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四話 青空と化け物と猫耳と

筆舌に尽くしがたい勢いで投稿を遅らせてしまい、本当に申し訳ありませんでしたm(__)m

「いつ投稿しますー」とかほざいてたのを何回スルーしたか……。


その分クオリティは上がっている(と信じております)


本当にご迷惑しかおかけしませんが、どうぞ第四話、お納めください。

 




「…………なしてこうなったん………………?」


 全力で現実逃避してゐる僕でした。完。



 ……じゃないよ! 気をしっかり持って!







 さっき教室に飛び込んできた『枯羅巣からす』は、散々咆哮した挙げ句、まだ避難出来ていないクラスの皆に遅い掛かりました。



「……っ! みんな、早く逃げて! ここは、僕が食い止める!」



 と、見事な男気を見せた『過去の僕』が魔術で応戦。腰がだるま落としなミサ先生と、生徒を引率するブーザー先生がすぐさま出ていき、僕が二人と怪鳥が一羽、クラスに残されたのでした。




『枯羅巣』は、この僕の事は見えていないようです。何故かさっきから、僕の手が机をすり抜けます。走馬灯の中だから、実体が無いのかな? 壁抜けとかしてみたいね。




《……貫キ縛ル白亜ノ蛇……、》




 僕が呑気に手をぶんぶん振っている間に、教室の雰囲気はガラリと変わっています。


 散乱する机と椅子、深い爪痕の付いた教科書。残骸の中を縦横に駆け回り、『過去の僕』と『枯羅巣』が戦闘を繰り広げています。



《……母ナル大地ヨ、悪逆ヲ御胸ニ還サン!》



 おおっとぉ! 『過去の僕』が詠唱魔術を完成させたようです! 確かこの時僕が使ったのは……、第四階層錬金魔術の……!




《フォース・ヨルムンガンドッ!!》




 魔術の発動! 大きな鉤爪を振りかざしていた『枯羅巣』の直下に、輝く魔方陣が出現します! 轟音と共に、魔方陣から真っ白な棘が現れて……、あっという間に『枯羅巣』に絡み付いて動きを止めました! 凄い! 形勢逆転だよ!



 ……まあ、僕なんですけどねこれ。数時間前の。何で熱く実況解説してるんだろ。恥ずかしくなってきたよ。


 それに、ここは僕の過去なわけで、この後の展開がどうなるのかを僕はもう知っています。何にも触れられない僕がどうこうした所で、過去が変わる事は無いですしね。まあ、何をするでもないのでのんびりしませうか。


 机には座れそうに無いので、床に三角座りです。



「――――――ォォオオオォッ!!」



 すっごい鳴き声です。かつて相対していた僕じゃなければ、恐怖で立っていられなかったかもです。というか、うちの学校は何でこんな化け物を飼ってるんでしょうか? 前回も脱走されて、大変な目にあったのに。生物部は魔境だっていう噂はこういう事だったんですね……。



「過去の僕」が魔術を放ちながら廊下へと飛び出していきます。避難が完了したようなので、フィールドを変えようとしてました。さて、ここからどうするか……、とかナレーションしてみたりして。僕も後ろからトコトコ付いていきます。



《アストロロジー・“ゼノン”!》


「ギャオオォォ――ッ!!」



 今度は呪術系の魔術です。『枯羅巣』の体から、いかにもな紫紺の煙が立ち上ってますね~。移動思考の阻害……だったかな? 第二階層の、基本的な魔術です。『アストロロジー(占星術系統)』の魔術は一年生で習いましたけど、人に害があまり無いって事で学園中で横行し、一時期ギコギコとしか歩けない学生が廊下を彷徨っていた事件もあったね。



 僕は主に、魔術系統の分野を多く選択しています。教科書に載っている魔術は勿論、学園で学ぶレベルの発展魔術は全てマスターしてるんです。常人が発動出来る最高位の魔術である、第七階層魔術も幾つか使えたりします。ふふん。……いやまあ、覚えちゃった(・・・・・・)と言った方が良いのかな? 現に今、僕が良い子ちゃんを演じないといけない理由もそれだし……。でもやっぱり僕凄い! 職業柄・・・とは言え、僕頭良い! えへん!



 あ、僕が一人自慢してる間に何やらピンチです。



「クッ……!」



『枯羅巣』の振るう鉤爪が、徐々に僕を脅かし始めています。怪物と人間の身体能力の差なのか、息切れしている僕とは違い、『枯羅巣』は全然疲れた様子を見せてません。僕の集中力や魔力も、一般人の平均は越えているとは言え、流石にキツそうです……。



「――オオォォォ――――  ッ!!」



「……、何、あれ……っ!?」



 ……何やら、『枯羅巣』の様子がおかしいです。突然攻撃の手を止め、廊下の天壌を仰いで雄叫びを上げています。『過去の僕』、不意の謎行動に困惑しています。見た事のない行動に、僕が二人とも足を止めて、その巨体を見上げます。



「――――……オオ…………」



 あんぐりと開けられたその顎から溢れ出るのは……、紅蓮の炎。



「――嘘でしょっ!?」



 瞬時に状況を理解した僕は、全力で横の教室に飛び込みます! その直後、窓ガラスをぶち破って転がり込んだ僕の背後から、暴力的なまでの閃光が……!



