10話:手違いで
で……今現在、俺は朝からナポリさんに頼まれた依頼で、片っ端から草木に【アイテム鑑定】をして【ハーブ】や【香辛料】をせっせと集めて回っている。ルーシーとフェルは区別が出来ないので、そのまま宿で待ってもらった。
気が付けばもう昼前だったので、昼飯を食べに宿に帰ろうとしたその時、後ろから突然…………
『あっっ!おじさぁ――――――――――――ん!!大丈夫だったのぉー?』
この異世界に巻き込んだ、張本人の武田 ひなたがバタバタと走ってきた。その後ろを静かなのに、存在感が半端じゃない上杉 美月が歩いてくるのが見えた。
『無事で良かった。おじさん途中で、追い出されるんだもん。ひなビックリしたのぉ!!』
その言葉に俺は回りを確認したのだが、俺以外に誰も人がいないのだが………
『あなたの事とですよ。オ、ジ、様』
美月は不敵な笑みを浮かべ、俺の信じたく無い確信に会心の一撃で触れた。
(……あれ?なんだろう?胸の奥がチクチクする……まさか、これが恋なのか………??それとも?……まさか??オジサンって言う異世界の新手の精神攻撃魔法か?!)
よく見ると、さらに後ろから山田 太郎が肩を落とし疲れ果てヨロヨロとした足取りで歩いて来るのが見えた。
『ヘイボン何してるの?遅いのぉ。遅すぎなのょ!』
『ホントに、何をさせてもダメなんですから』
散々な言われように山田は、今にも泣きそうなんですけど!!
『じゃぁ―――ね。おじさぁん!またなのぉー』
『それでまた。叔父様!』
山田を残して2人は、帰ってい行った。
年齢が倍ならおじさんですよね?ハイ、ウスウス気付いてたよ。だが……あれ?何故だか、涙が頬を伝うのは何故だ?
そんな事を思いながら俺は、山田に話しかけた。
「おい、おい、大丈夫か?何があったんだ?」
『何だ、あん時のオッサンか!』
(……あれ?まただ何故か、胸の奥がムカムカする。今度こそ、これが恋なのか………?それとも殺意なのか……?)
山田は俺の左側に来て、俺に肩を組んできた。
『オッサン聞いてくれよ!あいつら、強すぎて俺も敵も全然、相手にならないんだよ。今さっきだってョ~攻略に最低1週間以上かかるダンジョンを1日でクリアしてョ~。付いていくだけでも、こっちは精一杯なんだョ~』
「そうだったのか……お前も大変だな」
『オッサン、分かってくれるのか………?良い奴だなオッサン……あっ!そうだいい物やるから手貸してくれョ~』
俺の左手を取って、銀色の腕輪を手につけた。その瞬間、腕輪が俺の手首にピッタリのサイズに収縮してし手首に吸い付いた!!その瞬間ゾックと全身に寒気が走り鳥肌が立った。
「おい。何だよこれ!!」
『あ~~それね、さっきのダンジョンで見つけた《SSR》の腕輪だよ。ただし、呪い付きのサービスだけどな~』
「えっ?呪い??呪いって何だよ」
俺は、慌て腕輪をアイテム鑑定してみた。
【反転封印の腕輪】《SSR》【呪い】
《スキルは自分自身にしか使えない》
【呪い】(この装備は装備者の体の一部になり外せない)
慌てた俺はポケットから【下級ポーション】を取り出して確認した。が……瓶に付いてたラベルに書かれていた異世界の文字が読めなくなってる……。【下級ポーション】に【鑑定】・【分解】をしても╳って表示が出るばかりで全く使え無くなってる。
当然、腕輪を外そうとしてもピッタリと吸い付いて全く外れない………。頭の中身が真っ白になった俺は酷く慌てて取り乱した。
「オイオイ!どうすだよこれ?何も使えないじゃないか!」
『ハッハハァ………オッサンその顔、マジウケるぅぅ!』
……#。……##。……プチン、俺の中で何かが弾けた……
気付けば俺は、山田の顔面を殴っていた。
だが、殴った筈の俺の右手に激痛が走る!?その姿を見た山田 太郎はニヤニヤしながら俺の顔面を豪快に殴り返した……。
ドゴツッッ……鈍い音を立てて俺は5メートル後ろの気に叩きつけられた。マジかよ?ヤバい!ステータスの差が違いすぎる!
『オッサン最高に気持ち良いから、ストレス発散に付き合えよ』
1歩……また1歩……吹き飛ばされた俺に、近づいてく来る…………… ヤバい……このままでは……殺される……!
俺は手にした【下級ポーション】を飲み干した。ポーションはカメムシの味がして糞不味い下級でこれなら上級なって想像もできない味だろう。これ以上のダメージを受けたくない俺は必死に考えた。が…
俺が使えそうなスキルは、ただ一つまだ一度も使った事が無いが、自分を中心に使えるスキル【全てを不幸にする者】《SSS》しかない……何が起こるか何て全く想像できない!だが……迷ってる暇なんて今の俺には無い。決意を固く決め!
