午睡の準備を始めて下さい
異世界、異世界と聞けばアレだ、ハリーとか指輪とかの世界観を想像するかもしれないが実際は違う。
ど田舎に行けば北斗のアレだ。
他は俺らの住んでいる場所とそんな違いはない。
たまにおっさんが空飛んだり、酒飲んだり、警察に捕まったり、連行されそうになった瞬間裸になって暴れたり、それがこの国の王だったり、それだけだ。
まあ、アレだ。
住めば都って言うだろう?
こっちに来てから俺はそう思うことにしている。
とまあ、しているうちに自宅に到着した。
「ただいま」
「おー、おかえり」
扉を開けるとリビングからひょこりと顔を出したのは我が家の主人、継人さんである。
「買い出しどうだった? お金足りたか?」
「よゆーよ、よゆー。商店街のおっさん達優しーからな」
食品やら生活用品が詰まった袋をテーブルに置く。
「ハル、顔は可愛いからなー」
ガハハと豪快に笑いながら俺の頭を撫でる継人を睨んでいると、リビングの間隣のドアがねっとりと開いた。
「おはよー。朝ごはんちょうだい」
昼過ぎに項垂れながら此方へ歩み寄ってくる彼女はあんなでも女神なのだ。
「おう、おはよう恵。いまさっきハルが帰って来たからもうちょっと待ってくれ」
「まじでか! しゃーなし、テレビ見てるわ」
手伝えや。
継人の手を弄り倒しながら、一言そう思った。