罪を統一する者アビゲイル
俺は人集りをかき分け様子を伺うとそこには数人の男達が何か取り囲んでいた。
すると一人の男がこう言った。
「魔女だ!!魔女を捕まえたぞ!!」
「誰か勇者か騎士を呼んできてくれ!」
男の手には縄が握られその先には金髪碧眼の少女が泣きながら押さえつけられていた。
しかし俺は違うことで驚いたてしまう。その少女は恐ろしいほどの魔力が感じられたのだ。
その量はもはや魔王どころじゃなかった。
これ以上関わると面倒なことになりかねないと思い、俺はその場を離れる。
「騎士様を連れてきたぞー!」
「魔女はどこだ、今すぐに処刑だ」
その騎士が持っていたのは大ぶりの刃がついた断頭用の包丁だった。
それを見ると少女は泣き出す。
「いや、いや!!」
「黙れこの魔女が!お前らのせいで何人の人が死んだと思っている!!」
「違う!私やってない!!」
「ええい、黙れ!」
そう言って騎士は首切り包丁を振り上げる。
周りの民衆は皆目をつぶり、子ども達は家の中に入れられる。
誰も助けはせずただ見て見ぬふりをしている。
俺はいてもたっても居られなかった。
「待て!!」
俺の声は虚しくも騎士には届いていない。
揉め事は面倒だがこのまま無実の子どもが殺されるよりマシだ。
「銃撃戦闘術第1式改、神速突撃!!」
超高速で銃剣を飛ばすため一本しか召喚できないが銃声もなく人間の目では銃の形すら確認することができないだろう。
そして今の技が首切り包丁を粉々に打ち砕いたお陰で少女は無事だった。
「辞めろ、そんな子どもを殺してどうする」
「何者だ貴様あ!!!」
こいつすごいモブ感するなと思ったら喋ることまでモブかよ。
しかし相手は腐っても騎士だ。人よりは強いことは明確だ。少し警戒心を高めておく。
「ただの冒険者だ」
「冒険者風情が俺の相棒を粉々に出来るわけがないだろ」
話にならなかったのでお互い戦闘体制に入ってしまった。面倒事になってしまった以上俺が責任を持って片ずける。
「銃撃接近戦闘術第24式 二双の刃」
銃剣を構えると騎士は腰につけていた剣を抜く。すると周りにいた野次馬が履けるように散って行く。
しかし奥からやってきた騎士の一言で戦闘は終わった。
「待てこの脳筋騎士!」
「す、すみません隊長」
その騎士は珍しいことに甲冑を着ていなかった。
だがその姿を見て俺は驚いてしまう。
それはハクにそっくりなのだ。姉妹と言われても驚かない程だ。
しかもその騎士はハクと同じ犬系の亜人だった。
「すみませんでした、このアホは私が怒っておきますのでどうぞ気にしないでください」
「あ、アリスさんか?」
「アリス?アリス!そなたアリスと言ったな!」
俺は口にチャックをかける。
やばい。何故俺は簡単に魔王軍幹部の名前を言っているんだ!?はたから見たらやばいやつじゃねえか!
「そなたは私の妹を知っているのか?」
「妹?」
「そうだね。ここでは何かとまずい、場所を変えよう。ついて来るといい」
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そして俺は強引にハク似の騎士に連れて行かれ謎の喫茶店でお茶を飲んでいた。
何故か助けた少女は俺の後ろにくっつてはなれようとしない。しかし今はこの騎士から逃げるのが先だ。
「すまない、私の名はアリス・クーク。そして妹の名はアリス・クラーク。聞き覚えはあるかい?」
「いや多分人違いだ。アリスと言ってもこの世にいくらでもいる」
「そうか....その子はかわいいかわいい犬の耳を持った白髪の女の子かい?」
「えーと......」
「その反応だと当たっているようだね」
うんめっちゃ当たってる、なんて言えるはずがない。
なんせこっちは人殺しの任務を承りしかも魔王軍幹部が二人もいるとなると街中は大混乱になるだろう。それだけではない。俺の顔もバレてオマケにハクの顔もバレるのだ。
暗殺者の顔がバレるのは死亡フラグに近い。
それだけはどうにか避けなければ。
「そこまで頑なに言わないなら単刀直入に言おう。妹が魔王軍幹部をやっていることは知っているよ」
「は!?」
「それに君もだろ?」
「え.......逃げます!」
「あっ!ま、まてぇぇえええ!!!」
俺は助けた少女を小脇に全速力で走りハクのいる孤児園まで着いた。
ドアをノックするとアリスが出てきたが、謎の少女を持った俺が息を切らして倒れ伏しているのを見て驚いていた。
