悪は悪を討つ③
そして始まってしまったこの模擬戦は想像を絶するものだった。
ルールは至って簡単、相手に一撃を当てた方が勝ちだ。一撃を当てると言っても直前で魔道具が発動し防がれる仕組みだ。
しかし迷彩身体や銃を持っている俺が優位に見えると思うがそうでもない。
俺の銃は木々に阻まれ先程も何発か発砲してみたがハクの刀で真っ二つだ。
本当にあいつの刀は速すぎる。
今絶賛ハクから逃げている最中である。
「逃がしません!!!雷刀戦闘術四番、雷鳴突き!!」
俺の後ろにいたハクが経った三秒程で右側に現れる。そして雷を帯びた刀が高速で突きを繰り出す。
俺は迷彩身体を上手く使い全て回避する。
しかしこのままでは殺られるのも時間の問題だ。
そして俺は最も霧の濃い場所に向かって走り出す。
「いつまで逃げる気ですか!ちゃんと戦ってください!!」
俺はハクの見えていないところで首を横に振っていた。まあ、見えていないのだがな。
そして少しして俺のいる場所にハクが走ってくる。この霧の濃い場所でここまで追尾できるとなると匂いで追いかけているに違いない。
しかしそれもここまでだ。
俺は火薬を少し取り出し地面に撒いていく。
これで鼻は使えないので俺はそのうちに高台へと急ぐ。
「ハクにはあまり能力を使いたくはない。だからここから狙って終わりにしてやる」
俺の能力を使えばハクの刀は通らないし攻撃も可能だろう。しかし彼女を傷つけては俺のプライドが許さない。
そうして俺は高台に登るとM82A1を構える。
しかし一発でも外せばおそらく能力を使わなければならないだろう。なんせ銃声で位置はバレるし、ハクの移動速度を考えておそらくこれが最後のチャンスだ。
そして呼吸マスターを発動させ精密度を格段にあげる。
俺はスコープを除きハクの頭を狙う。
ハク鼻が効かない上、霧が濃いので周りの広がっている場所に出ていた。
ここが絶対に外せない勝負だ。
俺は再度集中して息を大きく吸い込み止める。
そしてハクの頭を狙い撃つ。
「これで終わりだ」
バーン!!!!
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あれから一時間以上経過していた。
俺は気絶したハクを膝に乗せて寝かしつけていた。
「俺も疲れた。でもハクには勝てたし問題はないか」
俺の放った銃弾はハクの頭を綺麗にぶち抜くところだったが魔道具が発動してギリギリのところで弾かれていた。
しかし当たった衝撃は物凄かったらしく今現在ハクは気を失っている。
一応のためソフィアさんに連絡をしたところ直ぐに向かうと言っていた。
俺はハクが起きるまで周りの見張りをしていた。
「う、うう......................」
「お!起きた起きた」
「えっと何がどうなって.........」
起きたハクに状況を説明したところ思い出したようで少しほっとした。
すると森の奥から救急箱を持ったソフィアさんが現れた。
「アリス、上手くやられたな」
「いや〜、高台から狙撃は卑怯ですよ。でもいい経験です」
「それでこれはどういう状況かな」
どういう状況かと言うと真っ黒な鎧を着た俺の膝にハクが寝ていると言うよくわからん状況だった。
そしてハクは俺に膝枕されているのに今気づいたようで飛び起きる。
その顔は赤面して俯いていた。
「すみませんアカツキさん、気づいていなくて」
「俺は構わない。それよりアリス様の方が心配だ」
「私はもう大丈夫です。それよりお昼ですのでそろそろ戻りますしょう」
「了解した」
「あとそれからアカツキさん、お昼を終えたら私の部屋に来てください。一応鍵も渡して起きます」
そしてハクから小さな鍵を受け取るとその光景を見ていたソフィアさんが何故かニヤニヤしていた。
「アリスもついに男に興味を持ってくれたか」
「ち、違いますよ!ただ私と一緒に仕事をする以上約束事やルールの話をするだけです!」
「大丈夫だ。私も今度から部屋に入る時にはちゃんと中の状況を覗いてから入るから安心しろ」
「なんの話をしているのですか!?それでは私が悪者ですにょ!?」
ハクは盛大に噛んでしまった。これ以上はハクが怒ってしまいそうだったので俺が話題を変えて魔王城まで戻った。
そして俺は昼を済ませ、ハクの部屋に訪れる。
すると女の子の部屋なんて初めてなので少し緊張した。
俺は頭の中を空っぽにして別に怪しいいことではないと言い聞かせる。
やべえまじで緊張してきたよ。
そして俺はドアを叩くとハクが「どうぞー」と言ってくれた。
ドアを開け部屋に入ると花のようないい香りがした。
「来てくれてありがとうございます」
そう言ってハクはドアを閉める。
「まずはそこのベットにでも座ってください」
そう言われて俺はベットに腰掛ける。
そしてハクは椅子を持って来て俺の前に座った。
「あのアリス様?」
「アカツキさんは私よりも強いんですから私のこともアリスで構いません。そして今回呼んだのは少し私がアカツキさんとお話したかっただけでして」
「そうなのか、それで俺に話とは?」
「実は相談がありまして」
「相談........ですか」
アリスの表情が歪む。
「アカツキさんは私のことをどう思いますか?怖いですか?」
難しい質問だった。恋愛シュミレーションゲームなら最難関の部類に入るのではないだろうか。この問の答えはふたつだ。怖いと言うか別のことを言うかだ。
そして絞り出した答えはこれだった。
「可愛いと思う」
「かかかかか、可愛い!?」
「え?なんか変なこと言いました?」
「いえ、そんな回答が返って来るなんて思ってもいなくて」
その時ハクは少し嬉しいそうにしていた。しかし等の俺は気づいていない。
「でも何故そんな質問を?」
「なんかアカツキさんの匂いが懐かしくて、それでいて..........」
ポタ、ポタポタ...............。
ハクは泣いていた。
俺は驚いたがそれよりも虚しい気持ちになった。
「私は人間を恨んでいました。そんな私をある人が助けてくれたんんです。その人は優しくて私を守ってくれました、それに......」
それは多分俺のことだろう。そしてハクは話続けた。俺との楽しかった思い出を。熱く熱く語ってくれた。
終わる頃にはもう夕方だった。
「そして私はあの人のことが好きであの人の前では普通の女の子でいたかったんです。それなのに私は取り返しがつかないことをしてしまったのです。あの時に私が焦らず冷静にあの人に話していればあの人は死んでいなかったんです。なのに、なのに!!」
俺はハクの頭を撫でる。
柔らかい耳がもふもふとしている。
するとハクはキョトンとした顔をしていた。
そして少しして大粒の涙がこぼれ落ちる。
多分、相当辛かったのだろう。だって俺も辛かったのだから。
「マコトさん.......ごめんなさい、ごめんなさい」
「ああ、大丈夫だよハク。俺は怒ってないしお前を恨んでもないかな」
俺は顔の鉄甲を外し顔を見せる。
もうバレたっていい。ハクが傷つく姿はもう見たくないから
「へ?マコト.........さん?」
「ハクごめんな、俺がお前のこと理解してなくてお前を苦しめてばっかりで、今度は絶対に守るから」
「生きていて嬉しいです........大好きですマコトさん」
そう言ってハクは目を閉じると眠ってしまった。
こんにちはこんばんはどうも皆様、永久光です。今回はどうだったでしょうか?自分的には心がほっとしてとても書き心地がよかったです。気が向いたら感想と評価をしてくださるととても嬉しいです!!
次回もお楽しみに!!