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52.祝勝会

「ゴルゴーンの英雄と人間の英雄に乾杯!!」」



 乾杯の音頭と共に人やゴルゴーン達がそれぞれ酒に口をつける。急遽作られた台の上ではメデューサとアスがなれない演説をしている。アスが何やら助けを求める視線を投げてくるが、俺は笑顔で手をふってあげた。呼ばれているのはアスだけだから、俺が上がるのはおかしいし、アスもそろそろ人見知りを治すべきだと思うんだよね。俺達はそんな彼女を肴に酒とつまみを楽しんでいた。

 あの戦いから二日ほど経った。アスとペガサスに乗って治療法術をかけて回ったおかげか、ゴルゴーンの里は壊滅はしないで済んだ。今は復旧もひと段落してようやく最低限の生活ができるようになったということで、ゴルゴーンの里を救った英雄への感謝を理由に、みんなでお酒を飲んでいる。

 そして、これは人間と、ゴルゴーンの和解の宴会でもある。ステンノの策略によって、人間とゴルゴーンの間には亀裂が走った。それはステンノがいなくなったからと言って、簡単に消えるものではない。人にはゴルゴーンへの恐れが生まれ、ゴルゴーンもまたいまは他者を信用できないでいる。

 ちなみに人間の村の方は、ゴルゴーンの毒の治療薬をアスが作ったおかげで、みんな無事治療中である。しばらくすればみんな完治するとの事だった。そして、大きな変化と言えば、村長が交代となった。前村長はステンノの内通者だったが、娘の命を盾にされていたこともあり、ゴルゴーンの新しい族長がそれだけで良いと判断したのだ。

 反対にゴルゴーンの里の被害は甚大だ。食糧庫も戦闘のせいでボロボロだし、命にかかわるほどの怪我をしていたゴルゴーンはアスが治したけれど、重傷者はまだまだ多数いる。正直崩壊一歩手前だったと言えるだろう。ちなみに、ステンノは見つからなかったそうだ。また悪いことをしなければいいけれど……

 だが、そんな中でも、今回の宴会を決行したのはゴルゴーンの族長である。ピンチはチャンスではないけれど、人とゴルゴーンの仲を良くしようと、酒の場を設けたのだ。台の方を見るといつの間にかメデューサとペルセウスが立っていた。二人はお互い愛おしそうに手を繋ぎながら見つめ合って、そして大きな声で一言。



「僕たちはゴルゴーンと人でも、交流できるという事を証明しようと思います」

「おお、我が歌姫よ。これはプロポーズというやつか!? もちろんオッケーと言わせてもらおう!!」

「君はなんで打ち合わせを無視するの? 僕はそんなこと言ってないよねぇ!?」



 二人の漫才のようなやりとりに、少しだが場内に笑いがこぼれる。もちろん、人間とゴルゴーン達の間のわだかまりはすぐに消えはしない。むしろしばらくは続くだろう。でも、この宴会にも少しだけど人や、ゴルゴーンが参加して、恐る恐るだが会話をしてるのが見える。その風景がいつか日常になるかもしれないのだ。これがメデューサが頑張って勝ち取った風景だ。そして俺達が少し力を貸して勝ち取った風景だ。



「なーに難しい顔をしてるのよ。せっかくの宴会なんだから辛気臭い顔しないの」



 そういって酔いのためか少し顔を赤くしたカサンドラが、コップに酒を並々といれた状態で声をかけてきた。



「カサンドラってこういうのが、結構好きだよね」

「ええ……だって、これまではこういうの行っても話す相手がいなかったから……」

「よーし、今日は吐くまで飲むぞー」

「そういうのはもういいわよ。だってもう、わたしにはあなたがいるもの」

「いやー、なんとなく言っておこうかなと」

「まあ、わたしもこの流れを期待してたけどね」



 そう言いながら楽しそうな笑みを浮かべて彼女はお酒に口をつけ始めた。整った顔の彼女が酔いで少し顔を赤くして笑顔を浮かべるのはすごい絵になる。てかさ、いきなりそんな無防備な顔みせるのずるくない? ちょっとドキッとしちゃったんだけど。



「あなたも名誉の負傷をするくらい活躍したんだから、もっと騒いでいいと思うわよ。あいつらみたいに……」

「いや、あいつらは騒ぎすぎでしょ……」



 俺はゴルゴーン達に囲まれて、しかも、そのうちの一体の胸元に包まれ、満足そうな笑みを浮かべているライムと、ゴルゴーン達に囲まれて筋肉を触られているシュバインをみながら、あきれた声を出す。ライムはともかくシュバインは珍しいよね。てか、あいつら言葉通じないくせになんでデレデレしてるんだろう?



