表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

一話 メンドクサイ先輩

遅くなって申し訳ありません&説明不足過ぎて混乱させてしまい申し訳ありませんの舞い(/_;)/~~

 




 聖レリア学園。国の首都から少し離れた所にあるこの学園は、のほほんとした校風で知られています。歴史を感じさせる厳かな校舎に、自然溢れる広大な敷地。そんな見た目とは裏腹に、地域の人からは「生徒よりも野良猫の方が多い」だとか、「猫の方がよっぽどアクティブ」だとか言われてます。



 こんな風に平和な学園の一室では今、彫刻刀やハサミが宙を舞っています。



「あっ、ちょ、待っ……。うわあっ!?」

「待てー! この覗き不審者ー!」

「酷い誤解ですね!? と、取り合えず落ち着い……、てぇーっ!」


 戦場です。この学園で、近年稀に見る戦場です。凄い敵意向けてきてます、彼女。あ、また懐から新しいハサミを召喚してるね。全力投擲だね、うん。なんか、刺すぞーってハサミが言ってるみたいだよ。


 っていうか、そんな事してる場合じゃないよ! もう朝のHR始まってるよ! チェックメイトだよ!


 何でこの人は授業に行かないんでしょうとか、何で机を返して下さらないのでしょうとか、そういうのは一旦封印しまして、僕は懸命に事態の収拾を着けようと頑張ります。


「あのー! 僕机と椅子を返してもらいに来たんですけどー!」


 キャンバスを挟んで見つめ合う僕と先輩。普通なら感動的なシーンなのに、ああ、なんという事でしょう。一欠片も愛を感じられません。


「うるさい! この鬼畜痴漢後輩君め! 私のアトリエに忍び込んで、無事に帰った者はいないぞ!」


 うわあ、むっちゃ悪役~。でも、この人にならむしろ罵られたいって男子は多いだろうなぁ。それぐらいきれいだって思うよ。



「~~ですから! 僕の机と椅子を返して欲しくば、この教室まで一人で来いって、手紙に、書いてたじゃないですか、っとぉっ!」

「……、う?」



 ……いや、う? じゃなくて。



「……あれ、書いたっけ?」

「書いてましたよね。さっきも僕の事、後輩君だとか言ってましたよね」


 きれいな投球フォームで固まる彼女。


「じゃあ……」


 スススと床を滑って接近してきました。器用な人だなぁ。




「君が、クオレ・L・空葉そらは君か?」


「……はい、高等部二年のクオレです」




「そうか、君が…………」


 何かすごい下から見てきます。てか顔! 顔近いよ! 甘い香りフワァンって!



「……んとに、………ぃんだな……」

「ははははい!? 僕何か変なことでも……!」



「……いや…………」


 何事か呟いて、またスススと離れて行きます。何か、さっきまでとは違って、こう、キリッとした空気をまとったような……。恐いよー、もうやだよー。



「……なあ、クオレ君……、空葉君か?」

「あ、クオレ・Lが家系の苗字で、空葉が、僕の名前……です」

「そうか。なら、後輩君」


 いや名前使わんのかいっ!! 今のやり取り要った!? 僕の名前、そんな変!? ……まあ、男っぽくないとは良く言われるけどね。



「なあ後輩君。君は、今何の講義を取っている?」

「……基本教科は普通に全教科、芸術選択は文学科で、魔法教科は、錬金術と獣操学、詠唱魔術科に……」

「あー、もう大丈夫。君が極度の優等生なのは分かった」


 自分から聞いてきてそれは失礼じゃないデスカネ。


「取り合えず、芸術で文学科を取っていれば、それで良い」

「……? どういう…………」


 僕が問いをもらすと、彼女はこちらを向いて、薄く微笑みました。……何しても絵になるなぁ。


「いや、それは今君が知らなくても良い事だ。こんな朝早くから呼び出して、すまなかったな」


 悪かったっていう自覚あったんですね。


「君の机と椅子を持っていったのは私だ。返そう」

「あ、どうも」


 いやどうもじゃないよ僕。この人に、朝からこんな大変な目にあわされたのに、何で普通にお礼言ってるんだよ。良い人か。


 ズリズリと、奥から僕の机と椅子を引きずってくる先輩。まあ、何はともあれこれで僕の平穏な一日が返って来ます。やっとだよほんとにもう。


「早く戻らないと、サボリのレッテルを貼られるぞ、優等生君」

「誰のせいだと思ってるんですか」


 何かもう、慣れっこになっちゃったこの人との会話を軽く流します。それはもう軽く、流し素麺のように。両脇に机と椅子を抱えて、なんとか扉を開けます。


「何でこんな事したのか知りませんけど、今度からはもうしないで下さいね」


 学園一の有名へん人に、良く分かんない嫌がらせ(?)をされ、クラスの皆にも変な目で見られ、挙げ句の果てには授業にも遅れてしまいました。もーたくさん。もー結構です。私の非日常タンクは満タンです。私、実家(きょうしつ)に帰らせて頂きますっ!