俺は姿勢を低くして山田にタックルをして、そのまま抱き付いた状態で【全てを不幸にする者】を発動させた!!
すると俺を中心に直径50㍍ぐらいに黒い煙が広がり俺達を包み込んだ。だが……黒い煙は何事もなく、すぐに消えた!えっ?たったそれだけ??
黒い煙が、すぐ消えたのを不思議そうな顔で確認した山田は何も無かったかのようにまた、俺に殴りかかって来た。
バシ……バシ………あれ?
2発殴られたが、普通に痛いだけで、前ほどのダメージがなかったので俺は殴り返した。普通に殴れて手も痛くない!
あれ?何が起こったのか?お互いに理解ができず山田も不思議な顔で、こちらを警戒してる!お互いが距離を取りステータスを確認した………
『「ステータスオープン」』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【名 前】ベル・ウッドスカイ (36歳)
【種 族】人間 (男)
【職 業】不幸な異世界人
【レベル】1
【H P】8/10
【M P】5/5
【攻撃力】1
【防御力】1
【魔 力】1
【素早さ】1
【 運 】1
【魔 法】風魔法
【耐 性】風耐性
【スキル】
《N》
◾全てを不幸にする者(自分を中心に全てを不幸にする)
◾異世界言語(全ての言語を理解して覚える)
◾異世界収納(異空間に対象物を収納する。入れた対象物は時間停止・容量無限)
◾アイテム調合 (ランクN以内:アイテムのみを分解・合成出来る)
◾アイテム鑑定 (ランクN以内:アイテム・アクセサリーを鑑定出来る)
【装 備】
◾【旅との服】《N》E
◾【反転封印の腕輪】《N》【呪い】
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『なんじゃこりゃゃゃゃ!!俺様が苦労して上げたレベルが1に、しかもステータスも全て1。スキルも《N》になってるじゃねか!!』
えっ?レベルもなのか?元々レベル1の俺には関係無いがステータス・スキル・装備のランク全てが最低になってる!!これが俺のスキル【全てを不幸にする者】効果なのか。!
真っ赤な顔で山田は右手の掌を俺に向けて構え詠唱をし始めた……
『燃え上がる炎よ 我の声に応え 我が敵を焼け【ファイヤーボール】』
野球ボールぐらいの弱々しい炎の固まりが、俺に向けられ放たれた。炎は俺の右肩にぶつかり、服に引火した。俺は地面を転がり回って火を消した……レベル1同士でも魔法はヤバい……俺、魔法の使い方知らないし。何よりも、こいつはバカなのか?森の中で火属性の魔法を使うなんて森に燃え移ったらどうするつもりだ。
『炎の……』
オイオイ!こいつマジか?また炎の魔法を唱える気か?本気か!俺は左手を胸に当てて何かないか探した……一つ一つスキルを確認していたら……スキル・魔法は自分自身にしか使えない【反転封印の腕輪】の効果か?【異世界言語】の表示に触れるとアイテム調合の【分解】表示が現れて慌ててた俺は、キャンセルするつもりが、手違いで【分解】の表示に指が当たってしまい【異世界言語】のスキルを間違えて【分解】してしまった……すると…………。
《C》
〘全て〙〘言語〙〘理解〙〘覚える〙
俺は、さらに慌てた、何故なら【合成】のスキルで合成出来るのは最高で3つが限界だ、なのに4つに分解されたからだ……だが考えてる時間は俺には無い。取り敢えず、3つ合成して、出来たものに残りのもう1つを合成してみることにした。
時間もなく焦ってテンパった俺は適当に選んで〘全て〙〘理解〙〘覚える〙を【合成】した……
すると突然、俺のからだ全体が一瞬、光り初めてどこからか声が聞こえた。
《《SSSSスキル》【全てを学ぶ者】を獲得しました。》
「えっ?………………?ホォースって何だよ?」
気が付けば山田 太郎が今にも、魔法を………
『………敵を焼け。【ファイヤーボール】』
放たれた炎に焦った俺は炎の固まりを手で払った。するとまた……。
《【火耐性】【魔法耐性】を習得しました。》
(えっ?えっ?何?)
困惑しながらも辺りを見渡すと、今までとは違いこの世界の全てが今の俺には、ハッキリとよく見える。
《【魔力感知】【魔力操作】【気流感知】【気流操作】【重力感知】【重力操作】【温度感知】【温度操作】【法則感知】【法則操作】【自然感知】【自然操作】【…】【…】【…】……………習得しました。スキルオーバーの為、全てを統合します。
《SSSSスキル》【創造主】を獲得しました。》
ふと俺はナポリさんとの会話を思い出した。
…………俺達が4回目に異世界召喚される事となった召喚テーマが……「異世界の神」だったらしい。
俺は巻き込まれたんじゃなく俺が、皆を巻き込んだのかも…………?