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三話 鬼畜外道丸・猫夜叉 ~下~

本当にお待たせ致しました。あと数話で、本題、日常系に入ります。



 


「………………この状況どうしろと……?」




 不肖このクオレ、ガランとした教室に一人。はい。一人で。


 え? あの…………、え? ちょっと待って下さらない? 




 なんか僕死にかけてるんですけど。ズタズタのボロ雑巾なんですけど。



 目の前に化け物、います。あ、何か大きく口開けたね。おおお、僕なら軽ーく飲み込めそう。黒々としてますねー。


 ……いや、ほんとそうじゃないでしょう。化け物に食われそうなんですけど。




 フッ、と意識が遠退いて行く感じ。あ、これ走馬灯。僕知ってる。まさか人生の折り返し地点程も生きてない僕が、こんな状況で体験する事になるなんて……。多分走馬灯作った神様も予想外でしょうね。うん。




 そんなこんなで。僕は死ぬらしい。


 墜ちていく。黒々洞の世界、混濁した意識に逃避する。





 ……都合の良い展開だなぁ。









 あ、教室だ。皆……、クラスメイトも先生もいる……ってあれ? なんか先生多くない? ドアの所に立ってる先生、すごいまくし立ててます。とっても焦ってるみたい。



 ってちょっと待ってよねえ。




 ピタッと止まります走馬灯。あ、止まれって言ったら止まっちゃうのね。素直で良い子なんですね。


 ……じゃなくてさぁ! 違うじゃんこれ。


 走馬灯って、自分の人生の中で大切に思っている場面とか、節目になった所とか、そういう感動的な場面を見せる物でしょ。なんで数時間前から始まっちゃうの? もっとこう、初恋とか、友との別れとかさあ。良い感じの雰囲気を流して欲しいよ。



 あ、僕初恋まだだった。じゃあ仕方ないね。



 止めてごめんね。続き行きましょう。



 動き始めました。なんて便r……、優秀なんでしょうね。





 あ、ブーザー先生の口から「からす」って言葉が出ました。ほんとは「枯羅巣」と書くのです。覚えたての難しい漢字を使ってみせたいお年頃系ネーミングセンスですね。



「……非常に危険な状況だ! 生徒諸君は今すぐ避難するように!」



 途端に叫喚の嵐。ワタワタとしてます。マタタビを得た猫みたいですね。若干楽しそうにも見えなくも無いですはい。


 あ、今年からこの学園に来たミサ先生だけは、この状況を理解出来てないようです。


「あの……、ただのカラス(・・・・・・)なんですよね? 確かに猫とカラスは犬猿の、いえ、猫烏の仲なんでしょうけど……」


 あ、やっぱり先生も、この学園の猫度120%状態には気付いてたんですね。ていうか、何その「この危機的状況でも臆さずジョークを言って場を和ませる私ってばスゴイ」みたいな表情。上手くないから。古今東西使い古されてきたネタだから。その無駄にイラっとくる口角上げ止めて。



「何を言っているんですか! 事態は一刻を争うのです! ミサ先生は、あの化け物の恐ろしさを知らないのですよ!」


 やっぱりブーザー先生怒ります。無知は一瞬を壊し、やがて人生の歯車をも狂わせると言いますものね。今考えたんですけどね。



 そう言えば、今僕がこんなにもノホホンとしていられるのも、ここが僕が体験した記憶世界の中だからな訳で。つまりこの空間には、ブーザー先生の話を聞いている『その時の僕』がいる筈です。えっと、僕の席は確か、教室の真ん中……。




「……………………」




 ……あーあれ完全に思考停止してますねー。傍観の構え奥義ですねー。


 まあ、自分から積極的に死に急ぐ様な行動をしなければ、今のこの僕(・・・・・)が死にかける事も無いのです。さあ、過去の僕。お願いです、どうか変な気は起こさないで……。




「……………………!」




 ちょっと。過去の僕? 何その「腹……、くくってやろうじゃねぇか」みたいな顔。僕らしくなくて自分でも唖然としてるんですけど。決意したの? 何を? 本当に止めて……




「先生」


「ん、ああ、クオレ君か。悪いが後にしてくれないか?」


 ん、あー、ミサ先生ノックアウトです。ブーザー先生から『枯羅巣』の事を聞いていたんでしょう。膝が爆笑してます。僕に睨まれた猫みたいですね。下手な怪談より怖がってる……って、しゃんとしなさい教師。




「……ブーザー先生。僕が、殿しんがりを務めます」



 ……うん?



「何を言っているんだ!? 確かに成績優秀なクオレ君なら、ヤツに襲われても多少は持ちこたえられるかも知れない。しかし、余りにも危険すぎる! 最後尾は我々教員が担当するから……」


「先生」



「まず第一に、戦闘可能な教員がほとんどいないという事」


 ちらっと横目にミサ先生を見やる過去の僕。相変わらず爆笑してますね~。膝が。


「第二に、ここにいる生徒の中でなら、僭越ながら僕が一番魔術の扱いに長けています」



「む、むう……。確かに、それは事実だが……」



 なんで先生論破されかけてるんですか。本当に僭越だよ! 僕程度の魔術の使い手でどうこう出来る相手なら、こんなに大事になってないよ! 



「第三に、あの事件(・・・・)……、数年前、初めて『枯羅巣』が逃げ出したあの時、僕は一度奴と相対しています」



 そういえば……、と、大騒ぎしていたクラスメイト達が気付いた様子。そうなのです。『枯羅巣』が逃げ出したのは、今回が初めてではないのです。数年前、ここから少し離れた所にある聖レリア学園中等部に、あやつが脱走した事があるのでございます。当時その中等部に通っていた僕は、先生の引率で皆と避難……、なんてことはなく、一人で『枯羅巣』を見物に行っていたのでした。


 当時の僕が、「皆と違う事をする僕、超カッケェ……」となっていたかどうか、真実は闇の彼方に葬り去られました、というか去りました。聞かないで下さい思い出さないで下さい。


「先生! 考えている時間はありません! 早く皆を連れて避難の指示を……」



 言いかけた言葉のが、プツッと途切れます。『この時の僕』の目線が、何故か窓の外に向けられます。




 ――バサッ バサッ ――     

 ガッシャアアァァーーーーン ―――






 ……ヒジョーに嫌な予感がするのは僕だけでしょうか。いいえ、誰でも。とか言ってる場合じゃないよ! 何が起きt…………。




「―――――――――!!」




 ……テンションMAX。天空を仰ぎ見て、咆哮する鳥……、怪鳥。





「……っ! みんな、早く逃げて! ここは、僕が食い止める!」






次もどうぞ宜しくお願い致します。

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