7話:2属性魔法
俺達は、片付けも終わりダンジョン都市アベネに向けて歩き出した。すると突然、フェルが……
『前方から10匹ぐらいのゴブリンの集団がこちらに向かって来ます』
指差す方向を見たが、現代っ子の俺の視力は伊達じゃない、目を細めても俺には点にしか見えない。
『ベルなに変な顔してるのよ。フェルの目は特別で遠くまで見えるのよ。ちなみに私は鼻が特別でね、物凄いのよ!』っと、聞いても無いのにルーシーは無い胸を張って自慢し初めた。
『ベルさん、ここで迎え撃つので危ないので少し離れて下さい』
そう言ってルーシーとフェルが俺の前に出て行った。美少女に守られて嬉しいのか?悲しいのか?なんだか涙が出そうになる…が…
「えっ?あんな遠くの敵までわざわざ相手にするのか?」
『ハイ。ゴブリンやオークみたいに集団で獲物を狩るモンスターは知能が高く、私達でもベルさんを庇いながら10匹のゴブリンを相手に無傷で勝つのは厳しいです。そんな敵をそのまま放置して後で挟み撃ちや不意討ちをされたら、ベルさんは確実に助かりませんが、宜しいですか?』
『そうよ、私とフェルだけなら何とかなるし最悪、私達だけ飛んで逃げればいいしね!ベルのいた世界とこの世界は違ってて、油断したらすぐ殺られる世界なのよ、弱いモノは命懸けで戦わないと生き残れない弱肉強食の世界なのよ』
ルーシーとフェルは恐ろしい事を笑顔で俺にサラッと語ったが、言ってる事は間違いなく正論だった。
『フェルあれやるわよ』
『うん。お姉ちゃん』
二人は腕を肩から水平に伸ばして、ルーシーは左手をフェルは右手を恋人繋ぎの様に指を絡ませ手を繋いで何やら2人して詠唱し始めた。
『燃え上がる炎よ 我の声に応え 我が敵を焼け』
『燃え上がる炎よ 我の声に応え 我が敵を焼け』
『『【ファイヤーボール】』』
ルーシーとフェルの前方中央に1㍍ぐらいの大きな火の玉が現れた。それをフェルが左手から半透明の布の様なモノを出して火の玉を包み50㌢ぐらまで圧縮していった。
『巻き起こる風よ 我の声に応え 我が望みを叶えよ』
『巻き起こる風よ 我の声に応え 我が望みを叶えよ』
『『【ハイドロゲン】』』
フェルが半透明な布のようなモノで50㌢に圧縮された火の玉の回りに、複数の方向から風を集め固め出来上がったモノをルーシーが右手を掲げて魔力を込めてゴブリンの集団に向け放った。
『『エクスプロージョン』』
ドゴオォォォ―――――――――――――ン
ゴブリンの集団に見事命中。大爆発を起こして直径15㍍ぐらいの大きなクレーターが地面を抉り取った。周囲には緑色の肉片と紫色の血が飛び散って俺は驚きのあまり声も出なかった。
『ベル見た?今のが2属性魔法の爆発よ。凄いでしょ?ねぇ凄いでしょ?』
『ベルさん私達のスキルで2重詠唱の効果です。詠唱を2回、行う事で威力が3倍になるスキルです。私達は魔力融合のおかげで二人で一回づつ詠唱すれば2回詠唱した事になります。』
「炎を包んだり、最後に飛ばしたり、したのもスキル?」
『あれは、魔力操作の一部でスキルじゃないです。魔力操作は、走るのと同じでこの世界の人なら誰にでも出来ます。短距離が得意な人、長距離が得意な人、見たいに私は魔力を圧縮するのが得意で、お姉ちゃんは魔力を放出するのが得意なんですよ』
フェルが分かりやすく丁寧に説明をしてくれたのでフェルだけ、ヨシヨシっと誉めたら耳まで真っ赤にして照れてくれた。
『えーまたフェルだけ誉めてズルい、ズルい』っと俺の背中をルーシーがポカポカっと叩いてきた。二人とも可愛らしいが、これが女難の相でいいのか?
俺は、そんな疑問を思いながら……俺達はアベネに向けて歩き出して数時間、日が沈む前にようやくダンジョン都市アベネに到着した。街の前には立派な城壁がそびえ立ち城門に入る人達、数人が検問に並んでいた。どうやらギルドカードを持って無い者は、入国税が1人銀貨5枚かかるそうだ。
「あの……ルーシーさん・フェルさんギルドカードか銀貨、持って無いですよね?!」 俺は念のために恐る恐る聞いてみた。
『ハ~~ァ?天使の私達が、そんなの持ってる訳無いじゃないのよ』 幻覚魔法で翼を消したルーシーが、悪びれる素振りも見せずに自信満々で答えた。
「ですよね~。」 うん。知ってた!ギルドカードどころか1Gさえ持って無かった。只でさえ金の少ない俺は、これから入国税3人分、宿代3人分、食事代にいたっては、育っ所も無いのにルーシーは俺より食べるから4人分以上かかる。これが女難の相だったのね!
俺は泣く泣く、15000Gを支払ったら警備兵に日付が入った3枚の木札をもらった。入国税一回分で一週間の滞在が許可され、それを過ぎると追加料金が発生する。したがって俺達は一週間以内に、この街を出て行くか、この街に移住するか、何処かのギルドに所属しなければまたお金がかかる。
俺は、悩みながらも取りあえず警備兵にこれから、泊まるオススメ宿を聞いて宿屋を目指した。
城門を抜けて街に入ってすぐの所に警備兵に聞いた宿屋を発見した。二人部屋と一人部屋を一つづつ借りて二部屋で一泊が17000Gなのでこの街で準備と情報収集もかねて6日間、泊まることにして合計で102000G支払って今晩の寝床を確保した俺達は、日が沈む前の茜色に染まる街へと探索に向かう事にした。
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