 ――――バリッッ――――



 ……爆発しました。廊下が。雷のはぜる音が聞こえたと思ったら、あり得ないくらいの火炎がこの教室に流れ込んできました。



 ……いやだってそうとしか見えないんですよ。その時の僕はダイナミック倒れこみしてて、後ろで何が起きていたのか分かりませんでした。やっぱりこの『ブレス』も効かなかった今の僕(熱くもなかったですね)だから見えましたが、あまりに一瞬過ぎましたハイ。ッパーンッていう感じです。



「くうっ……!?」




 すさまじい火炎に背中を焼かれ、ついに過去の僕が膝を付きました。焼け焦げた教室、壊れ山積した机、ぼろぼろの僕……。小説のワンシーンみたいですねとかいう不謹慎な感想は置いといて、本格的に危険です。この時の僕は、朧気ながら『死』という物を実感していたように思います。




 のそのそと『枯羅巣』が教室に入って来ます。散々自分をてこずらせた相手(ぼく)の満身創痍な姿に、満足そうに鳴き声をあげて。何笑とんねん。




 黒い影が覆い被さります。ぼやける視界を必死に見開くと、そこには異形。激痛が走る体は、もう少しも動かせません。……って、あれ……?






 ――ああ、戻ってきたんだ(・・・・・・・)。確かに目の前の光景は、今まで見ていた世界(そうまとう)と重なっています。傷ついた体を感じます。痛い程。夢は覚め、『過去の僕』は立ち去ったのでしょう。







 どうやら、『今のこの僕』は、死ぬみたいです。







「………………この状況、どうしろと……?」




 このクオレ、ガランとした教室に一人。はい。一人で。




 なんか僕死にかけてるんですけど。ズタズタのボロ雑巾なんですけど。



 目の前に化け物、います。大きく口を開けました。あぁ、僕なら軽く飲み込めそう。黒々としてますね。








 死が、迫り来る。絶望すら悠長に感じさせる暇も無いようだ。力無く倒れ伏す僕は、今から未知の世界に逝く。



 ……まだ、やりたい事もあったのに。強すぎたんだ。本当に、本当に僭越だったな。








「……まだ、書き足りない、よ……、


 カレア(・・・)――、」













「よいしょ、っと」






 ドゴォッッッ――――――








 ………………なんか、場違いな、殴打音が聞こえた……?



 残る力を振り絞って、上を見ます。





 ――既視感。



 青く輝く大空に、その長い黒髪が泳ぐように舞う。差し込む柔らかな陽光が包む、しなやかな肢体。そして……、ピンと立った、小さな猫耳(・・・・・)





「――ん、少し飛ばし過ぎたな。大丈夫か? 後輩君」





 レリア学園に名高い大変人。たった数時間前に出会った、彼女・・




 セラと名乗った先輩が、見事なフォームで右ストレートをフルスイングしていました。







 …………『枯羅巣』どこ? あれですか? あのお空の向こうに見える小さな点。て言うかもう壁ないやん。窓とか以前に壁ぶち抜かれて青空が一面に見えるやん。






「ふうっ、まさかお互い、こんな事に巻き込まれるとは思わなかったな……。どうした後輩君、そんな呆けた顔をして」





 …………えーっと、つまり、あれですよね。あの、文字通り化け物だった『枯羅巣』君を、一撃で、この華奢な先輩が吹き飛ばしたって事ですよね。




「――そうだ、放課後にもう一度返事を聞かせてもらおうと思っていたが、ちょうどいい。どうかな、後輩君? 私の『部活』に入るつもりは無いかな」




「入ります」






「「…………………………え?」」






 ……何かスッと答えちゃったんですけど。なんて? 僕、今自分ではっきり入るって言った? こんな先輩がいる部活に? 何言ってるの? というか、何で先輩も驚いてるんですか。あんなめんどくさい事までして、入れって言ったのは先輩の方じゃないですか…………。






 地面が近くなりました。後輩君! と、遠のく意識の中で聞こえた気がしました。






 今日は色々ありました。ありすぎました。








「…………なしてこうなったん………………?」




 全力で現実逃避してゐる僕でした。完。

次の更新は何になるか、いつになるかまだ未定でs ((殴


やっとイントロが終わったような所。ゆるりで不思議な日常系、次回からスタートです!

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