38話:思い出は綺麗に
俺とマックスはレオの背中に乗せてもらい、ルーシーとフェルは2人で空を飛び水飲み場を目指し走り出した。レオは、数メートルある崖と崖の間を軽々と飛び越え次々にジャンプして行った…。当然、俺とマックスはレオの背中の上で揺られ今まで乗った、どの絶叫マシーンよりも激しく絶叫した…。
水飲み場に無事?着いた俺とマックスは、レオの背中から降り、両手で口を押さえてほっぺたパンパンに甘酸っぱい思い出を口一杯に溜め込み、変わり果てた朝食を生産するか呑み込むかの対応に追われ、その場に立つ事が出来なかった。
『へー以外に綺麗な所ね』
『そうですね。森の良い匂いがします』
『フェル何言ってるの?土臭いだけで美味しそうな匂いなんて、全くしないじゃ無いのよ』
空から降りて来たルーシーとフェルの何気ない会話が聞こえて来た。ルーシーにとって、良い匂い=食べ物の匂いらしい……ホントに駄目な天使、駄天使だ
水飲み場は、緑の木々に囲まれ綺麗で澄み切った湧き水がポコポコと湧き出ていて、ため池の周りと源流に沿う形で緑色の苔が生えていた。その光景は大自然の美しさと、木々の間から差す太陽の光が神々しく思えるぐらいに無数の木々に囲まれ、苔が育つのに適した日陰と湿度を肌で感じた。
綺麗な自然を休み前の飲屋街、もんじゃストリートのように汚さなくて良かったが、未だ口の中が気持ち悪い俺は、水を求めて水飲み場に近づいた。
『人ゲン、ワレラノ、水ニ、サワルナ』
『トカゲ人間がシャー、シャーうるせえぞ!生理中ですかコノヤロー!こっちは気分悪くてそれどころじゃ…ウプッ』
(ピンチなのは分かるがマックスそれ、フェルに向かって言ったら血を流すのは、お前だからな!)
第2波で両手で口を押さえた俺は、心の中でツッコミを終えた、どうやらリザードマンの言葉はマックス達には、シャー、シャーと鳴き声に聞こえるらしいが【異世界言語】系統のスキルを持つ俺とレオには単語、単語だが言葉に聞こえたので、急ぎ呑み込み話し合いを試みることにした…が…。
「少しで良いから水を分けてくれないか」
『人ゲン、自然ヲ汚ス、ワレラノ、ナワバリ、汚ス、絶対ユルサナイ』
説得するも、隣でマックスが耐えきれず朝食をキラキラと生産しはじめた。そりゃ〜自分の家でやられたら誰だって怒るよね。
リザードマン達は槍の柄頭を地面に叩きつけ、ドンドンと大きな音を立てはじめ、水飲み場の横にある洞窟からその音を聴いた他のリザードマン達がゾロゾロと兵隊のように出て来た。
「すまない。話し合いはどうやら無理だ」
『はぁ〜』
『ベルさんは何も悪く無いですよ』
『そうよベル。向こうがやる気ならこっちは正当防衛よ』
マックスのこうなる事を予測してたのか盛大なため息を吐き出した(ほぼお前のせいだかな)フェルの優しい言葉ホッとして、ルーシーは正当防衛を主張するが、その前にこちらは縄張りに無断で不法侵入し、1名やらかしてるのだが、それは良いのか?って言うツッコミはこの際辞めておこう。
俺は【四次元収納】からいつもの木の棒と昇格試験でイケメンエルフの試験管アルデから奪った鉄の剣を出しマックスに手渡した。ちなみに鉄の剣とルーシーの鉄の槍と鉄の盾、フェルの鉄の弓はスキル【幸福の手】で勿論強化済みだ。
『『『ギャーーギャーギャー』』』
『よし。大きいのと小さい2匹に命中』
『さすがお姉ちゃん。見事な二枚抜き』
リザードマンの悲鳴に驚き振り向けば、ルーシーが戦闘準備途中のリザードマン目掛け鉄の槍を投げつけて、隊列を組んで並んでいた2匹のリザードマンが串刺しになっていた。それを見たフェルがルーシーの横で、ピョンピョン飛び跳ねていた…フェルの飛び跳ねるリズムに乗せて、ぽょんっぽょんっと揺れる大きな胸を見て、春期厨二病の俺は、不覚にもリザードマンよりも、そちらに目を奪われてしまった。