事情を説明して訳を話すと滅茶苦茶怒られた。
今にも爆発するんじゃないかってくらい怒っていた。
「いいですかアカツキさん!!もし騎士に捕まってしまったらどうなっていたかわかっているんですか!!一応外に出てもいいですが遠くに行くのも加減をしてください!!だいたいどうするんですかこのかわいい女の子は!!」
なんか最後だけ褒めてるのか怒っているのかわからなくなってきたが取り敢えず今は反省以外にない。
俺はこの歳になってまで廊下で正座をしなくてはいけないとは思っても見なかった。
しかしそんな泣きそうな俺を助けた少女は元気づけようと頭を撫でてくれた。
いい子や!!俺、泣きそうだよ......。
そうしていると助けた少女が話し出す。
「あ、あの.....」
「う、ううん?」
「助けてくれてありがとう。私......アビゲイル」
どうやら謎の少女はアビゲイルと言うらしい。
しかしどっかで聞いた事のある名前だが記憶にない。
「え、えっとあなたの.....お名前......」
「俺か?俺はアカツキまっ....アカツキです」
「アカツキ......お兄ちゃんでいい?」
「構わない。それでアビゲイルはどこに住んでるんだ?送ってくくから場所を教えてくれ」
「ない」
ないと言って首を横に振るアビゲイルだったがどう見たって服はちゃんとしているし痩せている訳でもない。
なので家がないわけがないのだが。
俺が困り果てているとアリスが優しく話しかけていた。
「ねえ、アビゲイルちゃんお家はほんとにないの?」
「む.....」
「なんならこの孤児園に好きなだけいてもいいけど....」
「あなた嫌い!」
「え!?なんでえ....」
「だってさっきお兄ちゃんにすごい怒ってた」
アリスの顔が今にも死にそうになっていた。
そりゃ子ども好きのハクにとっては死ぬほど辛いことだろう。
そんな様子を見ている内に俺はなんだか笑えて来る。
「ぷす!ふふふ.......」
「な、なななに笑っているのですかアカツキさん!!」
「いや、アリスは怒っていても綺麗だなと思ってな」
「.......」
アリスの顔が段々赤くなっていきやがて俯いてしまう。
「あ!アリス先生照れてる!」
「やっぱり先生の旦那さんなの?」
「いいな〜いいな〜」
子ども達は俯いたアリスを無邪気な笑顔で追い込んでいった。
「はううううううアカツキさーーーーーん!!!!」
「すみませんでした!!!」
その後、俺は二度目の説教を受け精神がボロボロだったので気を紛らわすために近くの海で魚を釣っていた。
「お兄ちゃん大丈夫?」
「ああ、でも今日は疲れたんだ。てかなんでついて来たんだ?」
「えっとお兄ちゃんは私の魔力のこと気づいても助けてくれたから」
「あの膨大な魔力のことか.....」
「うん、私は産まれた時から変な子だったの。おでこに変な痣があったり急に物が壊れたりしたからそれでみんな魔女って.....でも私じゃないの!」
「どういうことだ?」
「私じゃない私がいるの!いつもそいつが夢で言うの.....殺せって」
「そうか、なら俺と同じだなアビゲイルは」
「え?お兄ちゃんもそうなの?」
「ああそうだよ。でも安心しろ、俺とアリスは絶対にお前を怖がったりしないぞ」
「う.....うん、ありがとうお兄ちゃん」
アビゲイルは相当耐えていたのだろう。しかしそれも限界に達したらしく涙がこぼれ落ちる。
それを慰めるために頭を撫でてやる。
そりゃ辛いだろう。なんせ産まれて直ぐに親に捨てられそして街の人にも魔女と呼ばれてたんだ。
「おっ!ほらアビゲイルなんか釣れたぞ!」
その後、俺は大量に釣った魚を持って帰るともうアリスは怒っていなかった。
みんなで食べる料理は最高だったし何よりぐっすり寝られた。
次の日は孤児園に子ども達とアビゲイルにお別れを言って任務の準備をする。
少しでも安全にするためだ。そこで俺はターゲットであるアルデバランの自宅や姿を確認し絶好の狙撃ポイントを見つける。
しかしアルデバランと言う男はかなり用心深く自分の部屋に召使いを入れたことがないそうだ。まあ、暗殺には関係ないことだがな。
そして当日を迎える。
こんにちはこんばんはどうも皆さん永久光です!!!久しぶりの投稿でストーリーを忘れてしまった人もいるかと思いますがそこはご了承ください。なんせ当の本人も少し内容があやふやだったのですから笑。
でもこれからまた始ますので次回もお楽しみに!!