亜人の国の女王
ボロボロの船がユラユラと大海原を走っている。
そこには数名の乗員と一人の騎士が船酔いでぐでっていた。
「あー疲れた。うええええ....」
「フランさんもう直ぐ着きやすよ、それまで我慢してくだせえ」
「早く会いたい」
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その頃、亜人の国では...........。
「ゲル王!大変です」
「どうしたのだ!?」
王が住む宮殿では緊急事態が起こっていた。
「姫様の病が酷くなっております!」
「す、過ぐに医者を呼べ!そしてルナとフランもだ」
「はっ!!!」
王のゲル王は亜人の国の現国王であり龍の亜人だそうだ。
それにルナやフランを育てたのも王だと聞いた。
とても優しいとルナは言っていたが俺は大丈夫なのだろうか。
少し心配と緊張で迎えの馬車が来るまで俺はずっとソワソワと慌てていた。
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよマコト様」
「でも国王だぞ?下手をしたら即切腹とかありそうで怖いんだよ」
「せっぷく?なんですかそれ?」
どうやらルナは切腹を知らないようだ。
俺はルナの耳元で囁いた。
するとルナの顔色が悪くなっているのがわかった。
「なななな!?なんて恐ろしいことをしているのですか!?マコト様はもしかして東の国の出身ですか?」
「まあ、そそそうだな」
行ったことはないが東の国は重度の鎖国状態らしく情報があまりにもないが江戸時代の日本に近いといえばわかるだろうか。
街には桜のような桃色の木がたくさんあり、刀を持って戦うらしい。
いつか行って見たいものだが。
すると馬車が用意出来たと知らせが入った。
俺はいつもの鎧を着て準備満タンだ。
ちなみに石化した鎧はルナが魔術師に頼んで石化を解除して貰ったらしくピカピカの新品だった。
「行きましょうマコト様」
ルナも騎士の格好をしてとてもカッコよかった。
しかしルナの鎧はどうやらスピードを重視したのだろう、装甲には軽い金属を使い武器もナイフと暗殺者のようだった。
そうして俺達は王が住む宮殿に向かった。
しかし道中でルナがいきなり馬車止め、俺は何事かと窓から顔を出す。
するとそこには豚のようなやつとワニのようなやつがナイフを持って子ども達を脅しているのが見えた。
ルナは近寄って行き声をかけている。
しばらくは様子を見ていようか。
「何をしているのですか!」
「兄貴なんだこのガキは」
「知らねえ。でも騎士の真似事か?」
「真似事ではなく正真正銘の騎士です。それ以上子ども達に危害を加えるのなら武力行使を行いますよ」
ルナが言い放った言葉が犯罪者共には腹が立ったのだろう。
するとワニの方がナイフを振り被る。
バン!!!
「いでええ!!腕があ!!」
ルナに当たる直前に腕を撃ち抜かれ涙目になる。正直なところ亜人の中には硬い皮を持つものもいるので銃弾が通るか心配だったがどうやら問題なさそうだった。
しかし今ので相手も本気になっただろう。
「兄貴腕が!」
「いでええ、いでええ!」
俺は馬車から降りて豚の方の首を掴む。
「お前らこっちは忙しいんだ!ここから消えないのなら俺が消すぞ?」
「ひっ!?」
俺は睨むと同時に威圧感を発生させ相手は怯えている。
いやもうなんか死にそうな顔をしてた。
「マコト様怖いです〜」
「なんでお前も怖がってんだよ!?」
「ご、ごめんなさい!!」
「すみませんでした!!」
どうやら相手も退散してくれた。
しかし亜人の国も人間の国も変わらないのだなと学んだ。
そして宮殿に着くとさすがだなと言わんばかりにでかかった。
あたりにプールが二三個程あり庭はもはや森のように木が生えている。
「ようこそおいでくださいました。ルナ様、マコト様」