『おお……なんだこの雌たちは……積極的だが悪い気はしねえな。ライムの気持ちがちょっとわかったわ』

『ほらこのオーク筋肉がすごいわよ』

『ガタイもいいし、良い子種をくれそうよね。監禁したらだめかしら?』

『ずるーい、私にも分けてよ! こいつなら絞り放題じゃない?』



 シュバイン、ちょっと待って、モテてないよ。いや、モテてるけど子種として見られているよ。ぜんぜんうらやましくないな……オークとかエッチな本では絶倫とか言われてるけどどうなんだろうね。 

 それにしても、やはり異種族のカップリングは難しいね。あれがゴルゴーン達の求愛なのかもしれない。価値観が違いすぎるでしょ。でもさ、俺に一人も声をかけてこないのは悲しいよね、俺も結構活躍したと思うんだけど……



「あいつらずるいなぁ……」

「ふーん、シオンも女の子にキャーキャー言われたいの?」



 俺のぼやきにカサンドラが意地の悪い笑みを浮かべながら聞いてきた。首を可愛らしくかしげる姿は普段の好戦的な彼女とのギャップがあってとても可愛らしい。



「そりゃあ、まあね……俺だって女の子に褒められたりデートしてみたいんだよ」

「へー、キャーキャー」

「あのさ……ちょっと酔いすぎじゃない?」



 こんな嬉しくないキャーキャーは初めてである。俺がジト目で呻くとカサンドラが笑いながら、でも少し恥ずかしそうに言った。



「ごめんごめん、冗談よ。じゃあ、街に帰ったら私とデートしましょ?ライムが言ったようにラブコメでもしてみましょうよ」

「え……? あ……? は……?」



 俺は予想外の言葉に思わず、持っていたコップを落としてしまった。デート? いや、カサンドラとは以前に、街を案内した後に食事をしたことはある、あれもデートっぽかったが……今度はデートだ。ガチなデートだ。え? マジなの? こんなかわいい子とデートしていいの? 罰ゲームだったりしない? 俺が喜んでお洒落して、待ち合わせ場所に行ったら、みんないてドッキリでしたー。とかしないよね。



「なんか言ってよ、私だってちょっと恥ずかしいんだけど……よくわからないけど仲の良い男女が、もっと仲良くなる時にデートをするんでしょう?」

「ああ、行こう。絶対行こう。いついく? 明日?」

「ええ、約束だからね。だからもう無茶をするのは駄目よ。怪我をしたら私とデートできなくなるんだから」



 俺は彼女の言葉に自分の左腕をみてうなずく。思ったより彼女に心配をさせていたようだ。でも、カサンドラはデートに関してちょっと勘違いしている気がする。多分、カサンドラのそれは恋愛感情じゃないよね。確かに仲良い男女が遊ぶことをデートっていうんだけど、デートってなんていうか、恋人になるための段階を踏むもんじゃないかな? でもまあ、最初はそれくらいの方がいいのかもしれない。俺も変に意識しすぎないようにしないと……



「あー、楽しみにね。私デートって初めてなの。一生懸命お洒落していくわね。それにね、私が仲良くなりたい男性ってシオンしかいないもの」

「あ……ああ……」

「じゃあ、私はお酒おかわりしてくるわね」



 せっかく意識しないようにしてるのに、そんな可愛い事言うのちょっとずるくない? え、夢落ちかな?



「シオン……なんかデレデレしてる……」

「うおおおお!!」



 俺はいつの間にか後ろにいたアスに声をかけられた。なにこれびっくりしたんですけど!! しかもなんていうかジトーって感じでみられてこわい。



「私がなれない演説をしている間に……デレデレして……ゆるせない……」

「あの、アス。どうしたの? 目に感情がないんだけど」

「おーい、シオン達、エウリュアレ姉様が呼んでるから来てくれるかな?」

「フ、いきなり結婚の報告とは我が歌姫は積極的だな」

「違うからね、姉様がみんなに挨拶をしたいって言ってるだけだから」



 顔を真っ赤にしているメデューサに連れられて俺達はエウリュアレさんのとこへ行くのであった。ちょっと不安になってアスをみたがいつものアスだ。さっきのは気のせいだったのだろう。



ちょっとシオンとカサンドラの距離が縮まってきた感じの話です。


連休中には二章終わる予定です。

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[良い点] シオン、てめぇこの野郎…と、さすがに言わずにはいられない… カサンドラちゃん渾身の告白を勘違い呼ばわりとは… 今回は…正真正銘、もげろ!(嫉妬~笑)
[良い点] 童貞シオン、ついにデートの約束を取り付ける [気になる点] >そして、大きな変化と言えば、村長が交代となった。前村長はステンノの内通者だったが、娘の命を盾にされていたこともあり、ゴルゴーン…
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