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二話 鬼畜外道丸・猫夜叉 ~上~

作者の勝手な都合により、投稿遅らせたばかりか、前後話での投稿となり、本当に申し訳ありません。

説明回としました。御感想等で指摘を頂ければ幸いです。


 


 僕は今、とても悩んでいるのです。


 二時間目、地理の時間に、机と椅子を両脇に抱えて突然教室に入ってきた僕を、皆が唖然として見てくる事ではありません。隣の芝さんが、まるで猫に睨まれた僕のようにびくびくしながら、僕の荷物を渡してくれた事も、関係ありません。



 そうです勿論あの先輩です。



 何事も無かったかのように教科書とノートを出し、指を組んで頬杖をつく僕を、先生が戦慄の目で見てきます。が、そんなお茶目な先生に構っている暇はありません。


 うん、ほんとにね、今すっごい後悔してる。パンドラが貰った箱を開けちゃったレベルの勢いで、非日常とか迷惑とかが襲い掛かって来てます。僕に。


 って言うかね? 取り合えず…………。



 誰!? あの人!! 



 変態とかの域をぶっちぎってるよ! あんな綺麗なのに! ずっと見てるぞとか心読めるぞとか! 舐めてました! 学園一の変人、想像してたのの数十倍ヤバい人だった! アッチ系って言っても良いよねあれもう! あんな綺麗なのに! 文房具投げてくるし! 脅しかけてきたよ平然とあの人僕に! そもそもなんであの人授業出てないの! 遅刻するぞ優等生君、じゃないよ! 不真面目だよ! あんな綺麗なのに!



 ……ちょっと取り乱してしまいました。隠せない本音が口から漏れちゃった気もしますが、そんな事はどーでもいーのです。



 僕はこれからどうすれば良いのでしょう。恐らく、先輩の言っていた事、僕の弱味って、あれだよね。生徒の倍は猫がいるこの学校で、僕が猫を目の仇にしている事でしょう、うん。学園には必然的に猫好きでゆるふわな人々が集まります。もしも、僕の猫嫌いが学園中に知れ渡ったら……。翌日から「優等生」のラベルが剥がれ、「鬼畜外道丸・猫夜叉」として、学園生徒全員から忌み嫌われるでしょう。どうしましょう。一難去ってまた一難、とはこの事です。



 カレア、とか言ってたね。うん、そんなはず(・・・・・)、ないよね。



 そんなこんなで心の中がぐちゃぐちゃでも、表面は取り繕わなければいけないのです。優等生を演じるのも疲れちゃうよね。ずーっとゆるゆるごろごろしていたいのにね。



「……、ぉーい、クオレ君。聞いていますかー?」

「……は、はいっ!?」



 つらつらと考えていたら、いきなり先生に声を掛けられました。……あ、呼ばれてたのか。いけないいけない、ちょっと気が動転してガードが甘くなってるよ。油断するなってあの先輩にも忠告されたし……。って、!! なんで僕はあの変人の意見を受け入れてるの! 勘弁してよほんともう。仕舞いにゃ泣くよ僕。


「クオレ君、大丈夫ですか? 今日はいきなり遅刻してきたり、授業にも集中出来ていない様ですが……」

「い、いえ、大丈夫です。少し考え事をしていました……」

「優等生のクオレ君でも、そんな日があるんですね。珍しいですが、授業は進みますよ~? 無理そうなら保健室に……」

「も、問題ありません! すみません、授業を中断させてしまって」


 新米熱血教師のミサ先生。優しい人、なんだけど。少し思い込み激しい所あるんだよね……。人の事を分かってないくせに、あんまり突っ込むとボロ出す。これ僕の経験則。勉強になりますね、はい。


「では、クオレ君。前の授業の復習です! この国の歴史とその背景を、現代の社会と交えて勉強してきましたが……」


 おい何言ってんだ前回この地方の名産品だっただろ。スイカのめいさんちー♪ とか言ってたじゃねえか。


「簡潔にまとめてください」


 鬼かあんたは。


 ……ま、こんな時の為に勉強頑張ってきた訳だし。優等生と言われる所以、見せてあげましょー、っと。


 がらがらと椅子を引いて起立します。皆の視線が痛いです。刺さってます、主に心に。まあ、さっき先輩にMPを抉り取られたのと比べると、猫ぱんちとロケットパンチ程の差がありますね。






