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8.ヘルメス

「あいつはカサンドラの知り合いなのか?」

「ええ、知り合いというか、依頼先の村で会ったんだけどよくわからないやつなのよね……狩人っていっていたんだけど……」



 俺の言葉にカサンドラも不思議な顔をしている。確かに村の狩人がここにいるって言うのは不思議だろう。冒険者ならともかく……というか外見的に吟遊詩人に近いんだけど。まあいい、カサンドラの知り合いならば悪い奴ではないだろう。俺は顔見知りの牛に声をかける。



「あとで餌あげるからあれやってくれない?」

『おお、シオンか。うーん、じゃあ、トウモロコシがいいな』

「え、あれ高いんだけど……牧草じゃダメか?」

『あー、トウモロコシが食べたいなぁ、トウモロコシ食べないと疲れて何もできないなぁ……」

「わかったよ、今度買ってくるから頼む」

「何をするつもりなの?」



 なんか俺、牛にも舐められている気がするんだけど……俺が溜息をついているとカサンドラが聞いてくる。彼女に牛の返事は聞こえないからね、疑問に思うのももっともだろう。俺は吟遊詩人風の男を指さして言った。



「あの人カサンドラの知り合いなんでしょ? 助けたほうがいいかなって思ってさ」

「いや、あいつなら放っておいても大丈夫よ。殺してもしなないし……多分彼等より強いわ」

「え?」

「「ぶもーーーーーーーーーーーーー!!!」」



 俺が聞き返す前に屋台を引いていた牛たちが騒ぎ出す。俺のお願いを牛が聞いてくれたようだ。急に騒ぎ始めた牛たちに市場の人たちが注目をする。それはもちろん、ヘルメスや彼に絡んでいる連中も例外ではないわけで……



「カサンドラ助けに行こう」

「え…ええ……」



 他の皆と同様に驚いているカサンドラの手を引いて彼らの方へと向かうとヘルメスと目が合った。その視線に俺は違和感を覚える……彼は俺とカサンドラを見ると一瞬不気味な笑みを浮かべたかのように見えた。なんでこの人は牛を見た後にすぐに俺をみていたんだろう。まるで、俺が牛をけしかけたのをしっているかのように……

 そしてそいつは俺達の方へ走って向かってくる。彼に絡んでいた連中も気づいたようだが、人ごみに押され追いかけてこれないようだ。そして俺達は人通りの少ない路地まで走ると、ようやく一息ついた。



「いやー、助かったよぉ、可愛い女の子がいたからつい声かけたんだけど、さっきの連中のリーダーのお気に入りだったみたいでさ。変な因縁をつけられちゃったんだよねぇ」



うわぁ……なんか一気に助けたことを後悔してきた。俺がげんなりしていると彼はカサンドラをみて軽薄そうな笑みを浮かべた。



「久しぶりだねぇ、カサンドラちゃん。こんなところで会うなんて運命かな? 僕の名前はヘルメス、カサンドラちゃんの元カレ……いや、ごめんなさい、冗談です。だから無言で刀かまえないでくれない?」



 軽薄そうな笑みを浮かべていたヘルメスさんだったが、カサンドラの氷のような殺気に気づいて、あわてて両手を挙げた。なんというか残念な人だった……



ご報告です。


TOブックスさんより7/10にこの作品が出版されることになりました。

詳しくは私の活動報告に書いてありますの読んでくださると嬉しいです。

イラストレーター様の書いてくださった素敵な表紙もありますので損はしないと思います。



また、書籍化にあたりタイトルを「無能扱いされて、幼馴染パーティーを追放された俺は外れギフト『翻訳』を駆使して成り上がる~馬鹿にされたギフトは『全てと会話できる』チートギフトでした。人を超えた魔物や魔族と共に最強パーティーで無双する」

から

「追放された俺が外れギフト『翻訳』で最強パーティー無双!~魔物や魔族と話せる能力を駆使して成り上がる~」に変更いたしました。


これからもよろしくお願いいたします。

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