ダブルデート5
「シオン君を落とすなら今がチャンスよ!! アンジェ」
「いや、いきなり何を言っているんですか?」
セイロンの言葉に私はツッコミを入れる。なにやら話があるということでついてきたが、私の思っていた内容とは違うようだ。というか、この飲み会はセイロンとジャックさんが仲良くなるための飲み会ではなかったのではないか? なのになぜいきなりシオンさんと私の事になるのだろう。
「今は私よりあなたの話よ!! アンジェって仕事では笑顔を振りまいて、男を魅了しているくせに、プライベートだと全然じゃない」
「別に魅了なんてしてません!! そりゃあ、仕事だから笑顔を振り向きますよ。でも、冒険者の人たちって露骨に胸をみてくるから嫌なんですよ……」
「でも、それはシオン君もでしょう? なんでシオン君には嫌悪感がないのかしら?」
「確かに……」
うーんと唸りながら私は考える。なんで彼には心を許したのだろうか? 受け持った最初の冒険者だからだろうか。それとも一緒に過ごした時間が長いからだろうか? 彼といる時間は楽しいし、胸を見られても馬鹿だなぁ程度にしか思わない。しばらく考えたが答えは出なかった。
「その顔はわからないようね」
「ええ、そうですね。いったいなんででしょうか?」
「それは恋よ!!」
「恋!?」
なぜかどや顔で言い切るセイロンに私は冷めた視線を送る。いや、恋ってなんというかもっと、話したりするとどきどきしたりとかするものなのではないだろうか? まあ、確かに話してはいると、楽しいし、あっという間に時間はすぎる。あとは、恋とはその人と会っていない時はずっと気になるものだろう。確かに彼が無事に帰ってくるかは気になっている。確かに私はシオンさんとは仲良くなりたいとは思っている。でもこれは恋なのだろうか? 実はあんまりそういう経験がないこともありよくわからないのだ。
「まあ、恋とは言えないかもしれないけど、気にはなっているのよ。自分の気持ちに気づいたら手遅れだったとかなったら目も当てられないわ。いまだシオン君がはっきりしない間に一気にいっちゃいましょう。それに二人とも忙しいからゆっくり話せてないでしょう? だから、ちょっと気になってるかもって思いながらゆっくり話しなさい」
「ええ、それくらいならまあ……」
「じゃあ、私はなんとかジャックさんを連れ出すからがんばりなさい。」
なんで彼女は、私の事にこんな必死になって、私とシオンさんの事を考えようとしているんだろうと思いつつも話すことにするのであった。
しばらくジャックと話しているとライムが帰ってきた。女子の会話を盗み聞きって良くないと思うんだけど……まあ、でもせっかく聞いてくれたのだ。ライムの努力を無駄にするのは申し訳ない。そう、これは俺は悪くないはずだ。
「で、ライムどうだったんだ、アンジェリーナさん達はどんなことを話していたんだ?」
『興味津々だなぁ。シオン、ジャックさんに、トイレに行くように言ってくれない? 良いことがあるからさ』
ライムは俺の質問に答えずにそういった。一体どうしたんだろう。まあ、こいつがこういうのだ、なにか意味はあるのだろう。俺はきょとんとしているジャックにライムの言葉を伝える。
「まあいいけど……ジャック、なんかライムがトイレに行ってくれってさ」
「え? なんで、まあいいけど……」
そういうとジャックは怪訝な顔をしながら、立ち上がってトイレへと向かった。俺はライムに話しかける。
「で、これから何がおきるんだ?」
『ああ、シオン最近アンジェリーナさんと話せてなかったよね?」
「ああ、まあね。俺は遠征だったし、アンジェリーナさんも忙しそうだったから。それに、女の子と二人っきりってどんなこと話せばいいかわからなくない?」
じゃあ、アスとかカサンドラはどうなのって話だけど、幼馴染だったり、パーティーメンバーだったりしてずっと一緒にいることが多いからなんか違うよね。こうなんというか、仕事とか家族とか関係なくわざわざ飲みをするってマジでデートみたいなんだよね。
『そんなヘタレたこと言ってるから童貞なんだよ。せっかくのチャンスだからがんばって』
そういうとライムは俺の服の中に入っていった。一体どんなチャンスなんだろうね。
「シオンさん、ただいまです」
振り向くと、少し緊張した顔のアンジェリーナさんがいて、見慣れない表情に可愛いなと思ってしまった。
「あれ、セイロンさんは?」
「なんかジャックさんとどこか行くっていってましたよ」
え、待って、あの二人そんなにフラグ立ってたっけ? でも、まあせっかくの機会だ。少し緊張はするけれどアンジェリーナさんと話すのは楽しみである。
番外編は本編に登場しなかったキャラに焦点を合せようと思っているんですが、アンジェリーナさんがヒロインみたいになってしまってやばい……
面白いなって思ったらブクマや感想、評価いただけるとうれしいです。