ルナが王様に俺のことを話しているのか名前がバレていた。
まあ、知っているのなら話が早い。
俺とルナは宮殿の中に案内され一つの大広場に着く。
そこには王が座っていたが俺達のことに気づくと椅子から立ち駆け寄ってくる。
「ゲル王殿下、ルナ様とマコト様が居らっしゃいました」
「ああ、よくぞ来てくれた!急用ですまぬな」
「いえいえそんな、ゲル様に私達は救われた身ですので」
「それは嬉しい限りだが今日は娘の病が悪化しておってな」
「それは大変じゃないですか!?」
「ああ、フラン殿は居らぬのか?」
「直ぐに来るかと」
「そうか......この国の医学では娘は助けられぬ」
王様は少し俯き暗い顔になる。
この世界には魔法があるのだ、しかしそれでも治せないとなると普通の人では手が出せないだろう。
だが俺のスキルであれば話は別だ。
なんせ無差別に相手の能力や状態を無効化してしまうのだから。
「王様....!」
「今来た!」
俺がそう名乗り出ようとすると後ろからまた聞き覚えのある声がした。
そうフランが息を切らしながらそこに立っていた。
「おお!フラン殿!」
「直ぐに治療する」
そして王は娘の寝ている寝室に案内するとフランが状態を確認する。
布団をめくるとそこにはまるで蛇のような鱗を纏い、目が黒い布で覆いかぶさった少女が息を荒く息を切らしていた。
「お、お父様......」
「熱が高い」
「おお、娘よすまぬな。お前を龍ではなく蛇として産んでしまい」
「いえお父様や皆様の迷惑ばかりで私は、ごほっごほ!」
ルナから予め聞いていたが王に娘がいるのは非公式と言うかあまり顔を出すような存在ではなかったそうだ。
なんせ代々龍の血を引く者なのに龍のなりそこないと言った蛇の種類なのだ。
しかも龍には属性に対する抗体があるが蛇は貧弱で弱々しいらしく人間でいう弱者と言うやつだ。
しかし少女を見ていると体から黒いもやのような霧のようなものがうようよしているのだ。
「我は吸血鬼の血を引く者、彼の者を癒しあらゆる病を治しなさい」
フランは腕を少しナイフで切ると血が一滴少女の体に垂れ体に浸透していく。
しかし熱は下がらず何も変化が起きなかった。
「なんで......」
「フラン殿どうなのだ」
「おかしいですよ、フランの固有スキルが効いていません」
どうやらフランのスキルは状態異常を取り除く部類だろう。しかしこの黒い霧は呪いが掛けられているはずだ。
何故ってあのアビゲイルの魔術の使用直後に発生する霧によく似ているからだ。
それならばフランのスキルが効かないのも納得だろう。
「フラン少しどいてくれ」
「マコト?」
俺は黒い霧が一番濃い目元に手を触れる。
「そなた何を?」
「太陽よ我が意志に応えよ」
これで治らねければ俺は切腹だが大丈夫のようだ。
息が正常に戻り熱が引いた。
俺は少女の目隠しを取り様子を伺う。
「すごい、治ってる」
「う....うう......」
どうやら長い間目を隠していたらしくちゃんと周りが見えていなかった。
しかし何故目隠しをしていたのだろうか.....。
そして俺はルナの方を向くと王とルナは驚いていた。
「ま、マコト様何をしたんですか!?」
「そなた娘の病と石化の目も治したのか!?」
「ああ俺のスキルは対象の能力と言うものを無効化するので」
そう言うとあたりが驚きにより沈黙の空気が流れる。
少しやり過ぎたようだ。
「あれ?目が見えています......それに石化もしない」
「だ、大事件だ!?皆を集めよ!!」
そうして俺は王の娘を助けた英雄として亜人の国に知れ渡ってしまった。
皆様、今回はどうだったでしょうか。面白かったと思えたら嬉しいです。
少し焦って書いてしまいましたので誤字があるかも知れませんがその場合は報告してもらえば嬉しいです。
そして少しラブコメの方を進めようと思いますので投稿が遅れてしまいます。ご了承ください。