「僕達が今生きているアルテマ王国の始まりは、詳しくは史実の闇に消えて定かではありません」

「お、いきなりですか~? 駄目ですね~、間違う事から目を反らしていては……」

「ですが、大体は他の国と同じ様な伝承が伝わっています。貧困と疫病、恐ろしい悪魔……。いわゆる『害魔』と呼ばれる存在が、人々の命と生活を脅かしていました」

「無視いぃ!?」

「それは他の国も同じ事。ドワーフ族の国も、エルフ族の国も、鬼人族の国も、害魔によって苦しめられていました。当時、この辺りに居住していた猫人族は、害魔の脅威にさらされ続け、遂に絶滅寸前までに追いやられました」

「ほんとごめんなさい……。無茶な振り方したの悪かったから……。構って…………」


 先生ノックアウト。綿毛メンタルですね。

 これぞ僕が長年のメンドクサイウムとの戦いから編み出した、秘技!『無視王むしキング』! ダサい! 自分で言ってて泣けてくる! うん! 


「そんな日々か続き、最早各地に散らばった文明も、風前の灯となったある雪の日。小さな騎士の石像を前に、ただ一心に祈りを捧げる修道女がいました。この世界に安寧を。人々に幸福を。未来に奇跡を。その為ならこの身を捧げても良い、と……」

「すると、何という事でしょう。白雪の結晶で出来た剣を携えた一人の凛々しい男が、曇天を裂いて現れたのです。彼が手を一つ叩くだけで恵みの雨が降り注ぎ、彼が一つ口ずさむだけで地獄の病も治りました。そして、彼がその剣を一振りするだけで、どんな凶悪な怪物も斬り伏せられました」


 この国の始まりとされるおとぎ話を、僕はすらすらと諳じます。ふふん。伊達に優等生ぶって馬鹿みたいに本だけ読んできた訳じゃないのだ。


「彼は、生き残った人々を集めて国を作りました。誰も苦しむ事の無い、平和な世界を願って。また彼は、民に一つの知恵を授けました」

「そう! それが、いわゆる先生や君達が毎日使っている、『魔術』という概念です!」


 寂しくなったんですね分かります。


「彼はその種族に最も適した魔術を与えたの。エルフには治癒魔法、ドワーフには錬金術、空翼(飛ぶ人達)には浮游術を。そして、猫人族には……、皆も知ってるよね。心眼術! その聡明な目で全てを見通す力。つまりそういうことだぁ!」


 ぶん投げましたよこの人。何で教職執ってるんだろ。


「その頃、世界各地にも、彼と同じ存在……、救世主キングと呼ばれる者達が現れ、民をまとめて国を建てました。害魔に対抗する力を得た人類は、その後長きに渡る害魔との戦争を続け、ようやく安寧の世が訪れました」


 オーッとクラスから声が上がっています。ふふん。


「ありがとう、クオレ君。座って下さい。……こうして平和な世界を勝ち取った私達のご先祖様は、この地をアルテマ王国と名付け、彼、『アレース』を信仰する猫人族中心の国家として、発展してきたのでした」


 ふう。やっと終わりました。……それにしても、エルフとかドワーフとかはまだ良いとしても、猫人族ってどうやって誕生したんでしょう。猫と人の子供、が始まりだとは思うんだけど……。本当にそんな事をした人、猫がいるのでしょうか。分かりませんねー。




 とまあ、考えても仕方がない事は置いといて、当面の問題はあの先輩です。行くべきか行かぬべきか、それが問題です。どうしま「がっちゃあぁーーーーんっ!!」しょうかって何!? 何事!?


 何か凄い音がしたよ! ガラスとかが割れる音がしたけど、事故!? クラス騒然! 先生退散! って逃げるな一人でおい。


「た、大変だーっ!」


 クラスの前のドアが、バーンっと開け放たれました! 気難しそうな顔の血相を変えて飛び込んで来たのは、生物担当のブーザー先生と、助手の椚岸さん! 絶対緊急事態だよ! 僕今日厄日とかそんなレベルじゃないよ! 猫神の祟りか! 祟りなのかーっ!



「…………、……そぅしたっ……!」


「え、何ですか、何が起きたんですか先生!」


 クラスパニック状態。マタタビウムを一年分摂取した猫みたいな混乱ぶりです。とかふざけてる場合じゃありません! 何があったの!?






「逃げた……」




「生物室で飼育されていた危険生物、『枯羅巣』が、鋼鉄の檻を破って逃走したっ!!」



 ネーミングセンスおい。カラスじゃん。





やっと話が動いた……!作者も感動。


アレース、アルテマ、キング……。ふむ。(意味深)


頑張って後編早く書きます。

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