である黒乃姫奈に手を出したら俺の〇〇〇が飛ぶ~好きすぎて我慢できないから距離を置こうと思ってんのにウチに住むってマジで言ってんの??』
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