「ああ、そうだ。後輩君」

「……何ですかまだ何かあるんですか」


 というか、何で彼女は僕の事を「後輩君」と呼ぶのでしょう。




「今日の放課後、もう一度部室に来てくれないか?」

「嫌です」



 おっと、つい本音が出ちゃった。



「そうか来てくれるか。なら、講義の後に、また一人でここに来てくれ」


 人の話聞けや。


「嫌です。何で貴女は僕に関わろうとするんですか。僕にとって、いえ貴女にとっても、お互い知らない人間ですよ? 何がしたいんですか、貴女は」


 さっきから少し本音・・が口からこぼれ始めています。……先輩に対して、キツすぎる言葉だったかな……。……あー、うん。謝ろう。何か分かんないけど、謝って終わりにしよう。ていうか、僕が悪いみたいになってるよ。すごく、混乱してきてます。ほんと、さんざんな朝だよ。




「……あの、先ぱ…………」


 僕は、先輩に謝ろうと口を開きかけました。すると。


「それでも来なければならないな、後輩君」


 僕のその先を遮るように、言葉を並べられました。……ん? 来なければならない(・・・・・・・・・)? どういう、事でしょう。先輩が僕を呼んだのには、何か深いワケがある気がしてきました。


「どういう、事ですか」

「……君は私を知らないが、私の方はずっと君を見ていた、という事だ」


 ……。……え。見られてた? まさかかさまのホラー展開来ちゃった? んなアホな。じゃあ、何で先輩は僕を観察(?)していたんだろう? 考えを巡らせてみても、ピンとくる回答は思い浮かびません。


「私は、自分がここ(がくえん)で周りの者に、何と呼ばれているかは知っている」


 学園一の有名へん人、という呼称の事でしょうか。奇人呼ばわりされているというのに、何故この人は平然としていられるのでしょう。


「容姿、性格、行動……。確かに私の外聞は異常だと言われても、仕方の無い事だろう」


 …………もう、僕には、彼女が何を言いたいのか、分かりません。






「だが、君だって上手く隠しているだけで、変人・・には違いないだろう? ……なあ、カレア君(・・・・)?」






「……………………は…………?」






 僕には、それしか、言えませんでした。この人の、訳の分からない挑発とも取れるこの問いかけに、呆れ怒っている、のではありませんでした。その通りだから(・・・・・・・)、でした。




「……何であんたがそれを知っているんですか」

「言葉端からボロが出ているぞ。乱暴な言動には注意した方が良い」

「……ッ…………!」




 グッ、と、歯を噛み締めます。本当に、ずっと見ていたというのは嘘偽りでは無さそうです。


「何が目的ですか」

「そう警戒するな。別に危害など加えない。ただ……」

「ただ、何ですか」

「……ただ、君がもし来なければ、少し不味い事になるかもしれないな。もちろん君にとって、な?」

「脅しかけてるんですか…………!!」


 僕の怒気を不敵な笑みでさらりと流して、先輩は更に畳み掛けてきます。


「なあ、来てくれるよな? 優等生君。まあ、私にとって君の本性が露見することは、なんの痛手でもない。言っても良いんだぞ?全校生徒の前で……」

「……学園一の奇人である貴女の言動に、耳を傾ける者が、果たして何人いるでしょうね」


 せめてひと言。この人に、言い返したかった僕です。


「ふふ、随分強気にでたな。……まあ、まだ放課後まで時間はある。よくよく考えればいい」


 僕の中での彼女の信用パーセントは、この数分間でガタガタと落ちました。それほど、彼女の言葉は僕に突き刺さりました。


 踵を返し、つかつかと扉の方に向かいます。両脇に机と椅子を持って。背中側から見て、出来るだけ堂々としてるように歩きます。


「失礼します、先輩」


 ただそれだけを返して、部屋から出ようとすると。先輩が一言ボソッと言いました。


「……私は、読心術の講義ではいつも最高評価だ」


 ビシッ。僕の固まる音が聞こえました。……え、じゃあ何か? 今まで僕の心読み放題だったって事? 恥ずかしいなオイイィ!! じゃなくて、え、やば、全部思ってた事バレてる!?


「……一つだけ言わせてもらうなら……」


 あー、僕の平穏無事な一日、いえ人生終了のお知らせですね、はい。


「この人だの先輩だの、将又はたまた彼女だのと……。混乱が手に取るように伝わってくるぞ。そうだな……」




「……セラ。私の名だ。セラと呼ぶことを、許そう」


「……は、はあ…………?」




「ふふ、そう固くなるな。恐らく、私達は随分長い付き合いになりそうだから、な?」

「……」


 僕はもう何も言わず、今度こそ扉を開けてアトリエを出ました。






 部室棟を、早足で歩きます。僕の頭の中は、先ほどのやりとりで一杯でした。なんか、うん。もう、僕が摂取するメンドクサイウム1年分を、イッキ飲みさせられた気分だよ。……とか、ふざけてる余裕も無いほど焦ってます。


(どうしよう……、どうすれば……!」


 僕が焦るのも、無理はありません。自分がで言うことでもないけど。先ぱ……、セラさんが握っているらしい、僕の秘密。もし、クラスメイツ(複数形)にでも情報が渡れば! そんなこと、考えたくもありません。


「……隠し通さないと……!」


 口に出して、自分に言い聞かせます。


「僕が………………」










「僕が、大の猫嫌いだって事だけは…………!!」






 違うわド天然   ――by.現在進行形で心読んでるセラ先輩






 ――僕とセンパイの出会いは、こんな、今となっては何気ない、日常でした――――

次回からはちゃんと説明入れます。

次回もどうぞよしなに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