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召喚されたら自称悪い魔女に下僕にされた話 【連載版】  作者: 日暮キルハ


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悪い魔女は空腹

「魔女と人殺しと傲慢なお姫様がでてくる話をしましょう」


「要素を詰め込みすぎじゃないかな」


 なぜか最近はまっている編み物の本から顔を上げ、眼鏡を外して魔女さんは呆れたようにそう言った。

 

「ちなみに王子と召使いが主人公です」


「詰め込みすぎだよ……」


 登場人物だけでお腹いっぱいとでも言いたげに苦々し気な表情を見せる魔女さん。

 魔女に王子にお姫様とわりとありがちな構成なんですけどね。そこに人殺しと召使いが追加されるだけで。


「ちなみにタイトルは『なぞなぞ』です」


「なぞ要素が迷子になってるけど……」


「では、始めましょう。あるところに一人の王子がいました。王子は召使いを従えて旅をしていました」 


「王子が旅を……。国政には興味がない放浪王子だったのかな?」


「全体的な話の流れとしては王子と召使いが色んなところを旅して色んな人に出会う冒険ジャンルに近いものなので可能性としてはありますね。さて、そんな王子ですが、ある日、大きな森に入りこんでしまいそこで一人の若く美しい娘と出会い、泊めてもらえないだろうかとたずねます。娘はそんな王子に自分の家には魔女の継母がいるので、家に来るのはおすすめできないと伝えました」


「その少女、何か別作品の主人公なんじゃないかな」


「ありがちな設定ではありますけどね。少なくともこの話においてはただの魔女の継母を持っているだけの娘ですよ」


「そこまで強い個性持っておいて『ただの』とは言えないよね」


「でも、この先王子の旅について行ったりしませんし……」


「おい、ネタバレやめろ」


 おや、うっかり。


「まったく……。ま、さすがにわざわざ魔女のいるところへ自分から王子が行くわけもないし、そう考えると娘がただの娘なのも納得かな」


 うんうんと頷く魔女さん。

 勝手に怒りを鎮めてくれたようで何よりだ。


「いえ、王子は魔女を怖いと思わなかったので娘の家に行きましたよ」


「怖いもの知らずすぎる……」


「まぁ、良い気はしないでしょうけど他に泊まれる場所も見つからなかったので背に腹は代えられないといったところでしょうか」


「どんだけ野宿嫌なのさ。背に腹は代えられないっていうか腹ざっくりいかれちゃってるよねそれ」


 まぁ、普通は泊まりませんよね。現代風に言い換えると旅先で曰く付きの旅館に泊まるような感じでしょうか。よっぽどの事情でもない限りはそんな旅館には誰も泊まりたくない。せいぜい幽霊や呪いの類を信じないウェイウェイうるさい魔女さんが嫌いそうな若者がその場のノリや度胸試しで泊まるくらいだろう。つまり王子と召使いはウェイ系ということになる。魔女さんの敵だ。


「魔女の老婆は二人を歓迎し王子と召使いにゆっくり休むよう声をかけます。一方で娘は家では何も食べないようにと二人に忠告をします。二人は忠告の通り何も食べず代わりにしっかりと睡眠をとりました」


「寝るなよ……。もうこれ肝が据わってるのかただのバカなのか判断に困るよね」


「翌朝、二人が家を出ていこうとすると、魔女の老婆が飲み物を渡そうとします。王子は魔女が飲み物を取りに行っている間に馬に乗って逃げましたが、召使いのほうはまだ鞍をつけておらず魔女が戻ってきたときにその場に残っていました。老婆がその飲み物を差し出したとたんにグラスがはじけて中の飲み物が馬にかかってしまいます。飲み物という名の毒です。その毒はとても強く馬はすぐに倒れてしまいました」


「急展開。というか王子薄情だな」


「慌てた召使い。王子のところに走って追いつき事情を話します」


「召使いの脚力どうなってんの?」


「そして召使いは、鞍を取りに馬のところに戻ります」


「余裕あるなぁ……」


「そこではカラスが馬の肉をむさぼっており、召使いはそのカラスを食料にしようと殺して持ち帰りました」


「ほんと余裕あるなぁ……」


「二人はまた森の中で彷徨います」


「旅してるわりにはよく迷子になるよね」


「今度は宿屋を見つけました。亭主にカラスを調理するよう渡しましたが実はその宿屋は人殺しの隠れ家だったのです。夜に十二人の人殺しがやってきて、王子と召使いを手にかけようとしますがカラスのスープを飲んで毒で死んでしまいます」


「いきなり現れていきなり死んだね。人殺し」


「まぁ、仮にカラスの毒で死なずとも馬の脚力と張り合う脚力を持つ召使いに勝てるとはとても思えませんけどね」


「なんか召使いだったら毒料理でも普通に食べちゃいそうだよね」


「それもう人間かどうか怪しいですよ」


「ところで……」


 話を遮り目を逸らす魔女さん。

 微かに頬が赤く染まっている。


「君の話を聞いていたら鳥のスープが飲みたくなってきたのだけど……」


「魔女さんが手を貸してくれるなら今から作っても今日のご飯に間に合うかもしれませんね」


 魔法があれば煮込み時間はかなり減らせますから。


「ほんと!?」


「はい。……ところで一つ思ったんですけど」


 パッと花のような笑みを浮かべた魔女さん。

 その姿を見てくだらないことが浮かんだ。


「魔女さんが作れば毒使わなくても毒料理になりそうですよね」


「ん? どういうことかな?」

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