7.謎の男
簡易劇場のあるテントを出るとそこは屋台が並んでいる。屋台は牛や馬に引かれている移動式屋台である。水で冷やした果物や、焼き魚、肉串、揚げ物など様々なものが鼻孔を刺激する。しかし、牛肉の串を売っている屋台を牛が引いているんだけどいいんだろうか?
「たくさんの食べ物があるのね、どれがおススメとかあるかしら?」
「うーん、そうだね、やはり肉串かな。どれ食べてもわりかし外れないし」
「じゃあ、いただこうかしら。あ、美味しそうなワインもあるわね。すいません、これとこれおねがいします」
「別にいいけどあんまりはしゃいで、服を汚さないようにね」
「ふふ、ありがとう、だって、シオンと食べるごはん美味しいのよ」
料理を前に落ち着きがなく色々と選んでいるカサンドラに俺は思わず忠告をする。せっかくおしゃれをしたのに汚してしまったらショックだろうと思ったからだ。しかし、彼女は器用に口元や服が汚れないように器用にたれのついた肉串を食べる。本当に美味しそうに食べるものだからつい俺の頬も緩んでしまう。でも、ちょっとデートっぽくはない気がするね。やはり、もっとお洒落な所につれていくべきだっただろうか? でも、こういう所ってわいわいしていて好きなんだよね。
「あ、シオンも食べる? 美味しいわよ」
「え……いいの?」
俺の視線をどう勘違いしたのか、カサンドラが食べかけの肉串を差し出してきた。確かに美味しそうなんだけど、これはカサンドラが先ほどまで食べていたわけで……これって間接キスだよね? そりゃあ、冒険中はそんな事言ってられないし考える時間もないから回し飲みとかもするけどさ。今はデート中なわけで……ていうかカサンドラは何も意識してないのかよ。
「ねえ、腕がつかれてきちゃうんだけど……食べないのかしら?」
「ああ、ごめん、もらうもらう」
「はい、あーん」
そうして俺は肉串を喰らいつくと、肉とたれのうまみが広がった。ていうかあーんって……なんで冷静なんだろうと思ってカサンドラを見つめると彼女も顔を真っ赤にしていた。
「その……デートっぽい事をしてみようとおもったんだけど、予想以上にに恥ずかしいわね。これ……」
むっちゃ顔を恥ずかしがっているー!! なんか普段と違ってのギャップかすごい可愛いな。さっきまでとは違いなんかむず痒い雰囲気を俺は感じた。酔いもあったんだろう。照れているカサンドラが可愛くて俺は少し大胆な行動に出る。
「ありがとう、こっちも美味しいよ」
「え、ちょっと……」
そう言って俺は自分の分のフィッシュチップをとって彼女の口元に差し出した。彼女はしばらく悩んでいたが意を決したかのように口にした。なんだろう、ただ、フィッシュチップを食べているだけなのにドキドキするんだろうか。
「なんか変な感じだね」
「そうね……私達にはまだ早かったもしれないわ。でも、悪くはないわね」
そう言って俺達は顔を見合わせて笑いあう。そしてそのまま談笑をしようとしていると怒声が響いた。
「なんだてめえ、喧嘩売ってるのか?」
「いやいや、君の方からぶつかってきたんじゃないか、僕はわざわざ男をナンパする趣味はないんだけどなぁ」
どうやらもめごとらしい。吟遊詩人のような帽子をかぶった優男に何人かの屈強な男が絡んでいるようだ。せっかくの美味しい食事だというのに喧嘩とかは見たくないよね。どちらに加勢するかは置いて止めに入るべきだろう。
「なあ、カサンドラ……」
「あれは……ヘルメス? なんでこんなところにいるの?」
俺がカサンドラに許可をとろうとすると彼女は驚いたように目を見開いた。あの優男知り合いなのか? でも、彼女の表情には嬉しさなどはなく、ただただ困惑だけがあった。
肉串たべたい……
近いうちに告知がありますのでみていただけると嬉しいです。




