亜人の国
「よーしいいぞ!引き上げろ!!」
大きな海にポツンと浮かぶ漁獲船が仕掛けた罠を回収する。すると深い海の奥から黒い大きな影が現れた。
「おーい!!なんか大きなものが引っかかっているぞ!!」
「な、なんだこれ!?」
それは騎士の鎧を着た石像だった。船員の中には驚いている者もいれば興味を持ってつんつんとつつく者もいた。そして船長らしき亜人の男が現れる。
「どうした!リヴァイアサンでも引き上げたか?」
「船長それはみんな死んでしまいやすよ」
「ヌハハハハハハハ!!そうだな、どれどれ.....ん?」
船長は石像をまじまじと観察してる。するとあることを気づいた。
「おい!お前ら!!こりゃあ、騎士様に見せた方がええかもしれん」
「どうかしたんですかい船長?」
「わからんのか?この石像が持ってるお守りが」
「お守り......あ!この絵柄はこの間崩壊した王都のものじゃねえですかい」
「ああ、こりゃ人間だ」
その言葉に船員は皆驚いていた。しかし船長は直ぐに船を引き上げ亜人の国にその石像を運んだ。
「お前ら!!!一旦戻るぞ!!」
「「おう!!!」」
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亜人の国
「ああ、なんだこれ?俺は死んだのか」
俺は目が覚めると綺麗なベットの上に寝かされていた。
あたりには見たこともないような家具や微かな動物の匂いがした。
すると俺は涙が流れる。
「なんでだ?急に涙が止まんねえ、それに記憶が無い」
窓を開けると太陽の明かりが部屋を照らし朝の爽やかさを感じさせる。
「痛え、体が石みたいに重い。しっかしここはどこだ?」
起き上がるが体が重くまともに歩けない。
すると手前のドアが開き人が入ってきた。そいつは鎧を着て銀色の仮面をつけていた。
「起きましたか............マコト様」
その声には聞き覚えがあった。
すると仮面を取ると紅に染まる赤眼が俺を見つめる。
なんだろうか。初めて会った気がしない。
「誰だ?それになんで俺の名を?」
「もう忘れてしまいましたか?私はルナですよ。あなたに助けてもらったルナです」
「ルナ?そんなこれくらいの可愛い女の子だぞ?」
「えへへ、それは何よりです」
どうやら嘘はついていないらしい。
それにしてもたった半年でここまで変わる者なのか。
前は10も満たない歳の女の子だったのに今じゃ中学三年生くらいだ。
「私だってわかりましたかマコト様?」
「ああ、その装甲はお前だな」
「装甲?.....はっ!?な、何を言っているのですかマコト様は!」
ルナは自分の胸をスカスカと悲しい音させながら怒っていた。
すると俺はまた涙がこぼれ落ちる。
「え、マコト様?」
「すまない何故か涙が出ちゃうんだ」
するとルナは俺を暖かく抱きしめる。
その温もりがとても俺の心を癒してくれた。
「辛かったんですねマコト様。でも大丈夫です、今度からは私がいます」
「ありがとう......ありがとう......ありがとう」
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その後、俺は着替えてルナに連れていかれるままついて行く。
外にはたくさんのお店や多種多様な亜人達が賑やかに暮らしていた。
また人間の姿があった。さすがは魔王軍が手に入れられない国の一つと言えるだろう。
「どこへ行くんだ?」
「昼ご飯でも食べましょう。マコト様は三日間も寝てましたから」
「そんなに寝てたのか......そう言えばフランは?」
フランはルナの双子の妹だ。いつも無表情なのがまたいいところでもある。
「今海賊船と戦っています。しかし直ぐに戻って来ると思いますよ」
「海賊船!?まあいいか.....そう言えばお前らって騎士になったのか?」
「はい、マコト様がいなくなってからこの国の王が私達を拾ってくださいました」
すると繁華街を超え少ししたところに小さなレストランのようなものがあった。
ルナはドアを開け俺を席に案内する。
「いらっしゃい、ルナちゃん今日は彼氏でも連れてきたのかい?」
店の店主だろうか、筋肉質でいかにも料理人のようなおっさんが出てきた。
「ななななな、なんわけないじゃないですか!?いつもランチを二人前で」
「ガハハハハハハ!兄ちゃんどこから来たんだ?」
「あっ!その質問は!」
俺は親父さんの質問を聞いた途端目の前が真っ暗になり悪夢が流れる。
それはアリスがあの恐ろしい怪物に殺される瞬間が......。
「マコト様大丈夫ですか!?」
俺は汗だくになり息が荒くなる。
何故だ、俺は何故ここにいる?俺は負けた?
それしか頭の中で考えられなかった。
「ヨウサイ......」
少しずつ記憶が戻って来る。
俺は魔王軍幹部の任務で王都ヨウサイに居たはずだった。
それなのに何故ここにいる。
「マコト様やっぱり巻き込まれていたのですか.....」
「どういうことだ?」
「実は二日前程に王都ヨウサイは崩壊しました。それと同時にヨウサイは黒い霧に覆われて生存者すら探せない状況です」
「俺は何故........」
ルナの話を聞いた途端全ての記憶が戻って来る。
それは悪夢でもなんでもない現実が。
「負けた.....」
「へ?」
この話をすればルナやフランが危険な目に合うのは避けられない。
そんな気がして俺は何も言えず黙りこくる。
「マコト様、私も騎士の端くれです。ですから覚えていることを教えてください」
「言えない.......」
「そんな.....今生存確認ができているのはマコト様だけなんです」
「言えない」
「.......わかりました。マコト様がそこまで言うのなら」
ルナは少しため息を吐くが直ぐに笑顔を見せる。
しかし情報が少なさ過ぎてあちら(王都ヨウサイ)の状況が読めない。
もし俺が戻ってまたあの怪物に見つかれば次は確実に殺される。
「お二人とも出来たぞ」
店主が料理を運んでくる。
それはハンバーグ定食だろうかとても美味しそうだった。
「マコト様食べましょう!」
「ああ、いただきます」
久しぶりに食べたご飯は甘くそしてとても美味しかった。
そう言えば魔王軍幹部になってからまともに食事したのがあまりなかったな。
俺は今はとりあえず目の前にあることをしようと決意した。
今回は戦闘がないですがご了承ください。
そして今回はどうだったでしょうか?面白かったと思ってくださると嬉しいです。
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