5話:まさか…ピッ○ロさん?
翌朝……起きると双子の天使は、俺の近くでまだ爆睡していた。悪い夢でも観ているのか?フェルは『お姉…ちゃん…ご…めんね…ごめん…ね…』っと寝言を言いながら、うっすらと涙を流していた。ルーシーは『もう……食べれない…ムャニ…ムャニ……』っと満足顔で大量のヨダレを垂らしていた。
何故こうなったかと言うと……
『堕天使の私達をこれ以上、不幸に出来るもんならやって見なさいよ。べ、べ別に行く場所がない訳じゃ~ないのよ』っとルーシーに無い胸を張って何故かデレられたのだが、威張るのかデレるのかハッキリして欲しいものだ。
フェルには笑顔で『ベルさんこれも、不幸だと素直に諦めて下さい』っと言われた。
「以外に強引だな。俺に断る権利はないのか?」
『有りましたよ。私達に出会う前には』
どうやら山賊と同じシステムでルーシーとフェルに出会った時点で、俺には初めから断る以前に選択する権利さえ無かったみたいだ。
女難の相だと諦めよう……食事代だけで護衛が雇えるなら安いモノかも?
あれ?待てよ、よくよく考えてみればいつ魔物が出て来るか分からない、フィールドで全員が爆睡ってヤバくない?護衛ってどういう意味だっけ?野宿の対策は今後、考えよう。
回想を終えた俺は【異世界収入】から朝食のパンと【水】が入ったコップを人数分、出てルーシーとフェルを起こした。
『ムャニ…ムャニ…に…おに…くは…』
「肉は働いた人にしか上げません。」その言葉に二人とも目を覚ましたのか?
『私に、任せなさい』
『私くしに、お任せ下さい』
二人とも素早くパンを食べて出発の準備をし始めた。『ほら、ほらベル、早く行くわよ』まったく食欲に貪欲な奴らだ。【異世界収入】にコップを片付けて歩き出そうとしたら……
『えっ?まさか、私達に地面を歩けって言うの?』
「えっ?だって俺、空飛べないし」
その言葉にブツブツとつぶやきながらルーシーとフェルが相談し始めた。えっ?待って俺、悪くないよね?天使の常識を勝手に押し付けられても、翼の無い人間には無理だよね?
話し合いが終わったのか?突然ルーシーが俺の右腕に、フェルが左腕にそれぞれ腕組みをされた。右腕には、極めてほんり僅かに軟らかい様なモノが若干、当たる気がするかもしれないが、左腕には当たるどころか柔らかいモノに俺の腕が…う、腕がう、埋もれているだと……冗談じゃない。
『こんなサービス、普段しないんだからね!!』っとルーシーは言ってたが、現時点で俺の全ての全神経・意識は左腕、以外に機能していない。もはや左手腕が俺なのか?俺が左手腕なのか?もはや思考が追い付かない今の俺には、どんな言葉も〘猫の耳に真珠だ〙色んな意味で全く意味がない。
ルーシーは右の翼をフェルは左の翼を、広げ羽ばたかせ15㍍ぐらい上昇してアベネを目指して飛び始めるが俺は、翼を羽ばたく度に、左腕をやさしく包み込む、得も言われぬ甘美な柔らかさを味わうのに精一杯だった。飛ぶこと数時間、森をショートカット出来るから歩くよりもかなり速いが……
「あれ?ルーシーさん高度下がってない?」
『うるさい!気が…散るから…話し掛け…ないでよ…』
現在、高度9㍍ぐらい森の木々がギリギリ俺の足に当たらないぐらいだが、どんどん高度が落ちてる。真っ正面に1本の大きな木が近づいてくるが、ルーシーは右に避けフェルは左に避けた。当然、真ん中で腕組みをされている俺は両腕が塞がっているため顔面で受け止める以外に方法がない……『ドッーン』っと音を立てて俺だけ、木に激しくぶつかった。
『すみません。ベルさん大丈夫ですか?』
『ベル、ごめん。【魔力融合】が上手く出来なかった』
俺の、全神経が左腕に集中していた為か顔面へのダメージは然程、痛くなかった、が……チラッとステータスを確認したらHPが残り2だった、木にぶつかっただけで危なく死にかけた!もはやタンスの角で足の小指をぶつけた程度で即死しそうなHPなのだが…左腕の感覚に比べたらどうということはない。〘※特殊な訓練を受けていますので、絶対にマネしないで下さい。〙
「えっ?魔力融合?何それ?食べ物?」
『私達二人が触れ合う事で、2つの魔力を融合させて魔力・スキル・思考を共有して1つに出来るスキルなのですが、間にベルさん入ったから思考がバラバラで……ご…ごめんなさい』
俺が間に入ったせいで、ルーシーとフェルの思考が噛み合わない状態で、羽ばたくタイミングを無理やり合わせ空を飛ぶことはかなりの負担が、かかり難しかったらしい。
二人は、一生懸命に頑張っていたと言うのに俺は、左腕の得も言われぬ甘美な柔らかさに夢中だった。俺は何だか人として恥ずかしい…
〘ナンダ何ダ〙〘ナニガ落チタ〙〘鳥ガブツカッタカ?〙
森の奥から騒ぎを聞きつけ3つの声が聞こえてきた。なんと声の主は……短く尖った耳・細長い手足・緑の肌………異世界でまさか?
「ピ○コロさん?」
『誰よ、ピッコロ○んって?』
『ベルさんゴブリンです。お姉ちゃんそれ伏せ字の意味なから』
俺たち3人の中で唯一まともなのはフェルだけかも………?
「えっ?ちょっと待って、ゴブリンも俺の言葉が分かるの?」
〘エッ!アノ人間オレ達ノ言葉ガワカルノガ?〙
ゴブリン達は戸惑っているが、俺の方がビックリなんですけど……
『ドン ドン ドン』いつの間にかルーシーは右斜めに移動して右手の槍と左手の盾をぶつけ合って音を出してゴブリンの視線を集めていた。ルーシーが注目を一点に集めたおかげでゴブリン達はフェルから見て横向きになった為。後頭部が後に少し長いゴブリンの頭は正面から狙うよりも横から弓で狙う方が矢が当たりやすい為にルーシーが囮になった。
『プシュ プシュ プシュ』フェルは、弓を構え3本の矢を素早く連続で放った、1匹目、2匹目と矢が側頭部に命中しゴブリンは力なく膝から崩れ落ちた。だが……最後の1本はゴブリンに短剣で防がれ、ゴブリンはフェルに短剣を構え奇声を発しながら物凄い顔で襲い掛かってきた……が、ゴブリンの後ろからルーシーが心臓を目掛けて槍を一突きし、紫色の血を撒き散らし倒れたゴブリンはピクリとも動かなくなった。 ルーシーとフェルの双子の2人は一瞬でゴブリン3匹を仕留めた。
『もしかしてベル今、ゴブリンと話してなかった?』
「うん。普通に会話できてたね」
『『えっ~~アンタ何者?』』二人してハモったが……こっちが聞きたいよ。