3.魔王の墓の謎
「ゾンビが不思議な声をですか……今回ばかりはシオンさんの言うだからといって中々信じられませんが、ひょっとしたら何かあるかもしれないですね……情報を集めておきます。あそこは不思議な所ですからね……一応確認しますが、リッチなどではなかったんですよね」
「はい、今の俺達ではリッチは荷が重すぎますよ」
冒険者ギルドに戻った俺は、みんなで食事を終えた後に、アンジェリーナさんの仕事が落ち着いているタイミングを見計らって今日の報告をする。ちなみにポルクス達は酔っぱらって寝てしまったので、カサンドラが二人を送っている。二人ともやたらテンション高かったのは今回報酬が多かったことも関係しているだろう。ちなみに、リッチとは優れた魔術師が禁呪によってアンデットとかした魔物である。実質不老なので強力な魔術を使うと言われている。ランクは生前の能力に左右されるが、BランクからAランクだろう。ちなみに同じくらい強いアンデット系の魔物は吸血鬼くらいだろう。
「でも、『魔王の墓』はいまだよくわからないですからね、自我があるゾンビがいても不思議ではないかもしれませんね」
「確かにあそこって謎ですよね。アンデットが定期的に湧いて出てきますし……」
「そうなんですよ、それに別に『魔王』の死体だってあそこには埋まっていませんし……」
『魔王』それはかつてこの街を拠点にしていた魔族の冒険者だ。彼は同属である魔族や、魔物と共にパーティーを組んでSランクの冒険者として活動していたのである。ただその最期に関しては謎に包まれている。世界を救うために死んだとも、更なる冒険を求めて他の大陸に渡ったとも言われている。まあ、冒険者だし、どっかで野垂れ死にしていてもおかしくはないんだけどね。
ただ、この街の発展に貢献したという事でちょっとした資料館や、先ほどの墓場などもあるのだ。一応観光地にもなっているがあんまり人気はない。
「でも、昔からあそこには何かが隠されているって話は聞きますね。まあ、あくまで噂話ですが……それよりシオンさん……」
「はい、なんでしょうか?」
それまで普通に話していたが、アンジェリーナさんがちょっと真面目な顔になった。あれ、これはなんか怒られる奴だ。
「今日のあの骨の量はなんですか? シオンさんたちはBランクなんですから少しは自重してください」
アンジェリーナさんは換金所に並べられた骨を指さして言った。まあ、街から近い事もあり、Cランク冒険者の狩場兼練習の場所にもなってるからね、Bランクの俺達があまり狩りすぎるのも良くはないのだ。
「ああ、すいません、うちのカサンドラにはいっておきますから」
「ふーん、うちのですか……」
俺の言葉になぜかアンジェリーナさんは頬を膨らませる。あれ。さっきとは違う感じに怒っているんだけど……やばいくらい可愛いな。年上の女性に叱られるのってちょっといいよね、特にアンジェリーナさんの説教には愛を感じるし。
「何をにやにやしているんですか!」
「いや、アンジェリーナが可愛かったもので……」
「もう、適当な事を言って……ほら、あなたのカサンドラさんが待ってますよ。ちゃんと気を付けるようにいっておいてくださいね」
「いや、別に俺のっていうわけではないんですけど……」
そういうと彼女は仕事に戻ってしまった。なんで怒ってるんだろうか? でもちょっと顔が赤いのは気のせいだろうか、俺は釈然としないものを感じながらカサンドラと合流をした。
「お待たせ、ポルクス達は大丈夫だった?」
「全然待ってないわよ、ええ、とりあえず二人の部屋に放り投げといたわ」
カサンドラは結構大雑把なところがあるからな……まじで放り投げてそう。それにしても、このやりとりなんかいいな。恋人が良く言いそうだよね。いたことないけどさ。
「何をにやにやしてるのかしら?」
「いや、なんか、さっきのがデートの待ち合わせのやりとりみたいだなって思って」
「へぇー、流石モテモテのシオンね、詳しいじゃない」
「いや、全然もてないって……カサンドラの方こそどうなんだよ」
「ふふふ、デートどころか友達だっていなかったわよ」
やらかしたーーーーつい彼女の地雷に触れてしまった。俺があわてて話題を変えようとすると、カサンドラはからかうように笑った。いや、いい加減この流れ慣れてきたけど、お約束って大事だよな。
「そういえば……いつデートしましょうか?」
「え?」
「だって、ゴルゴーンの里で約束したじゃないの、まさか忘れたの?」
そういうと彼女はちょっと不機嫌そうに唇を尖らせた。よかった……カサンドラ覚えててくれたのか……俺の独り相撲ではなかったと安堵した。




