旅する者
コレア村は、ジェラーリ森林につくられたエルフが住む村である。
今日のコレア村の朝は早かった。何故ならこの村の特産品物である赤ジンニンは早朝に収穫しないと味と色が落ちてしまうからだ。
太陽が顔を見せ始めた頃にそれはやって来た。それに触れた物は音も立てずに腐れ果てる。
それは、8メートル近くの赤紫色の体をしていて、4足歩行のトカゲのような生物は、その体と同じ色の毒々しい体液を撒き散らしながら足音1つ立てずに近づいて来る。
それが止まると何かを吐く動作をし始めた。
コレア村の特産品物である赤ジンニンを収穫するために、朝早くから起きて準備していた村人達は、近づいて来るそれに気づいた。
「あれはなんだ!魔物か!」
「雇っている冒険者を早く起こせ!」
「警報の魔道具を鳴らせ!」
「私の子供がいない!」
「あの姿まさか……」
「八大災害の腐蝕のヴァルデェッグ…」
「八大災害だとォ!?皆ァ!寝ている奴を叩き起こして逃げるぞォ!」
「何か吐こうとし…………!」
しかし、もう遅かった、
音もなく発射されたブレスでそこにいた生物や物が腐り果てていく。
「…………ッ!」
「…………ァ!」
すぐ近くの山で声も出せずに腐っていく村の人々を見ていた少年と少女がいた。
そこにいた、少年はその村にいた友人や家族の名前を叫び、少女は恐怖して泣き叫んだ筈だが、声は出なかった。
二人ともヴァルデェッグの姿に恐怖して体が動かない。
ヴァルデェッグは、ナニカを貪ってから、足元から出た魔法陣とともに姿を消した。
そして、霧が晴れてから彼らは、急いで山を下っていった。
村には腐り果てた人型のナニカと瓦礫しかなかった。
彼らは、自分の家へと涙を流しながら向かった。
家があった場所に着いた彼らは家にいた筈の弟を探すため、無属性魔法で瓦礫をどけていく。
しかし、瓦礫をどけてあったものは、グチャグチャになって腐っているナニカだった。