運良く小さいリザードマンは隊の指揮官らしく周りにいたリザードマン達は隊列が崩れ右往左往していた。
「あのフェルさん、喜んでるところ大変申し訳ございませんが、そう言うゲームじゃ無いからね。それよりルーシーさん正当防衛の意味、ご存知ですか?」
『えっ?正しい防衛の仕方でしょ』
「うん、そうそう『やられる前にやれ』って違うから。先制攻撃は防衛の一部に含まれないからな」
俺は、ドヤ顔で答えたルーシーの頭にツッコミを入れた。ルーシーは口を尖らせ俺に反論しはじめた。
『えー、いぃじゃん。だって正義は私に有るんだから』
「へ〜〜。ルーシー正義って難しい言葉よく知ってるね」
棒読みの俺の言葉にルーシーは口を膨らませ、すかさず反論した。
『何その言い方。ムカつくベル、アンタ私の事、馬鹿にしてるでしょ?勝てば正義。負ければ敗者。力無い者の言い訳など誰も聞かない。敗者が屍で無ければの話しだけど』
「ルーシーが意味深なこと言うね。違うと言いたいが、極論を言えば正解。だが、そのセリフは正義から1番ほど遠い人が言うやつだからな。それより戦闘前に1本しかない槍を投げてどう戦うの?」
ルーシーは俺の質問にそんな事も分からないのかっと言う呆れた表情で答えた。
『槍なら目の前のトカゲ達がいっぱい持ってるじゃん』
「あんな普通の石を削っただけの石の槍、すぐ壊れるだろう」
『壊れたら別の槍使えばイィじゃん』
ルーシーは、えっ?何がいけないの?っと言う純粋な顔で俺を見つめだが、ルーシーの戦闘意欲に、俺は正直ドン引きした。
『パパ、でもよ〜槍投げて頭を潰すのは正解だよ。リザードマンは尻尾のように、端っこの兵隊をいくら倒してもすぐ補充してガードを固めてくるから、頭を潰せば今みたいに隊列が崩れて戦いやすくなるんだよねぇ』
『そ、そっそうよ、それが狙いだったのよ。計算通りよ』
マックスの言葉に慌てたルーシーが答えたが…
「マックス?まるで経験済み、みたいな言い方をするな?」
『ここの場所じゃ無いが、大人の俺ちゃんは、お嬢ちゃん達と違って色々と経験済みなのよ』
マックスの意味深な発言に俺とルーシーの2人は下唇を噛み締め、フェルは引きつった笑顔見せた。
ルーシーは右往左往するリザードマンの群れを見つめ、まるでオモチャを前にはしゃぐ3歳児のように目をキラキラさせながら見つめていた。そんな子に育てた覚えは無いのだが(※育ててません)敵を前に喜ぶなんて、どこの戦闘民族だよ。
リザードマンには悪いがルーシーが『オラ、わくわくすっぞ』っと言い始める前に戦いを終わらそう。俺は、右手をリザードマンに向けた直後、鬼の形相のフェルに腕を掴まれた。
『ベルさんこの美しい大自然を壊すおつもりですか?』
「えっ?そ、そうじゃ無いけど」
『ベルさんの魔法は危険です。私達に任せて大人しく見ててください』
「あっ…ハイ」
フェルは以前、俺がダイナマイトの破壊力を想像して唱えた魔法『ニトロアロー』をここで使い自然を壊するのかと思ったのか、激おこプンプン丸で俺を見つめていた。俺そんな悪い人間に見られてるのか?以外に信用されてないのかな?
ま〜止められていなければ3発ぐらい打ってたと思うが……。
『フェル行くよ』
『うん。お姉ちゃん援護は任せて』
ルーシーとフェルは打ち合わせもなく、それだけを言い残し、ルーシーは混乱しているリザードマンの群れに武器もを持たず盾を一つ身につけ、1人で突っ込んで行った……。




