ダブルデート4
「そういえば、シオン君ってアスさんとはどんな感じなの?」
四人で飲んでいるとセイロンさんがふと気になったという風に訪ねてきた。どんな感じってどういう意味なんだろうか。ふと視線を感じるとアンジェリーナさんと視線があった。
「どうって……そうですね……俺に肉親はいないんですけど、姉がいたらこんな感じなんだろうなって感じでしょうか? ちょっと過保護な所もありますけど、俺の健康とかも気を遣ってくれるし、色々アドバイスもくれますよ」
「「ちょっと……?」」
俺の言葉に異口同音で不思議そうな顔を三人がした。一体どうしたというのだろう。アスは確かにちょっとおせっかいだけど、俺の事をいつも思ってくれている優しい姉のような存在だと思うんだけど……
「ねえ、シオン君ってアスさんに関して甘くない?」
「なんというか家族の感覚がおかしいですよね……」
「アスさんへの信頼は異常なんだよな……」
なぜか三人とも不審そうな顔でこちらを見てきた。俺は何か変なことを言ってしまったのだろうか? こほんと咳ばらいをしてセイロンさんが次の質問をした。
「じゃあ、カサンドラさんとはどんな感じなのかしら?」
「え? カサンドラは相棒ですね。俺はあいつのおかげで、冒険者としてやっていく自信を取り戻しました。追放されてどうなるかと思いましたが、背中を預けられる仲間をみつけることができて俺は嬉しいです」
カサンドラとの出会いを思い出すと、俺は思わず、笑みがこぼれる。彼女との出会いがあったからこそ俺は再び冒険者としてやっていくことができたのだ。あと、俺が頼っているようにあいつも俺を頼りにしてくれているというのがすごい嬉しいのだ。
「まあ、カサンドラさんに関しては、あっちも恋愛とかいまいちわかってない気がするのよね」
「カサンドラって赤い髪の子だよな。うちにシオンと結構ランチを食べに来るぞ」
「へぇ、やっぱり仲良しなんですね。私は食事とか、全然誘われないんですが……」
またもや異口同音でつぶやく。なんなんだろう。俺の人間関係がそんなに気になるものだのだろうか?
「じゃあ、ポルクスちゃんはどう思っているのかしら?」
「え? ただの後輩ですけど……でも、頼られるのは嬉しいですね。立派な冒険者になっていて、嬉しいですね」
「あ、これ、一番脈ないわね……シオン君って年上が好みなのかしら」
「ポルクスちゃん結構積極的だと思うんですが、あれで、気づかないってやばいですね」
「シオンのやつそんなにフラグ立ってんの? ぶん殴っていい?」
なぜか、セイロンさんとアンジェリーナさんが顔をみあわせてため息をついた。あとジャックがにらんでくるんだけど、どうしたんだ?
「じゃあ、最後にアンジェの事はどう思っているのかしら?」
「え……その……」
「ちょっとセイロン!?」
「あー、このつまみうまいな、今度うちでもつくってみよう」
なんか本人がいる前でそういうの恥ずかしくない? ジャックに助けを求めたがあいつは興味なさそうに、料理を食べている。でも、俺はアンジェリーナさんの事をどう思っているんだろう? つい、彼女に視線を送ると恥ずかしそうに顔を真っ赤にして逸らされた。いやあ、やっぱり可愛いし、魅力的な人だと思う。でもさ、俺の事異性と思ってないと思うんだよね、多分世話の焼ける弟みたいな感じだと思うんだ。俺とアンジェリーナさんをみていたセイロンさんはなぜか、にやりと笑った。
「ちょっと席を外してくるわね、いきましょ、アンジェ」
「え、なんでです?」
「いいから、行くわよ。ここで一気に落としましょう」
そういうと二人は席をたってしまった。いったいどうしたんだろうね。俺が疑問に思っていると、服がもぞもぞと動いてライムがはい出てきた。
『じゃあ、僕は偵察に行ってくるね』
「え、なんで?」
『シオンの童貞卒業のサポートだよ」
そういうとライムはセイロンさん達をおっていく。いや、あれっておっかけていいものなんだろうか……? 俺が何がおきたかわからずてんぱっていると、つまらなそうな顔をしているジャックが口を開く。
「なあ、シオンって好きな人とかいねえの? 彼女欲しい彼女欲しいとはいっているけど、なんかいまいち一歩ふみださねーよな」
「いきなりだな、まあ、彼女は欲しいんだけどさ、いまいち好きってわからないんだよね。ほら、俺、孤児じゃん。実際のところ、恋愛感情ってわからないんだよね」
俺は物心ついたころにはスラム街にいた。親の顔も覚えていない。ケイローン先生に拾われるまでは家族というものも知らなかった。そのせいか、恋愛と家族の愛情の違いというものがいまいちわからないのだ。アスやイアソン、ケイローン先生へ抱いていた感情はおそらく、恋愛ではなく家族愛なのだろう。じゃあ、恋愛感情って何なんだろうと思う。
まちを歩くカップルをみてうらやましいなとは思うし、女の子に抱き着かれたりすればどきどきはする。でもさ、俺の両親だって愛し合っていたはずで……確かに愛し合って俺を産んだはずで、でも俺を捨てたのだ。
もしかしたら両親には俺を捨てなければいけない理由があったのかもしれない、それとも、両親が喧嘩をして愛情がなくなって、その結果に俺が邪魔だから捨てたのかもしれない。事実は闇の中だ。
とにかく、そんな生立ちだからだろうか、俺はいまいち恋愛感情というものがわからないのだ。いや、恋愛感情を抱くのが怖いのかもしれない。もしも、俺も俺の親と同じように誰かを愛して、家庭を持っても、それでも愛しきれないんじゃないかという恐怖がつきまとうのだ。
「なんか重い話になった!?」
「いや、孤児なんて別に物珍しくないだろ。俺は別に気にしてないよ」
「じゃあさ、いつかわかったら教えてくれよ。いつの間にかその人の事しか考えられなくなって、あ、この人が運命の人だって感じるんだよ」
「運命の人ねぇ……」
俺は酒を飲みながら思う。本当にそんな出会いがあるものなのだろうか? 俺は好きな人ができるのだろうか?
なんか後半ちょっと真面目になってしまいました。
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