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召喚されたら自称悪い魔女に下僕にされた話 【連載版】  作者: 日暮キルハ


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悪い魔女は食べる

「今日はこぶたとオオカミの話です」


「また急だね」


 パタリと本を閉じ、視線をあげて応える魔女さん。

 そのまま手にある本を机に置き、話を聞く準備とばかりに体をこちらに向けた。


「あるところに三匹のぶたの兄弟が居ました。こぶた達は自活するためにそれぞれで家を建てることにします」


「もう慣れたけど、君の話のなかの動物はいつも手が器用すぎるよね。たぶんだけど普通に二足歩行で喋るんだろうし。もはや豚じゃないよ。ユニーク種のオークだよ」


「この世界ってやっぱりオークとかいるんですね。……もしかして売られてる豚肉ってオークの肉だったりします?」


「さすがにそれはないよ。オークの肉は高級品だもの」


「……美味しいんですか?」


「オークの肉を食べたら当分普通の豚肉を食べる気にはならないくらいには美味しいね」


「……へぇ、ぜひ一度は食べてみたいですね」


 オークというと薄い本で大活躍するタイプの魔物でいくら豚のような見た目とはいえ食用として流通しているとは思っていなかった。

 思いがけずいいことを聞いた。


「ところで、どこまで話しましたっけ?」


「三匹のぶたの兄弟が器用に二足歩行で立ったあげく自分達の家を作り始めたところだね」


「そうでした。ぶた達はそれぞれが思い思いに作りたい家を建てます。長男は藁の家。次男は木の家。そして、末っ子は二人と違い、頑丈な家を作ろうとレンガで家を建てることにしました」


「材料の調達までやってるのだとしたらほんとにその豚達はスペックが高すぎるね」


「材料は通販とかじゃないですか? 知らないですけど」


「無責任だな……。というか仮にそうだとしてもそれはそれで凄すぎるよね。知能が高すぎるよ」


「注文された品を届けた業者もビックリでしょうね。さて、長男と次男はそう多くの時間を掛けずに無事それぞれが思い描いた家を完成させることができました。二人は喜び自分達の家で寛いだり、お互いにお互いの家に招待したりしながら楽しい時間を過ごします」


「自作の家で寛ぐ豚とか自分の家に兄弟を招待する豚とか創造したら和むね」


「ですね。まぁ、実態はどちらの家の方が優れているかというマウント合戦だったかもしれませんが」


「考え方がひねくれすぎてる……」


「これだけ優秀だとないとは言いきれないですからね。さて、楽しい時間を過ごしていた長男と次男でしたが末っ子の姿をしばらく見ていないことに気がつきます」


「そういやそうだったね。三男はレンガだったか」


「どうかしたのか。心配になった長男と次男が末っ子の様子を見に行くと、なんとまだ末っ子は家作りを続けていたのです。二人はそんな末っ子を見てまだ完成していないのかと軽く呆れ、なぜレンガなんて時間のかかるものを選んだのかと不思議に思いましたが、それほど気にもとめずそれぞれの家に帰ってしまいました。それから数日後のことです。三匹のこぶた達の家の付近にオオカミが現れたのは」


「今回も溺死かな」


 オオカミが勝つかもしれないんだからそんなこと言っちゃダメですよ。


「オオカミはまず長男の家を訪れ、外に出るように促します。もちろん長男はそれを断ります。するとオオカミは大きく息を吸い込んで吐き出して、長男の作った藁の家を吹き飛ばしてしまいました」


「オオカミの肺活量。そもそも息を吹き掛けられた程度で消し飛ぶ家でよく満足できたね。ボクの家なら雑魚魔導師達が百人がかりで使ってくる殲滅魔方陣でも耐えられるよ」


「変なところでマウントとらないで下さい。オオカミに呆気なく家を吹き飛ばされた長男は慌てて次男の家へと助けを求めに行きます。助けを求める長男を快く自宅に招き入れた次男は長男に向かって言いました。大丈夫、僕の家はオオカミの息に吹き飛ばされたりはしないよ」


「もう、なんか、凄いダメな感じがするよね」


「オオカミは長男と次男に外に出てくるように言います。もちろん二人は断ります。オオカミは怒って思いきり息を吹き掛けました。しかし、木で作られた家はびくともしません。ホッとため息を吐く長男と次男。しかし、その次の瞬間、今度は体当たりをしてきたオオカミによって木の家はバラバラに吹き飛んでしまいました。慌てて二匹は逃げ出します」


「体当たりできるなら初めからやれよって感じだよね」


 そもそも家壊す意味ないですもんね。

 扉壊せばいいだけですし。


「逃げる二匹。向かった先は末っ子の作るレンガの家でした。慌てた様子の兄達から話を聞き、末っ子は自分の家なら大丈夫と二人を匿います。そんな末っ子のレンガの家に向かってオオカミは息を吹き掛け、体当たりをしますがレンガの家はびくともしません」


「だから、どうして体当たりがあるのにまず息を吹き掛けるのさ。木が無理だったんだからレンガなんて絶対無理だって分かるよね?」


「家に息を吹き掛けるフェチの持ち主だったんですよきっと。渾身の体当たりでもびくともしないレンガの家。オオカミは怒り狂い『だったらえんとつから中に入ってやる!』と叫びます」


「なぜ言っちゃうのか」


「それを聞いた末っ子はえんとつに通じる暖炉に熱湯の入った鍋を用意します」


「想像はしてたけど想像以上に末っ子のやることがえげつない」


「勢いよくえんとつから飛び込んだオオカミ。待ち受ける鍋の中で熱湯に茹でられて死んでしまいました。こぶた達は皆大喜び。美味しくオオカミを食べましたとさ。めでたしめでたし」


「食べるの!?」


「ちなみに今日の夕飯はトンカツです。これが食物連鎖って奴ですね。ドヤァ」


「うまくないからね!?」

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